総務省がSIMロックを10月から原則禁止へ――非回線契約者への端末販売義務化はキャリアの個性を殺すことにはならないか:石川温のスマホ業界新聞
「スイッチング円滑化タスクフォース」の報告書を受けて、総務省が2021年10月からSIMロックを原則禁止とする方針を固めた。SIMロックの原則禁止はユーザーにとってはいいことではあるが、キャリアの個性を奪うことになりかねない側面もある。
総務省は5月28日、SIMロックを10月1日から原則禁止する方針を示した。これにより乗り換えを促進し、事業者間の競争を促す狙いだ。
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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2021年5月29日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。
確かに、買ってすぐにSIMロックフリーであれば、乗り換えはしやすいかもしれない。しかし、そもそも、乗り換えを前提に端末を買うのであれば、家電量販店で売っているSIMフリースマホでいいのではないか。
SIMフリーが前提となると、キャリア間での「端末ラインナップ競争」がなくなるような気がしてならない。
総務省では、非回線契約者でも、キャリアで端末を買えるようにしろ、としている。そのため、覆面調査を行い、実際に非回線契約者でも購入できるかどうかに目を光らせている。
しかし、キャリアとすれば、契約ユーザーのためにメーカーと交渉し、調達してきた端末を他キャリアユーザーに使われるのは面白くなのでは無いか。本来であれば、回線契約者の顧客満足度を上げるためにオリジナル端末を作ってきたはずなのに、そうした効果が出ないのであれば、キャリア自身、オリジナル端末を作ることから撤退する可能性も出てくるだろう。
別にキャリアオリジナル端末まで、非回線契約者に売らせる必要はないのではないか。
各キャリアとも、KDDIであればROG Phone 5など、SIMフリーで個性の強い端末を取り扱うようになってきた。こうした、ネットや家電量販店ですでに売られているような端末であれば、非回線契約者にも売るべきだろう。
一方、今後、仮にINFOBARの新製品が出たときに、非回線契約者に売る義務が必要なのだろうか。INFOBARはauだからこそできた端末であり、auを契約しているという顧客体験を含めての製品なはずだ。これを非回線契約者に仕方なく売り、別回線で使われることが本当にユーザーのためなのかは、じっくり考える必要があるだろう。
総務省は、頭ごなしに料金競争のことしか考えていないが、本来であれば、端末のラインナップも競争のひとつにあるはずだ。また、そうした端末ラインナップを開発し、調達することが、キャリアとしての差別化とも言える。
総務省のやり口は、そうした端末でのラインナップ競争を否定するものである。
SIMフリーでどのキャリアでも使えるスマートフォンが登場し、どこでも買えるという選択肢が増える一方で、「ここでしか買えない」という希少価値で勝負するスマホが出てきてもいいはずだ。
なんでもかんでも「オープン」という考えは、せっかく世界でも幅広い選択肢の多い日本市場の魅力を損なうことに総務省は気がついていないのだろうか。
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