なぜこうなった!? 改めて「Rakuten Mini」の周波数“無断”変更問題を知る:5分で知るモバイルデータ通信活用術(1/2 ページ)
楽天モバイルのオリジナルスマートフォン「Rakuten Mini」が、ユーザーに告知することなく2度の仕様変更が行われていたことが判明しました。その仕様変更の何が問題なのか、改めて解説していきます。
ITmedia Mobileを含む各種Webメディアでも報じされている通り、楽天モバイルは自社ブランドで販売するAndroidスマートフォン「Rakuten Mini」について、製造時期によって対応する通信周波数帯の変更を行っていることを明らかにしました。
この変更について、同社は「国際ローミング利用時の接続性の向上を目的に行った」と理由を説明していますが、変更に当たってユーザーへの事前告知が行われなかっただけではなく、総務省への届け出も適切に行われていなかったことも明らかになっています。
問題は、発売当初の仕様と“異なる”仕様を持つRakuten Miniを手にしたユーザーが、ネット上で報告したことをきっかけに発覚しました。このような経緯で仕様変更が明らかとなったことは前代未聞です。
- →「Rakuten Mini」の一部ロットで「技適」の不適切表示が判明 ソフトウェア更新で解消へ
- →「Rakuten Mini」の新ロット、W-CDMA(3G)通信の仕様変更も判明
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今回の5分で知るモバイルデータ通信活用術では、この問題について改めて解説していきます。
対応できるBandには限りがある
Rakuten Miniにおいて問題となっているのは、対応Bandを告知なく変更したことです。これの何が問題なのかを知るためには、まず「Band」とは何なのかを知る必要があります。
無線は限りある資源の1つです。そのため、国や地域の規制当局が周波数帯ごとに使い道を定めています。歴史的な経緯もあり、モバイル(携帯電話)通信で使われている周波数帯は国や地域ごとに異なります。
携帯電話端末は、販売される国や地域(あるいはキャリア)で使われている周波数帯に最適化された状態で出荷されます。「全部の周波数帯に対応できないの?」と思うかもしれませんが、そうすると本体内に搭載するアンテナと関連機器)を増やさざるを得なくなり、本体のサイズと重量が増し、価格も当然上がります。
例えば、Appleの「iPhone」シリーズでは、同じ機種でも仕向け先ごとに2〜4モデルが用意されています。サムスン電子の「Galaxy」シリーズは、1つの機種でさらに数多くのモデルが用意されています。いずれも、販売される国や地域(あるいはキャリア)において最適な通信を実現するためです。
端的にいうと、1台のスマホが対応できる周波数帯には限りがあるということです。このことは、今回の問題を理解する上で非常に重要なポイントの1つとなります。
一方、周波数帯を「MHz(メガヘルツ)」や「GHz(ギガヘルツ)」と表記しても分かりづらいことがあります。特に北米や中南米では、送信と受信を離れた周波数帯の電波で行うキャリアも存在するため、実際の周波数で表記することが困難な場合もあります。
そこで、W-CDMA(3G)以降のモバイル通信規格では、対応周波数帯を「Band(バンド)」と呼ばれる区分番号で表すようになりました。W-CDMAとLTE、そして5G通信規格である「5G NR」では、Band番号なら同じ周波数帯を利用しています(※)。
(※)通常、W-CDMAは「ローマ数字」、LTEは「算用数字」、5G NRは「n+算用数字」で記述しますが、この記事ではW-CDMAのBandも算用数字で記述します
日本においてLTE(FD-LTE/AXGP/WiMAX 2+)が利用しているBandの一覧。注釈にはないが、NTTドコモのBand 3は東名阪(関東甲信越、中部、近畿)地区限定の免許となっている(出典:総務省)
この後詳しく解説するRakuten Miniの「問題」では、以下のBandが関係します。
Band 1
W-CDMAやLTE(FD-LTE)で利用される2.1GHz帯(日本では「2GHz帯」とされる)です。北米や中南米を除く世界各地で利用されています。日本では、楽天モバイル以外のキャリアが利用していて、特にNTTドコモとソフトバンクではメインBandに位置付けられています。
Band 4
W-CDMAやLTE(FD-LTE)で利用されている帯域です。北米や中南米で見受けられる、送信と受信で周波数帯が異なる特殊なBandで、送信は1.7GHz帯、受信は2.1GHz帯の電波を利用します。
Band 5
W-CDMAやLTE(FD-LTE)で利用されている850MHz帯です。主に北米やアジアで使われています。
Band 38
LTE(TD-LTE)で使われている2.6GHz帯です。主にヨーロッパやアジアで使われています。
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