SIMロック原則禁止後の課題として浮上した「対応バンド問題」を考える(1/3 ページ)
SIMロックが原則禁止となったことで注目されているのが、周波数帯(バンド)の問題だ。携帯大手が販売するスマートフォンは自社が免許を保有するバンドにしか対応していないことが多く、それが他社での利用を妨げているとして、行政から問題視する声が挙がっている。一方で、全キャリアのバンドに対応するのにも問題が少なからずある。
キャリアが2021年10月以降に発売されるスマートフォンなどにSIMロックをかけて販売することが原則禁止となったことを受け、注目されているのが周波数帯(バンド)の問題だ。携帯大手が販売するスマートフォンは自社が免許を保有するバンドにしか対応していないことが多く、それが他社での利用を妨げているとして、行政から問題視する声が挙がっている。一方で、全キャリアのバンドに対応するのにも問題が少なからずある。一連の問題解決には何が必要なのだろうか。
快適な通信に必要なキャリアと端末のバンドの一致
2021年10月1日、総務省のガイドラインによりキャリア(携帯電話事業者)がSIMロックをかけることが原則禁止された。同日以降に発売されるスマートフォンは原則SIMロックがかかっていない状態で販売されることとなり、購入してすぐ他社のSIMに差し替えて使えるようになったのである。
しかも総務省は2021年9月17日、NTTドコモ、KDDI、沖縄セルラー、ソフトバンクに対し公正競争確保に向けた取り組みを要請。キャリアショップで非回線契約者に対して回線を契約せず端末購入プログラムを利用したり、端末だけを購入したりすることを拒否するなどの不適切な対応を根絶する努力を求めている。キャリアショップで端末だけを購入するのに抵抗があるという人も多くいたと思うが、国による“お墨付き”が出たことから、今後は堂々と購入してよくなったのだ。
そうした変化を受けて、スマートフォンの販売施策を大きく変える事業者も出てきている。実際、MVNOの「イオンモバイル」を運営するイオンリテールは、イオン店舗内に販売代理店として携帯各社のショップを構えていることを生かし、携帯大手の販売するスマートフォンとイオンモバイルのSIMをセットで販売することを推進するとしている。SIMロックの原則禁止によってスマートフォンの購入先と通信サービスが必ずしも一致している必要がなくなり、自由な選択がしやすくなったことは確かだろう。
しかし、だからといって、どのスマートフォンにどのキャリアのSIMを挿入して利用しても、快適に使えるとは限らない。なぜなら、キャリアが免許を持つ周波数帯(バンド)と、スマートフォンが対応するバンドが必ずしも一致しているとは限らないからだ。
電波の周波数には限りがあり、携帯電話向けとして使える条件の整った帯域が潤沢にあるわけではない。それゆえ、キャリアに免許が割り当てられているバンドは必ずしも一致しているわけではなく、ドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの4社に割り当てられているバンドのうち、4社全てに割り当てられているのは4Gの1.7GHz帯(バンド3)と5Gの28GHz帯(バンドn257)くらいなのである。
それ以外のバンドは各社ともにバラバラで、例えば同じ“プラチナバンド”と呼ばれる帯域であっても、NTTドコモとKDDIは800MHz帯、ソフトバンクは900MHz帯(バンド8)という違いがあるし、同じ「800MHz帯」といってもNTTドコモ(バンド18)とKDDI(バンド19)とでは異なるバンドという扱いになる。それゆえスマートフォン側が利用するキャリアが免許を持つバンドに対応していなければ、そもそも通信ができないのだ。
また、携帯各社はプラチナバンドなど、広域をカバーしやすい低いバンドで広いエリアをカバーし、広域のカバーに向かない高いバンドは都市部のトラフィック対策に使っていることが多い。それゆえ、例えばA社のプラチナバンドに対応していないスマートフォンにA社のSIMを挿入して使うと、あるエリアでは通信できるが別のエリアでは通信ができない、あるいはしづらいといった事象が発生して快適に通信できなくなってしまうのだ。
関連記事
「SIMロック原則禁止」が業界に与える影響 メリットばかりではない理由とは
総務省は現在進めている有識者会議で、SIMロックを原則禁止とする方針を打ち出している。だが、そもそもなぜSIMロックが存在し、なぜ問題視されてきたのか。そしてSIMロックが原則禁止となることで、市場にはどのような影響が出ると考えられるだろうか。“キャリア端末”のセット販売を仕掛けるイオンモバイル SIMロック禁止で変わる端末販売の在り方
イオンモバイルが10月から料金プランの値下げをするが、それ以上に衝撃的だったのが、端末販売の新戦術だ。イオンリテールは、大手キャリア3社の販売するスマートフォンと、イオンモバイルのSIMカードをセットで販売していく方針。同様の方法で販売を行うMVNOが増えてくると、キャリアとメーカーの在り方に与えるインパクトも大きくなる。「iPhone 13」シリーズは4キャリアとも“SIMロックなし”
9月24日に発売を控えている「iPhone 13」シリーズは、Appleに加え、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの4キャリアが取り扱う。ここで気になるのが「SIMロック」の有無。結論から言うと、ドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルいずれも、iPhone 13シリーズにSIMロックをかけていない。5G時代のキャリアとMVNOの関係はどうなる? 即日SIMロック解除に向けたガイドライン改正も
総務省は10月21日、有識者会議「モバイル市場の競争環境に関する研究会」の第19回を開催。今回は主に5G時代における、携帯キャリアとMVNOのネットワーク提供条件に関する議論が進められた。SIMロック解除のガイドライン改正に関しても説明があった。SIMフリースマホの「対応周波数帯」って何?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.