菅次期首相が記者会見で「携帯電話料金」に言及――「値下げ」よりも「5G成長戦略」に期待:石川温のスマホ業界新聞
自由民主党の総裁(党首)選挙に、菅義偉官房長官が立候補した。ダントツの有力候補である菅氏が総裁としての公約に掲げた「携帯電話料金の引き下げ」に、業界には激震が走っている。
今週後半、スマホ業界関係者から挨拶よりも先に出る言葉といえば「菅さん」だ。
菅義偉官房長官が自民党総裁選に立候補。ダムの洪水対策の次に携帯電話料金の引き下げに言及したのを受け、業界では激震が走っている。
菅官房長官といえば、2007年に総務省によるモバイルビジネス研究会で議論が行われていた際の総務大臣だったりする。
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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2020年9月5日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額税別500円)の申し込みはこちらから。
おことわり(記事のタイトルについて)
この記事のタイトルは、メールマガジンとして配信された時の小見出しをそのまま利用しています。記事掲載日(9月11日)現在において、菅義偉氏が内閣総理大臣に指名・任命された事実はありません。ご了承ください。
2015年、安倍晋三首相が携帯電話料金の値下げに言及。さらに2018年に自ら「日本の携帯電話料金は国際的にも見ても高すぎる。4割値下げできる余地がある」と発言。振り返ってみれば、13年近く、携帯電話料金の引き下げに首を突っ込んできたことになる。
ただ、総務大臣として、競争環境を作っていこうと尽力するのは理解できるが、官房長官、さらには一国の首相という立場で、特定の業界について、民業圧迫のプレッシャーをかけるというのは理解に苦しむ。むしろ、首相であれば、通信業界の成長戦略を描く方に舵を切るべきではないか。
日本では、昨年10月の改正電気通信事業法と新型コロナウイルス騒動によって、5Gスマホの契約台数はNTTドコモで8月1日現在、24万件。KDDIとソフトバンクは公表すらできない数字のようだ。
一方、中国といえば、すでに8000万を超える5Gスマホが販売されており、年内にも1億台を超えるペースなのだという。お隣、韓国も、すでに500万台近い5Gスマホが売れている。
これだけ5Gスマホが普及すれば、ネットワークもNSAからSAへの切り替えが早まることは間違いない。SAになることで、5Gを導入するメリットがさらに生かせるだけに、中国は一気に5G大国となり、様々な産業でデジタルトランスフォーメーションが起こるのではないか。
日本では、総務省の失策により、5Gスマホの普及が遅々として進まない。この秋発売の5G対応のiPhone、さらには秋から来春にかけて、コストパフォーマンスに優れた5Gスマホが続々と登場見込みであり、それらに期待するしかないだろう。
ただ、足元を見ると、iPhone SEがよく売れているようで、現状、4Gスマホばかり売れてしまっては、5Gへの本格シフトも数年遅れることは間違いない。
おそらく誕生するであろう菅政権には、もうちょっと5Gスマホが普及し、日本国内のネットワークが早く5G中心となり、全国が一気にNSAからSAに切り替わるような政策を展開してもらいたい。
3キャリアとも2021年にSAを導入すると言っているが、5Gスマホが普及していないことには、日本のデジタルトランスフォーメーションも進展しないことだろう。ある通信業界関係者は「このままでは日本は中国に2周遅れることになる」と危機感を示す。
6G時代に向けて、これ以上、世界に乗り遅れないためにも、菅政権のやるべきことは「値下げ」だけではないはずだ。
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