ドコモ井伊社長インタビュー(前編):「ahamo」が他社への流出抑止に、ドコモショップは当面維持する(2/3 ページ)
持株会社による完全子会社化の直後から、NTTドコモは矢継ぎ早に新料金プランを繰り出している。大きな話題を集めたのは、オンライン専用の料金プラン「ahamo」だ。ドコモの変革を掲げる井伊基之社長に、新料金の狙いや今後の見通しを聞いた。
ahamo効果で約12年ぶりにMNP転入超過に
―― そのauはpovoなどの新料金を発表しました。まずは、この受け止めを教えてください。
井伊氏 通話定額を分けてくるところは、試合巧者だなと。僕たちも考えたのですが、面倒くささを排除することにしました。僕の考えですが、3分の1は5分がよく、3分の1はかけ放題にしたい、残りの3分の1はついていない方がいいとなると、合計で3分の2は電話があった方がいいと思うはずですが、KDDIはそこをスパッと取ってきました。ある程度想像はしていましたが、業界最安値は「やられた」と思いました。やはり、ジャンケンは後から出すものですね(笑)。ただ、僕たちがマネされるようになったのは、ほめてやってください(笑)。
価格については、ほぼほぼ横並び的ですが、これは最初から予想していたこと。必ずキャッチアップはされるので、最後は価格競争ではなく、プロモーションや営業になります。今、ようやく3つを並べて書いてもらえるようになりましたが、今まではこれがなかった。結果的に、私たちのお客さまがY!mobileやUQ mobileに逃げていたのを抑止できます。現実、既にそういう数字も出ていて、12月3日以降、他キャリアへの流出はかなり減りました。
―― MNPでプラスに転じたということでしょうか。
井伊氏 転じました。流出が抑止できただけで、ポートインを取るには別の施策が必要ですが、まだ販売を始めているわけではないので、今までの料金プランで獲得を頑張ってもらっています。この相乗効果で、2009年1月に(純増が)マイナスに転じてから、約12年ぶりにプラスになりました。抑止力とはこういうことなのか、と。いかに出ていく人を見過ごしていたかということです。
ドコモショップの役割はどうなる?
―― ahamoはオンライン専用ですが、店舗に来るユーザーはどうするのでしょうか。
井伊氏 基本的にはオンライン専用にしようと思っています。確かに店頭でahamoのお話をされる方もいますが、その方が本当にサービスの追加、廃止も含めてオンラインでできるのか、やはり補助が必要なのかは、コンタクトしてみれば分かります。一時の価格に魅力を感じても、その後不自由されては困るので、いろいろなお話を伺った上で、「まずはギガライトをいかがですか?」と勧めることができます。「チェンジ(プラン変更)はいつでも、障壁なくできますからどうでしょうか」と、通常メニューの料金プランを勧めています。どうしてもという方には、チラシを渡して自分でやってくださいと誘導していきます。
ただ、ahamoはやはり話題性がありました。ショッピングモールなどにahamo(のポスターなど)があるだけで、お客さまは聞きに来ます。ポートインが増えている理由かもしれないですね。ahamoを餌にしているというわけではありませんが。
―― オンライン専用が増えてくると、将来的にショップが厳しくなるような気もしますが、こちらについてはどうお考えでしょうか。
井伊氏 厳しいというより、ショップに依存した販売形態は見直さなければいけないというのがもともとの経営課題という認識です。コンシューマー向けの販売にコストをかけすぎている。ドコモショップは2300店舗ぐらいあるので、年間数千億かかっているわけです。お客さまの時間を拘束して、手続きしていただくことのために、これだけのコストをかけるのはどうなのか。最初のころはそれでよかったかもしれませんし、メニューが複雑だった自分たちが悪いところもありますが、シンプルにすれば「いる」か「いらない」だけになります。経営コスト的には、ここを下げていかないとahamoの減収影響はカバーできません。
じゃあ代理店をどうするのかという議論になれば、オンサイト(現地)でしか提供できないものを与える場所にしなければいけない。これは有償ベースですが、当社で使う分もあれば、例えばデジタル庁がやろうとしているマイナンバーの普及や利用促進などもあります。直接の指導がなければ分からない年齢層の方は、必ずいますからね。そういうところを、オンサイトでそれなりのスペースのあるところに来ていただいてご支援する。もちろん、財源は国なり自治体なりからいただきます。
メルカリとやっているメルカリ教室もそうです。メルカリもコンビニなどで出荷できますが、最後はパッキングして発送する必要があります。メルカリ教室では、どういうふうにパッキングすればいいかというところもやっています。そのままドコモショップに置いておいてくれれば、それを取りに来てくれる。そのために、ラベルを印刷する機械も置いています。これは当社のサービスではなく、他の方々のためのもので、あの場所を使って収入源にするというのはドコモショップの新しい使い方で代理店の支援にもなります。2300もあるので、上手に使えばいいと思っています。
―― ということは、店舗数は維持するということでしょうか。
井伊氏 今のところは。本当は、そんなにたくさんなくてもいいとは思っています。ただ、トランスフォームする時間は必要です。そこにもう少し自由裁量を提供し、スペースや人をどうするのか。ドコモショップは広すぎる、人が多すぎるとお叱りを受けたこともありますが、今となっては、それを逆手に取ってビジネスを作った方がいい。新しいチャンスがあれば、雇用も維持していけます。仕事がなくなり、ダメになっていくのを看過するのではなく、どうやって生き残っていくのか。外から仕事を取り、何とかやっていくことはできると思います。全てがオンラインにはならないですからね。ショップは必ず残ります。
もともと代理店は、そういうことをやりたがっていましたが、むしろドコモが止めていた。今までのドコモは、縛りがきつかったんです。副社長時代に、何回か見に行きましたが、端末コーナーに誰も人がいない。それは当たり前で、予約制にしたので、待っている人がテレビを見ているだけという状況でした。でも、うちのスペックは端末を並べておくことになっていました。そういうところを工夫してスペースを生み出し、スマホ教室をやるなどして、いろいろなことを売り上げに転じていく。これは、狭いショップではできないことです。
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