インタビュー

楽天モバイルに聞く「Rakuten BIG」「Rakuten Hand」開発秘話 5Gでも独自端末の狙いとは?(1/3 ページ)

MVNOも含めたキャリアの中で今、最も“自社端末”に注力しているのは、楽天モバイルだろう。「Rakuten Mini」を皮切りに、5Gのスタートでは、Sub-6とミリ波に両対応した「Rakuten BIG」を発売。2020年12月には片手で持ちやすい「Rakuten Hand」を送り出している。なぜ楽天モバイル自身で独自ブランドの端末を手掛ける必要があるのか。

 MVNOも含めたキャリアの中で今、最も“自社端末”に注力しているのは、楽天モバイルだろう。本格サービス開始前の無料サポータープログラム拡大に合わせて初めて投入した「Rakuten Mini」を皮切りに、5Gのスタートでは、Sub-6とミリ波に両対応した「Rakuten BIG」を発売。さらに、2020年12月には片手で持ちやすい「Rakuten Hand」を送り出している。

 いずれの端末も、その名称が示すように、楽天モバイルの独自端末。自社ブランドで端末を展開しているような、実績のあるメーカーが開発を担当する。Rakuten Miniでは、周波数の無断変更問題が発覚し、ブランドに傷はついてしまったものの、それを補うコストパフォーマンスのよさで、売れ行きも上々だという。eSIMをいち早く採用したり、低価格ながらおサイフケータイにはしっかり対応していたりと、ユーザーのニーズを的確にくみ取っている印象を受ける。


5Gミリ波に対応した6.9型ディスプレイ搭載スマートフォン「Rakuten BIG」

5.1型ディスプレイを搭載する小型の4Gスマートフォン「Rakuten Hand」

 とはいえ、Androidのスマートフォンを作るメーカーは非常に多く、コストパフォーマンスのいいSIMロックフリー端末も徐々に増えている。なぜ楽天モバイル自身で独自ブランドの端末を手掛ける必要があるのか。楽天モバイル 営業本部 デバイス戦略部 部長の小野木雅氏と、ネットワーク本部 デバイスエンジニアリング&オペレーション部 部長の塚本直史氏に話をうかがった。

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Rakuten Handはなぜ5G非対応に?

―― まず、発売が近い方から伺いたいのですが、5Gの投入に合わせてRakuten BIGを投入した一方で、なぜその後に4GのみのRakuten Handを発売したのでしょうか。その理由を教えてください。

塚本氏 Rakuten Miniを作った時から、少し長いロードマップがありました。Rakuten Miniより少し画面サイズの大きな端末は、そのロードマップにもともとあったものです。Rakuten Miniに対しては、バッテリーの持ちや、画面サイズに対していろいろなご意見がありました。そういったご意見を反映させていく中で、Rakuten Miniのコンセプトを踏襲しながら、少しだけ画面サイズが大きく、普段使いできる端末としてRakuten Handを開発しています。

 ただ、サイズの制約とバッテリーの制約は必ずあります。技術は日々進化していますが、それがRakuten Handに5Gを搭載できていない理由の1つです。また、技術的な観点では、5Gを意識していなかったわけではありませんが、消費電力の観点で、まだこなれていない部分があります。そうなると、どうしてもバッテリーのサイズが大きくなり、あのサイズに収まりません。ただし、Rakuten Handは4Gですが、当社の採用している4×4 MIMOなどは必須にして、4Gでも最高のパフォーマンを体感いただけるようにしています。


楽天モバイルの塚本直史氏

―― 実質価格とはいえ、0円で販売されています。もともとの価格も2万で、スペックに対しては非常に安いのですが、なぜでしょうか。

塚本氏 Rakuten Miniと同じメーカーですが、部材の選定等々まで、一緒にやってきました。そこで、上手にコストダウンができた側面があります。

―― 戦略的に、利幅を削って下げたということではないのでしょうか。

小野木氏 われわれのポジショニングと、今ご加入いただいている方のセグメントを考えると、コストパフォーマンスを良くして、いい意味で驚いてもらえることが必要になります。可能な限り高いスペックでそれなりの品質を保ったものを、いかにリーズナブルにお届けできるかの両輪で企画しました。5Gに非対応というのはありますが、プライスポイントを考えると、現段階で対応していたらあの価格は難しかったと思います。価格の関係もあり、あえて4Gに限定しています。

横幅ではなく画面サイズから検討した

―― サイズとしては、手のひらにフィットする横幅が印象的でした。あの数値ありきでの企画だったのでしょうか。

塚本氏 まず検討を始めたのは、横幅ではなく画面サイズでした。入り口はディスプレイですね。そこから実現できる横幅を考えていった形です。結果的には、5.1型で一番横幅の狭いものを実現できました。Rakuten Miniの後継のロードマップを描いていた中で、当初の名称もRakuten Mini Plusというものでした。ああいうサイズ感を意識した上で、それを実現できるディスプレイを採用したという流れです。

―― 縦長で、アスペクト比は19:9になっていますが、これも意識的にそうしたのでしょうか。

塚本氏 これも、横幅が大きいですね。5.1型でああいうアスペクト比だと、横幅を狭くできます。モックアップを手に取ったときも、なじみやすかった。縦長は狙ったわけではありませんが、うまく商品のコンセプトが作れました。

―― ユーザーインタフェース(UI)は、標準だとAndroid標準に似ていますが、これはRakuten HandがRakuten Miniより一般的なスマートフォンに近いサイズだからでしょうか。

塚本氏 実は、Rakuten HandにもRakuten Miniと同じランチャーを搭載しています(変更が可能)。根強いファンがいるかどうかは分かりませんが(笑)。ただし、あくまで普通のUIに主軸を置いていたのも事実です。

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