ドコモがショップでアプリ設定を“有料サポート”する狙い 業界に与える影響は?:石野純也のMobile Eye(1/2 ページ)
NTTドコモは、12月1日に全国のドコモショップで「アプリ設定サポート」の提供を開始する。対象となる8つのアプリのインストールや初期設定、アカウントの引継ぎを手助けするサービスで、料金は1アプリあたり1650円(税込み)。これまでのキャリアショップは、販売やサポートの拠点になっていた一方で、後者に関しては、事実上、無料でユーザーに提供されていた。
NTTドコモは、12月1日に全国のドコモショップで「アプリ設定サポート」の提供を開始する。対象となる8つのアプリのインストールや初期設定、アカウントの引継ぎを手助けするサービスで、料金は1アプリあたり1650円(税込み)。ドコモ回線を契約するユーザーが利用できる。
同サービスは、東京都や神奈川県にある250の店舗で実施してきたトライアルを受け、正式化されたものだ。12月には、これを800店舗に拡大。2021年2月には全店舗への導入を目指す。これまでのキャリアショップは、販売やサポートの拠点になっていた一方で、後者に関しては、事実上、無料でユーザーに提供されていた。アプリ設定サポートには、後者のサポート機能をより強化するという意味合いがある。その狙いや、業界に与える影響を読み解いていきたい。
8つのアプリの初期設定やアカウント移行をサポート
アプリ設定サポートは、計8つのアプリが対象になる。そのアプリは「ディズニー ツムツム」「メルカリ」「モバイルSuica」「Facebook」「Instagram」「LINE」「Pokemon GO」「Twitter」だ。料金は1アプリごとに1650円。アプリの初期設定や機種変更時のアカウント移行などをドコモ側がサポートする。もともとドコモでは、2019年12月に「初期設定サポート」を開始したが、こちらはAppleやGoogleのアカウント設定や基本的なデータ移行が中心。アプリ設定サポートは、それの上位レイヤー版という位置付けになる。
サポートと銘打っているのは、操作自体を肩代わりするわけではないためだ。同意の上でショップのスタッフに教えてもらいながら、ユーザー自身が操作して、これらのアプリの設定をする必要がある。対象となるのは、ドコモ回線を契約しているユーザー。想定している主な利用者は、シニア層だ。
この8つのアプリに絞った背景には、ニーズの高さがあるという。実際、どのアプリも、ユーザー数は1000万人を超えており、“定番”といえる存在。ドコモ 営業本部 販売部 チャネルデザイン 担当部長の蓑手康史氏によると、アプリの選定は、「一度、市場調査をかけた上で、人気のアプリをトライアルで検証しながらやってきた」という。
実はトライアル時の方がアプリ数は多く、11のアプリを対象にしていたが、「ニーズがなさそうな3アプリは正式サービスでいったん落とすことにした」(同)。乗換案内など、初期設定や引き継ぎの必要性が薄いアプリを対象から外し、人気が高く、サポートのニーズが高いものに絞り込んだ格好だ。蓑手氏が「いったん」と述べていたように、対象アプリは、今後の利用動向に応じて、入れ替えられる可能性もありそうだ。
FacebookやTwitterなどは、移行時にIDとパスワードを入力するだけで、「LINEと比べると、そこまで(トライアルで)数が出ているわけではないが、シニアにニーズのあるサービスというデータは得られているため、サポートしてきたい」(同)ことから対象になった。
ショップスタッフへの研修や店頭オペレーションも考慮
新規でスマートフォンを契約し、初期設定するだけならサポートはしやすいかもしれないが、機種変更のアカウント移行の場合、各アプリでのIDやパスワードが必要になるだけでなく、LINEのように、端末側にデータを保持しているアプリでは、そのバックアップも必要になる。モバイルSuicaも、事前に旧端末でデータを預け入れしなければならならず、手間がかかる上に操作を熟知していないと、ユーザーをサポートするのは難しい。
そこでドコモはアプリ設定サポートの提供にあたり、各アプリ事業者には「許可を得た」(営業本部 中期チャネル戦略 担当課長 岩城雅洋氏)という。ショップスタッフ向けには、アプリごとのマニュアルも作成。「事前に店舗をつないで、Webでスタッフ向けの説明会を開き、しっかりお客さまにご説明できる形にした」(同)と、準備を進めてきた。
ユーザーによっては、IDやパスワード自体を忘れてしまっている恐れもあるが、こうしたケースも想定はしているという。岩城氏によると、「パスワード(の確認や再発行)まではドコモ側が踏み込めないが、(各アプリの)事業者に伺ってもらい、サポートをしてもらってから、人によっては後日の対応になることもある」という。
アプリ事業者によってはサポートの窓口がメールやチャットしかないところも多く、「お客さまが問い合わせるのも一苦労だった」(蓑手氏)。メールの場合、返信を待つ必要があり、時間もかかる。これに対し、アプリ設定サポートなら、対面ですぐにサポートを受けられる安心感がある。有料ながら、ユーザーのニーズに沿ったサービスといえそうだ。
一方で、地域やショップの規模による差はあるが、ドコモショップは予約でいっぱいのところが多い。アプリ設定サポートを追加することで、その状況に拍車が掛かる恐れはないのだろうか。これに対し、岩城氏は「今は来店予約がほとんど。事前に新規契約か機種変更かは分かるので、ご来店前にご連絡して、希望があればプラスαの時間を設ける形で、店舗の時間をうまく調整し、混まない形でのオペレーションにしていける」と語る。想定しているのは、1アプリで15分程度。「大きく応対時間に影響を及ぼすわけではない」(蓑手氏)という。
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