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インタビュー

楽天モバイルに聞く「Rakuten Mini」開発秘話 なぜ自社ブランド端末が必要だったのか(1/3 ページ)

楽天モバイルがMVNO時代から注力していたのが端末ラインアップだ。MNOのサービス開始に合わせて、自社ブランドの「Rakuten Mini」を投入した。Rakuten Miniの開発や販売に携わった楽天モバイルのメンバーに、同モデルの特徴やラインアップ全体の方向性を聞いた。

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 データ容量無制限の「Rakuten UN-LIMIT」プランを引っ提げ、4月8日に本格サービスを開始した楽天モバイル。月額2980円(税別)の料金を300万人限定で1年間無料にするキャンペーンや、auローミングの容量を2GBから5GBに増量したことでも話題を呼んだ。自社回線のエリアは大手3キャリアと比べるとまだまだ狭いが、イー・モバイル以来の新規参入とあって、注目を集めている。

 鳴り物入りで新規参入を果たした楽天モバイルだが、Huaweiのhonorシリーズを独自モデルとして導入するなど、MVNOのころから注力していたのが端末ラインアップだ。

 そんな楽天モバイルが、MNOのサービス開始に合わせて送り出したのが、自社ブランドを冠した「Rakuten Mini」だ。初の自社ブランド端末だったのはもちろんのこと、ディスプレイが3.6型と現行モデルの中では驚くほどコンパクトだったり、SIMカードがeSIMのみだったりと、特筆すべき点が多い。コンパクトながらFeliCaを搭載しているのも、Rakuten Miniのインパクトを大きくした。

Rakuten Mini
3.6型ディスプレイを搭載する小型スマホ「Rakuten Mini」

 大画面のスマートフォンが全盛の中、このサイズの端末を独自ブランドで発売するのは、チャレンジングな取り組みといえる。そこでRakuten Miniの開発や販売に携わった楽天モバイルのメンバーに、同モデルの特徴やラインアップ全体の方向性を聞いた。インタビューに答えたのは、楽天モバイル 営業本部 デバイス戦略部 部長の小野木雅氏と、ネットワーク本部 デバイスエンジニアリング&オペレーション部 部長の塚本直史氏、営業本部 デバイス戦略部 デバイスビジネス開拓課 課長の田中智也氏の3人。

Rakuten MiniのFeliCa搭載は初期から決まっていた

―― 無料サポータープログラムの二次募集に合わせて発売したRakuten Miniですが、この端末を企画した経緯や背景を教えてください。

塚本氏 一昨年(2018年)の11月、12月ぐらいから、話がスタートしています。楽天としての訴求ができる端末を世に送り出そう、楽天のサービスを享受できる端末を準備しようという経緯で、その時点でコンセプトとしてFeliCaを搭載することも決まっていました。おサイフケータイ対応で気軽に持ち歩けるということで、ディスプレイサイズも初めのころから、4型前後で話を進めてきました。ですから、まずFeliCaありきで考え、楽天の全てのサービスも享受できる端末として企画を進めていきました。

田中氏 なぜオリジナルデバイスなのかというところを、少し補足します。われわれには仕掛けたい戦略があり、やりたいことを(端末として)先駆ける必要もありました。それをメーカーのものに組み込もうとすると、どうしてもポリシーのコンフリクト(衝突)も起こってきます。例えば、eSIMを訴求する上では、いち早くやろうとなったら、やはり自分たちでやった方がいい。自社ブランドの重要性に加え、今後、お客さまの声をダイレクトに反映させられることも含めて、ああいった形になりました。

楽天モバイル楽天モバイル 楽天モバイルの塚本氏(写真=左)と田中氏(写真=右)。取材はオンラインで実施した

―― お話をうかがうと、FeliCaが最重要ポイントだったようですが、サイズ感もそこに合わせてのことだったのでしょうか。

塚本氏 そこがスタートポイントです。画面サイズは議論があり、候補もいろいろと検討しましたが、まずはクレジットカードサイズをターゲットに置き、今の3.6型に落ち着きました。

―― ということは、企画時期を考えると、UN-LIMITのような大容量プランを意識していたわけではないんですね。

塚本氏 はい。そこは意識していません。

eSIMは来店せずに契約できるのがメリット 小型化にも貢献

楽天モバイル
小野木氏

―― 次に、eSIMに対応した理由を教えてください。企画をスタートした2018年は、ちょうどiPhone XSやXRがeSIMに対応した直後だったと思います。そういう意味だと、かなり早いですよね。

小野木氏 物理的なSIMカードは、物理的であるがゆえに、ユーザーの方がショップに行かなければなりません。差し替えて使えるのはいいのですが、eSIMに置き換えれば、お客さまはわざわざ来店していただく必要がなくなります。eSIMを利用可能な端末がもっと普及すれば、プロファイルを入れ替えるだけで(物理SIMのように)オン・オフを切り替えられるようになります。ユーザーの利便性も上りますし、事務手続きの煩雑さを撤廃できる利点もあります。

塚本氏 前職でもそうでしたが、技術的には一昨年の12月ぐらいから、デバイスにどう搭載していくかは、各メーカーが考えていました。AppleやGoogleはいち早くやりましたが、検討に関しては、それほど大きな抵抗はなく、技術的にも問題なく進めることができました。

 eSIM一本にするというのは確かにチャレンジングではありましたが、小野木が申し上げたような理由で、そこにフォーカスしていくことにしました。せっかく“楽天印”の端末を作るのであれば、本当にやりたいことにフォーカスする。サイズの制限もあって、eSIMに一本化することになりました。

Rakuten Mini
eSIMを搭載していることも特徴だ

―― あのサイズ感は、やはりeSIMあってのことなんですね。逆に、物理SIMを搭載していたら、もっと大きくなってしまったのでしょうか。

塚本氏 厚みを増せばできましたが、あのサイズに収めるのは難しかったと思います。FeliCaと同様、eSIMに関してもスタートポイントに近いかなり前の段階から決めていたので、(それ以外の)検討は特にしませんでした。

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