Beyond 5G/6G時代のライフスタイルを実現する技術とは? KDDI総合研究所小西氏が解説:ワイヤレスジャパン 2021(1/3 ページ)
ワイヤレスジャパン 2021でKDDI総合研究所 先端技術研究所長の小西聡氏が登壇し、「Beyond 5G時代のライフスタイルとテクノロジー」と題して講演した。5Gの最新動向と、Society 5.0を加速するための次世代社会基盤構想「KDDI Accelerate 5.0」を紹介。2030年頃のライフスタイルやユースケースを実現するためのテクノロジーについて語った。
6月2日から4日まで開催された「ワイヤレスジャパン2021」の最終日には、KDDI総合研究所 先端技術研究所長の小西聡氏が登壇し、「Beyond 5G時代のライフスタイルとテクノロジー」と題して講演。5Gの最新動向と、Society 5.0を加速するための次世代社会基盤構想「KDDI Accelerate 5.0」を紹介し、2030年頃のライフスタイルやユースケースを実現するためのテクノロジーについて語った。
内閣府が提唱する「Society 5.0」。これは「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会」と定義されている。
「KDDIは(リアルとネットの融合が進む)コロナ禍以前から、Society 5.0を目指していかなくてはならないと考えてきた」(小西氏)という。
KDDI Accelerate 5.0は7つの技術と3つのレイヤーからなる。Society 5.0のキーであるフィジカル空間とサイバー空間は、ネットワーク、セキュリティ、IoT、プラットフォーム、AI、XR、ロボティクスという7つの技術を使って初めて融和し、ネットワークだけでなくプラットフォームを作り、さらにビジネスまで作っていかないと、Society 5.0やDXを加速できないと小西氏は指摘する。
各レイヤーにおける取り組み
小西氏は、ネットワーク、プラットフォーム、ビジネスの各レイヤーにおける取り組みを紹介した。
ネットワークについては、ソフトバンクと地方における5Gネットワークの早期整備を推進する合弁会社を設立したり、4Gの既存周波数を使って5Gを展開したりと、5Gの基地局展開を進めている。また、5Gにおけるオープン化にも取り組んでいる。
O-RAN(オープンな無線アクセスネットワーク)で取り組んでいる例として紹介したのが、5Gのスタンドアロン構成によるエンドツーエンドのネットワークスライシング。KDDIが主導して仕様を策定したO-RAN準拠のコントローラー、RIC(Redio Intelligent Controller)使った実証実験を、2020年9月にサムスン電子とともに行って成功させている。
また、5Gの設備でさまざまなメーカーの機器を自由に組み合わせ、連結子会社の1つであるMobiComの通信装置と相互接続する実証実験を行っている。先に、Facebookが立ちあげた「Telecom Infra Project(TIP)」のCommunity Labで、基地局や固定系通信などのサービスを収容する役割を持つDCSG装置(Disaggregated Cell Site Gateway装置)の実証を行ってきた。MobiComのネットワークとつなぐことで、TIPコミュニティー以外の装置と相互接続した際のDCSG装置の実用性を確認し、オープン化した通信設備を商用で導入する際の課題を探っている。
プラットフォームレイヤーにおいては、「AWS Wavelength」をauの5Gコア設備内に配置し、超低遅延のソリューションを2020年12月から提供している。
「5Gは低遅延だが、それはあくまで無線のところだけ。エンドツーエンドで低遅延にしようとすると、やはりMECが必要。AWS Wavelengthの仕組みを使って、お客さまのシステムをわれわれの基地局の近くに置くことによって、エンドツーエンドの低遅延を図っている」(小西氏)
ビジネスレイヤーでの取り組みとしては、ARを活用した「au XR Door」を紹介した。2019年のCEATECで初めて展示され、「メディアからは『どこでもドア』みたいだと記事に取り上げられた」(小西氏)という技術で、2020年9月に商用化している。
スマホに表示されたドアをタップすると、ドアが開いてさまざまなVR空間が楽しめる。このXR Doorの仕組みを使って、科学未来館の展示空間をデジタル化する実証実験を行った他、お店に入って商品を見たり、バーチャルに化粧品を試せたりする「@cosme TOKYO -virtual store-」を提供している。
「ユーザーの体験価値をどんどん広げていかないと5Gが普及しない」(小西氏)との考えから、auのスマートフォンは全て5Gに対応。2021年5月末の時点で25機種の端末をそろえており、「他社よりも多い数。誰でも手に取りやすいように、ハイエンドのみならずミドルレンジ、ローレンジ含めて対応している」と胸を張る。
体験価値を高めるために、新しいアプリケーションも提供。KDDI研究所が12年以上も前から研究開発している「自由視点」の技術を活用した「ぐるっと自由視点」を紹介した。「自由視点のアプリケーションも、ようやく商用化できた。これは5Gの力があってできたところもある」(小西氏)
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