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ついに携帯電話として独立したApple Watch ただし料金プランには課題も石野純也のMobile Eye(2/2 ページ)

2020年のApple Watchは、正統進化した「Series 6」と廉価モデルの「SE」を用意した。SEのような廉価モデルは、シェアを拡大する上で重要になる。watchOS 7のファミリー共有設定もシェア拡大の鍵を握るが、auが提供する料金プランには課題があると感じた。

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日本ではauがファミリー共有設定に対応、ただし料金には課題も

 電話として運用する以上、ファミリー共有設定に対応するにはキャリアとの協力が不可欠になる。スペシャルイベントでは、世界各国で対応するキャリアの一覧が発表され、auの名前も挙がった。ドコモとソフトバンクは、ともに「現時点で決まったことはない」というため、まずは1社でのスタートになる。


キャリア側の対応も必要になる。日本は、auのみ対応

 Apple Watchの発表と同日、KDDIはファミリー共有設定に対応した「ウォッチナンバー」を発表。既存の「ナンバーシェア」から移行した際に受けられる割引キャンペーンも実施する。割引額は1年間1630円で、家族割プラスを適用すると、1GB以下の場合の料金は1年間350円になる。割引後の金額は、ナンバーシェアの350円に合わせた格好だ。KDDIはコンテンツサービスでAppleとの協業を深めており、こうした関係が素早い提供開始につながったという。

 ただ、子どもや高齢の親に持たせるユースケースを考えると、不可解な点も残る。ウォッチナンバーの料金は「ピタットプラン 4G LTE」がベースになっており、2年契約時の料金は1GB以下で2980円。ナンバーシェアからの移行キャンペーンが終了してしまうと、この金額がフルにかかってしまう。設定用のiPhoneが必要になるため、少なくとも夫婦どちらかがau回線を持っていたとしても、家族割プラス適用で2480円からとまだまだ高く、見守り端末として持たせるにはためらう金額だ。

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料金はスマートフォン用のピタットプラン 4G LTEを契約する形になる

 ファミリー共有設定は子どもや親に端末を渡すことが前提になっているため、キャンペーンがナンバーシェアからの移行というのも使い勝手が悪い。いったん、自分のApple Watch用に契約していたナンバーシェアからウォッチナンバーに移行しなければならず、改めてApple Watchのセルラー機能を使おうと思ったら、ナンバーシェアを再契約しなければならない。なぜ、専用の料金プランを用意しなかったのだろうか。

 KDDIによると、スマートフォンと同じ料金設定になってしまったのは、総務省のガイドラインにのっとったためだという。ウォッチナンバーを契約したApple Watchは、いわゆる見守り端末とは異なり、電話に加えてインターネットへのアクセスもできる。先に述べたように、App Storeも用意されているため、超小型のスマートフォンと見なされる。同じスマートフォンである以上、キャンペーンを除いた正価を極端に変えることはまかりならんというわけだ。

 確かに、iPhoneで使ったApple Musicの1GBと、Apple Watchで使ったApple Musicの1GBが異なる価格設定になっているのは、公平とはいえない。とはいえ、Apple Watch単体で利用できるデータ通信には限りもある。LTEはカテゴリー1でスマートフォンに比べると通信速度が遅く、テザリングもできなければ、ブラウザもメールなどに記載されたリンクからでないと起動しない。Apple Watchのような端末を見守り端末として普及させるには、こうしたユースケースを踏まえた適切な制度設計も必要になりそうだ。

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