クアルコムが「スマホが売れないのは改正法のせい」と噛みつく――総務省は「5G端末を特例扱いはしない」と一蹴:石川温のスマホ業界新聞
総務省がまとめた「競争ルールの検証に関する報告書2020」に対するパブリックコメントが公表された。注目すべきは、米Qualcommが提出した「端末販売の減少は、改正電気通信事業法が施行された直後から始まっている」という意見。総務省はこれを事実上無視した。
10月23日、総務省において「競争ルールの検証に関するWG(第10回)」が開催された。MNPに関する過度な引き留めに関する議論や「競争ルールの検証に関する報告書2020」の意見募集の結果が披露された。
団体14件、個人30件の計44件の意見が寄せられたが、相変わらず単なる「ガス抜き」に過ぎず、寄せられた意見に対して、総務省が耳を傾けるつもりが全くない様子がよく出ている。
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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2020年10月24日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額税別500円)の申し込みはこちらから。
なかでも個人的に注目したのがクアルコムからの意見「端末販売の減少は、コロナウイルス感染拡大の影響によるものではなく、改正法施行直後から始まっている」として、3社の国内端末販売台数の推移のグラフを提出したのだ。
確かにグラフを見ると、コロナ禍以前の2019年の改正法施行後から急激に落ち込んでいる。スマホ業界は「第2次谷脇不況」に突入したと言っていいだろう。
総務省のWGでは「コロナでスマホが売れなくなった」と結論付け、改正法の失敗から目をそらそうとしたが、数字がきちんと事実を物語っている。
しかし、総務省からの回答は「いただいた御意見については、参考として承ります」という発言に留まり、事実を闇に葬った。
さらに端末の補助金規制についてクアルコムは「5Gスマートフォンの一日も早い普及が必要。第27条の3の規律の目的には深く賛同するが、5G普及には通信インフラの整備と対応端末の普及の両方が必要。報告書(案)において『現時点において、5G対応端末についてその他の端末と異なる特例を設けるという理由はない』と結論づけた理由を示していただきたい」と詰め寄ったが、総務省は「改正法による制度整備は、端末代金の大幅な値引き等により 電気通信事業者が通信契約の利用者を誘引するモデルを2年を目途に事実上根絶することを目指して当面通信契約とセットで 行われる端末の値引き等を厳しく制限することとするものです。 5G端末を特例扱いとすることは、改正法に基づく趣旨を根本から没却するものと考えます」と一蹴している。
同じ10月23日よりiPhoneが発売されたが、初の5G対応ということでここ数年では一番の盛り上がりであったように思う。コロナのため、大行列はなかったが、アップルストアや家電量販店ではほぼ完売状態だった。
総務省としては「アップル憎し」で端末割引規制を手掛けている節があるが、なんだかんだで日本のユーザーはiPhoneを好んで使っていることは間違いない。iPhoneが5G対応したことで、ようやく日本の5Gの夜明けとなり、これから5Gが普及していくことだろう。しかし、広く一般的に5Gを普及させるには、やはり端末割引は不可欠ではないか。
3キャリアでiPhone 12を買う人は2年間の分割払いで端末の割引が受けられるものの、使い放題のプランで毎月、高めの支払いをすればいいのではないか。一方で、アップルストアや家電量販店でSIMフリーのiPhoneを買う人は一括購入が前提となるが、格安スマホやサブブランドで月々の支払いを安くすればいいだけの話だ。
こうした国民の自由な選択肢をなぜ総務省は奪ってしまうのか。規制を強化し、自由を取り上げる総務省のやり方が本当に正しいのか、改めて検証されるべきではないだろうか。
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