料金値下げの影響は「総合力」でカバー 日本は米国やインドとは違う――ソフトバンク宮内社長との一問一答(2021年2月版)(2/2 ページ)
ソフトバンクの宮内謙社長が、社長としては最後となる決算説明会に登壇した。この記事では、説明会で行われた質疑応答のうち、携帯電話事業に関連する主なやりとりを紹介する。
楽天モバイルについて
―― ソフトバンクから楽天モバイルに転職した元社員が逮捕された件について、現在捜査中だとは思いますが、何が御社にとっての「機微な情報」だったのか、今後の対処方針と合わせて教えてください。
宮内社長 はっきりと言って、あってはならない話だと思っています。私たちの営業秘密が不正な手段で持ち出された、非常に重大な事案です。当社の営業秘密が楽天モバイルの事業に使われないようにするために、民事訴訟を提起することになっています。
ネットワークの構築に関しては、ビー・ビー・テクノロジーの時代から含めると20年前から取り組んできたノウハウがあります(筆者注:携帯電話回線については、前身企業を含めると30年近い歴史がある)。「どこに基地局を建てるのか」ということは、結構大変な仕事なんです。(持ち出された内容は)ちょっと許されない内容じゃないかと思っています。
この件については、捜査当局がきっちりと調べている所で、どういう状況か分かっていませんが、私たちとしては、このような対応を取る予定です。
―― 楽天モバイルの新料金プラン(Rakuten UN-LIMIT VI)について、来年度(2021年度)以降の携帯電話市場や御社の競争環境にどのような影響を与えるとお考えでしょうか。
この新プランは小容量(10GB未満)や中容量(20GB前後)では、かなり競争力が高いと受け止められているようですが、御社として追加の施策を行う予定はあるのでしょうか。
宮内社長 楽天モバイルさんの「0円」という新聞広告を今日見かけて、一生懸命頑張られているなと思いました。
私たちは5年前、総務省がMVNO(の成長)にかじを切った際に「ワイモバイル(Y!mobile)」というブランドを作ることでユーザー数を減らすことなく、どんどん増やせました。今度のY!mobileの料金プランは、4G(LTE)に加えて5Gにも対応します。(0円からというプランは)それなりの大きなインパクトがあるとは思いますが、(Y!mobileの新プランで)相当対応できると考えています。
Y!mobileとソフトバンク(SoftBank)は、通信ネットワークだけではなく、(販売)チャネルという大きなインフラを持っています。(通信サービスは)価格だけではなくネットワーク品質も重要です。現在、4Gであれば(ソフトバンクとY!mobileは人口カバー率で)99%つながります。温泉でも、ゴルフ場でも、スキー場でも使えます。
(携帯電話の)ネットワークというものは、(人口カバー率が)90%を超えた所からが大変です。彼らは「(2021年の夏までに)96%にする」って言ってますが、そこから99%に持って行くには兆単位のお金がかかります。私たちも(携帯電話事業に参入してから)10年ほど、「ゴルフ場でつながらない」「(長野県の)軽井沢で使えない」「(東京の)銀座のクラブじゃつながらない」とか、いろいろな人から言われてきました。日本でのネットワークは“きめ細かさ”が求められます。米国やインドとは違って“品質”が重要なのです(※3)。
彼らはずっと「0円」でやってきています。本来であれば、もっとたくさんのお客さまが(ソフトバンクやY!mobileから楽天モバイルへと)行くはずですが、そうなってはいません。それは、お客さまの品質に対するこだわりによるものだと思います。
これからは5Gのネットワークがやってきます。出てくる端末は(基本的に)全部5G対応になります。この5Gに、どこまで投資してネットワークを広げられるかという競争が始まっています。そういう意味では、私たちは(楽天モバイルに対して)相当な“利”を持っていると思っていますし、端末、お客さまサポート、コンテンツなど“総合力”も持っています。
楽天にも頑張ってほしいですが、私たちも負けずに対抗できると思っています。
(※3)筆者注:米国は郊外のエリア整備が遅れている事例が多く、都市部でも屋内や地下で圏外になるケースも少なくない。インドはLTE回線が急速に普及したものの、複数のレポートにおいて通信速度が非常に遅いという結果が出ている
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