ドコモ井伊社長インタビュー(前編):「ahamo」が他社への流出抑止に、ドコモショップは当面維持する(1/3 ページ)
持株会社による完全子会社化の直後から、NTTドコモは矢継ぎ早に新料金プランを繰り出している。大きな話題を集めたのは、オンライン専用の料金プラン「ahamo」だ。ドコモの変革を掲げる井伊基之社長に、新料金の狙いや今後の見通しを聞いた。
持株会社による完全子会社化の直後から、NTTドコモは矢継ぎ早に新料金プランを繰り出している。大きな話題を集めたのは、オンライン専用の料金プラン「ahamo」だ。その後、ソフトバンクやKDDIも対抗策の打ち出しを余儀なくされたが、20GBの“値下げプラン”はドコモが先鞭(せんべん)をつけた格好だ。同時にドコモは、大容量プランにあたる「ギガホ」や「5Gギガホ」も改定。5G用のギガホは4月に「5Gギガホ プレミア」に名称を変え、データ容量無制限を正式に導入する。
この新生ドコモを率いるのが、新社長に就任した井伊基之氏だ。ドコモの変革を掲げる井伊氏だが、どのような戦略を打ち立てていくのか。新料金の狙いや今後の見通しをグループインタビューで聞いた。
この3カ月は戦争のようだった
―― 完全子会社化の発表から3カ月が過ぎ、その間にahamoも投入しました。振り返ってみて、いかがでしたか。
井伊氏 戦争みたいでした。TOBが成立するまでの間は、一切口を開けない。こういうことに対しても、株価に影響を与える動きが出てしまうと、TOBの状況が崩れてしまうからです。「そんな新しいことをやるのか」という話が一切出ないように進めなければいけなかったので、非常に限られたメンバーでプロジェクトコードをつけてやってきました。
あっという間にマネされて、「なんだ」となるかもしれませんが、皆さんも同じようなことを考えていたんですよね。コストを下げるためには、オンラインが絶対条件になりますから。若い人に考えさせると、ショップに行かないという。であればショップで売る必要がないということで、踏ん切りました。前任の吉澤はサブブランドをやりたくないとこだわっていましたが、メインブランドの料金でやれたので、そうであればもっと早くからできたはずです。
心の中ではサブブランドでという作戦も考えましたが、僕は廉価版と考えているのではありません。ドコモに20GBのメニューがなく、UQ mobileやY!mobileに抜けているのに、何で止めないんだと思っていました。そう思っていたら、お国が20GBと言っていた。総務省に説明したときに、「これはサブブランドではない」と言ったら、「サブじゃないですか」と言われてしまいましたが(笑)。僕らは新しい料金プランとして出していると、コンセプトをちゃんと説明しました。
ちょうど総務省でメールアドレスの(ポータビリティの)議論をしていたときだったので、「当てつけか」とも言われてしまいました(笑)。そんなの、関係ないんですよね。20代の人は、キャリアメールにこだわっていません。私は、「オプションで選べるようにしたらいいのでは」と言いましたが、「いらない」と言われてしまいました。だからあの割り切りができた。これには正直感謝しています。
「国際ローミングが何で82カ国(や地域)なんだ」と言われましたが、あの値段でやろうとすると、ローミング料の安い国しかできません。ただ、あの82カ国で、日本人の行くところはだいたいカバーしていて、本当は十分なんです。この価格を実現することを絶対条件にしていたので、ああなりました。
ちなみに、今日初めてお話ししますが、ahamoはファミリー割引にカウントします。あんまり早くから言ってしまうとマネされるので、黙っていました。(既存の料金プランに)残るご両親がギガライトで、息子だけがahamoでも、家族にカウントします。ahamoの料金に対して割引は効きませんが、ギガライトのお父さんからahamoの子どもに電話をかけてもタダになります。逆に息子からお父さんにかけたら5分までですが、かけ直してもらうことはできます。同じ料金プランですからね。サブブランドだったら、これはできません。
―― ということは、1人だけahamoに変えるのがデメリットにならないわけですね。
井伊氏 これをやることで、出たり戻ったりが自由になります。ahamoに行く障壁は下げなければいけない。家族の範囲は広いですが、意外と遠くの親戚を含めるのが難しいので、これはお伝えしたかったことです。auの発表が昨日(インタビューは1月14日に実施)だったので、言うならその後と思っていました。これは、ドコモのユーザーにとってのメリットです。ahamoに行くのとY!mobileに行くので、差があることが大事で、そうすれば出ていかなくなりますからね。
関連記事
- ahamo契約者も「みんなドコモ割」のカウント対象に 井伊社長「サブブランドではできない」
ドコモの「ahamo」契約者も、家族の回線数に応じて割り引く「みんなドコモ割」のカウント対象になることが分かった。井伊基之社長がグループインタビューで明かした。ahamoの契約者がファミリー割引の対象外になるの以前の案内通り。 - ドコモの激安「ahamo」で携帯業界に激震も、“料金プラン”扱いには疑問
ドコモは若者をメインターゲットに据えた「ahamo(アハモ)」を発表。料金は、20GBのデータ容量に5分間の通話定額が付いて月額2980円(税別)と、他社より低い水準の料金を打ち出した。同じ2980円の楽天モバイルよりも優位性は高い。一方、既存ドコモユーザーの移行は限定的とみられる。 - ドコモの「ahamo(アハモ)」、気を付けるべき点は?
NTTドコモが“新プラン”として打ち出した「ahamo(アハモ)」。従来のドコモのプランと異なる注意点がいくつかあるので、簡単にまとめる。 - auの「povo(ポヴォ)」、気を付けるべき点は?
KDDIと沖縄セルラー電話が、新たな料金ブランド「povo(ポヴォ)」を発表した。まだ決定していないことを含めて、現時点で分かっていることを簡単にまとめた。 - “業界最安と差別化”を両立させたauの「povo」 既存の使い放題セットプランも値下げに
KDDIが、オンライン専用の新料金ブランド「povo」を発表し、auの使い放題プランとUQ mobileの料金プランを刷新する。povoは通話定額をオプション扱いとすることで3キャリアの20GBプランで業界最安値を実現し、追加トッピングで差別化を図る。3ブランド間の乗り換え手数料は全て無料とする。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.