5Gの技術を整理する 当初はなぜ高速大容量通信しか使えないのか?:5Gビジネスの神髄に迫る(3/3 ページ)
5Gは4Gの技術をベースに進化しており、高速大容量通信、超低遅延、多数同時接続という3つの特徴がある。だが5Gは4Gまでの進化と異なり、劇的な技術革新によって高性能を実現したわけではない。4Gまでの技術をベースにしながら、さまざまな技術を組み合わせているのだ。
5Gは当初なぜ、高速大容量通信しか使えないのか
ここまで5Gに関するさまざまな技術について説明してきたが、実は5Gの商用サービス開始当初は高速大容量通信しか利用できず、超低遅延や多数同時接続などの実現にはしばらく時間がかかってしまうことは覚えておくべきだろう。
その理由はネットワークの運用方法にある。5G導入当初は、4Gのネットワーク上に5Gの無線機器を導入する「ノンスタンドアロン(NSA)」での運用となるため、4Gの性能に引きずられてしまうことから高速大容量通信以外は実現できないのだ。
それゆえ5Gの性能をフルに生かすには、無線機器からコアネットワークまで、全ての機器を5G仕様で構成する「スタンドアロン(SA)」での運用に移行する必要がある。その移行には5Gのサービス開始から2、3年はかかるといわれているが、なぜ最初からSAでの運用でサービスを開始しないのか? と疑問を抱く人も多いだろう。
その理由は、キャリアの負担を減らして5Gの導入をスムーズにするためだ。通信規格を新しい世代へと一気に移行させるには、機器を一度に入れ替える必要があるため、多くの時間とコストがかかってしまうことから、携帯電話会社が二の足を踏んで移行が進まないことにもなりかねない。そこで、4Gの頃から携帯電話会社の負担軽減のため、段階を踏んで新しい通信方式へと移行する仕組みが整えられるようになったのだ。
実際3Gから4Gへ移行する際には、まず4Gの一歩手前の通信方式となる「LTE」方式を導入して3Gの通信方式と併用しつつ、LTEから正式な4Gの通信方式「LTE-Advanced」へと移行し、徐々に比重をそちらに移していった。それゆえ5Gでも最初からフルスペックの5Gが導入されるわけではなく、NSAからSA、さらにその先へと、約10年をかけて徐々に進化していくものだということは知っておいてほしい。
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