Nokiaが世界を制した時代から中国メーカーの台頭まで 海外のモバイル業界20年を振り返る:ITmedia Mobile 20周年特別企画(3/4 ページ)
今から約20年前、日本人がiモードなど携帯インターネットを活用しはじめていたころ、海外では携帯電話といえば通話とSMSの道具だった。しかしその後すぐに黎明(れいめい)期のスマートフォンが次々と登場。2007年にiPhoneが出てくるとスマートフォンの時代となり、海外の端末メーカーの躍進が始まった。
第三のOS争いとXiaomiの登場、そして4Gが開始【2011年-2015年】
2011年になるとAppleがついにスマートフォン市場で世界シェアトップとなり、SamsungがNokiaを追い抜いた。またこの年はスマートフォンの総出荷台数がPCを超え、本格的なスマートフォン時代を迎えた。2011年から各国で4Gの本格的な普及が始まったこともスマートフォンの利用者を増やしていった。スマートフォン向けのコンテンツサービスやアプリケーション販売も大きく伸び、AppleとGoogleが携帯電話市場での影響力を高めていった。
この動きに対抗しようと、iOS、Android OSに変わる新しいOSが次々と生まれた。Firefox OS、Tizen、Ubuntuなどが誕生し、独自UI(ユーザーインタフェース)とアプリストアをひっさげ対抗を図った。しかしキラー製品やキラーコンテンツに乏しく、スマートフォンOSのシェアを奪うことはできなかった。
Nokiaは2010年にIntelの「Moblin」と自社の「Maemo」を統合し「MeeGo」を発表するが、2011年にはMicrosoftと提携して「Windows Phone」へと乗り換えた。カラフルなボディーのNokiaのWindows Phoneスマートフォン「Lumia」はAppleとGoogleに対抗できるスマートフォンとして大きな期待が持たれた。しかしスマートフォンOSシェアとしては最大でも5%に到達せず、2013年にMicrosoftがNokiaの端末部門を買収してテコ入れを図る。10年前には世界シェアトップだったNokiaが市場から消え去った瞬間だった。
このように、スマートフォンOSの覇権争いが続く中で、中国で1つのスマートフォンが登場した。Xiaomiの「Mi 1」だ。Xiaomiは2010年に創業し、HTCやSamsungのAndroid OSをより使いやすくするカスタムROM「MIUI」を開発。そのUIを搭載した自社スマートフォンを2011年に発表したのだ。Mi 1はSnapdragon S3を搭載するハイエンド端末ながらも1999元(当時約2万4000円)という低価格で人気が爆発し、中国国内で一気にメジャーメーカーとなる。
2013年にはスペックを引き下げた「Redmi」(紅米)を799元(当時約1万4000円)で発売。これにより、中国国内の中小メーカーはダメージを受け、大手メーカーも格安端末に参入せざるを得なかった。Lenovo、Coolpad(クールパッド)、そしてHuaweiなどが相次いで格安スマートフォンブランドを投入していった。なお、この時代のXiaomiの成功を「Appleのまねをした」と一言で片付ける声があるが、Xiaomiが行った販売戦略はAppleとは真逆だったことは記録に残しておきたい。Xiaomiは「徹底的な低価格」「オンライン販売に特化」「ユーザーとの直接対話(毎週のMIUIのアップデート)」でユーザーの信頼を獲得していったのだ。
2015年の世界のスマートフォンのシェアは、1位がSamsung、2位がApple、その後をHuawei、Lenovo、Xiaomi、LGが追いかけるという構図だった。このうち、Xiaomiは販売のほぼ全てが中国であり、10億を超える人口を持つ中国市場でいかに存在感を示していたかがよく分かる。しかしそのXiaomiも2015年のスマートフォン出荷台数を1億台に設定していたが、実際は7000万台にしか到達せず、一度挫折を味わうのだ。
このように、中国メーカーの力が徐々に高まる中で、Motorolaは2011年に分社を行い、端末事業を手掛ける「Motorola Mobility」が登場。しかしすぐさまGoogleに買収され、2014年にはLenovo傘下となる。Nokia、Ericssonと共に携帯電話市場黎明期を盛り上げたMotorolaも、ついに中国メーカーの子会社となった。それほどまでに中国メーカーは勢力を増していったのである。
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