5Gの課題とは? そして6Gに向けた展望は? ドコモが技術面での取り組みを解説:ワイヤレスジャパン 2021(1/2 ページ)
ワイヤレスジャパン 2021にて、NTTドコモの谷直樹氏が「社会・産業のデジタル変革を加速する5Gの進化」と題して講演を行った。5G通信を安定させるためには、有線区間での低遅延や仮想化、無線アクセスネットワークのオープン化が重要になる。6Gに向けては、カバレッジの拡張、さまざまな産業向けの低遅延、高信頼通信は短期的な課題と認識している。
6月2日から4日まで開催された「ワイヤレスジャパン2021」。最終日の4日には、NTTドコモ 常務執行役員(CTO)R&Dイノベーション本部長の谷直樹氏が、「社会・産業のデジタル変革を加速する5Gの進化」と題して講演し、ドコモが取り組んでいるサイバー・フィジカル融合における5Gの活用や、Beyond 5G/6Gに向けた活動を紹介した。
新たな社会に向けたサイバー・フィジカル融合
ドコモは、新しいサステナブルな社会の具現化を目指し、ユーザーのあらゆる行動データを活用し、全てユーザー接点において価値を提供することを目指しているという。
そのために取り組んでいるのが「サイバー・フィジカル融合」だ。リアルな空間でさまざまなデータを集め、サイバー空間で活用して未来予測、最適解を見いだし、リアルな空間(フィジカル空間)にフィードバックして社会課題を解決する。
これを支えるコア技術として、リアルとフィジカルをつなぐ通信ネットワーク、ユーザー接点になるIoTデバイスや仮想空間につながるXRなどの仕組みが重要になる。サイバー空間においては、データ活用のテクノロジーも必要だ。谷氏はこれらに役立つ5G技術について説明した。
進化する5Gの技術、4つの取り組み
ドコモの5G契約は2021年5月時点で400万を超え、3月末時点で574都市にて5Gサービスを提供している。また、5Gを活用してソリューションを作り出す「5Gオープンパートナープログラム」には5月時点で約4000社が参加しており、実証実験やサービス展開を進めている。
ドコモの5Gエリア構築には、5G用に新たに割り当てられた3.7GHz、4.5GHz、28GHzの周波数を活用。3年後の2024年3月末には人口カバー率80%を目指している。
5Gについては、産業界から多くの要望が寄せられているという。「無線は変動要素が大きいので、安定させるための非常にテクニカルな課題がある」(谷氏)とし、解決に努めている4つのテーマを紹介した。
1つ目は低遅延化のためのMEC(Multi-Access Edge Computing)。5Gは低遅延といわれるが、これは無線区間の話。実際にユーザーがサービスを利用するときには、インターネットの先にあるサーバにあるコンテンツを見るといった形になるので、有線区間における遅延が相対的に大きくなる。体感でも低遅延なサービスを提供するためには、ネットワークの中に対応する仕組み、MECを置く必要がある。
それが「ドコモイノベーションクラウド」だ。ドコモのネットワークの中に置かれたクラウド設備で、セキュアで低遅延なサービスを提供している。現在は、東京、神奈川、大阪、大分の4カ所にMECを設置している。
5Gのユースケースで多いのは映像伝送で、画像認識の仕組みの提供に必要な性能を実現するためNVIDIAとも協力している。法人顧客と250件以上の商用サービスの案件があるが、映像伝送とXRの案件が約6割を占めるという。「5Gの高速・大容量を生かしたビジネスが立ち上がりつつある」と谷氏は手応えを語る。
事例の1つとして「AceReal for docomo」を紹介。ARグラスをかけた現場の作業員は、ARグラス上に映った映像を見ながら作業をする。そのグラスから得られる映像を見ながら、センターでは熟練者が作業指示を出す
神戸大学などが取り組んでいる遠隔ロボット手術支援の実証実験でも、ドコモのネットワークを活用している。国産の手術支援ロボットシステム「hinotori」を利用し、5Gネットワークとドコモイノベーションクラウドを介して、遠隔から手術支援ができるというものだ。
執刀医側の3D映像と患者側の2Dの直接映像がほぼ遅延なく表示され、スムーズに遠隔操作できるという。「神戸大学の先生にも高く評価してもらっている」(谷氏)というシステムは、5Gだけではなくて、ドコモイノベーションクラウドとのセットで低遅延が実現されている。ただ、それでも遅延が発生することがあるので、それをいかに抑えるかがテクニカルなチャレンジだとした。
2つ目はソフトウェア化(仮想化)。汎用(はんよう)ハードウェアを活用し、その上にソフトウェアを置く仕組みだ。ドコモでは、コアネットワークについては、2016年3月からマルチベンダー環境での仮想化を始めており、「災害や故障に強く、コスト的にも効果が出ていることが実証されている」と谷氏。コアネットワークについては、2024年までに100%仮想化すべく進めている。
3つ目はオープン化(O-RAN)。無線アクセスネットワークで親局と子局の間のインタフェースをオープン化して、さまざまなベンダーの装置をつなげられる形にしている。5Gは産業基盤になるので、いろいろなユースケースに対応する必要がある。「特に子局が多種多様になっていくので、それに対応するためには、さまざまなベンダーさんの装置を自由につなげられる環境が必要」(谷氏)とのことで、O-RANが進められている。
無線アクセスネットワークのオープン化を推進する「O-RAN Alliance」は、2018年2月にドコモと主要オペレーターによって設立された。直近1年半で加盟数が約2倍に増え、非常に関心が高まっているという。
ドコモでは、2020年に5Gサービスを開始した当時から、親局と子局の間はO-RAN Allianceに基づいたオープンインタフェースを導入し、マルチベンダーでつながる環境になっている。一方、仮想化RAN、vRANと呼ばれる親局の装置内インタフェースのオープン化は、「汎用サーバ上に親局システムを載せることができそうだという見立てをしている」(谷氏)。2022年度には、実際に利用できる形に持っていきたいと語っていた。
2021年2月には「5GオープンRANエコシステム」も立ちあげた。5Gのオープン化に関与してくれているパートナーと実証実験を行い、商用に耐える仕組みを検証。海外キャリアへの展開を目指す。
4つ目の取り組みはフレキシブルネットワーク化(5GC)で、いわゆるスタンドアロンだ。今の5Gはコアネットワークに4Gのネットワークを使っているが、ドコモでは2021年の第3四半期に5Gのコアネットワークを導入し、スタンドアロンのサービス提供を開始するという。
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