SIMロック原則禁止後の課題として浮上した「対応バンド問題」を考える(2/3 ページ)
SIMロックが原則禁止となったことで注目されているのが、周波数帯(バンド)の問題だ。携帯大手が販売するスマートフォンは自社が免許を保有するバンドにしか対応していないことが多く、それが他社での利用を妨げているとして、行政から問題視する声が挙がっている。一方で、全キャリアのバンドに対応するのにも問題が少なからずある。
特定キャリアだけのバンド対応を問題視する行政
そうした問題があることから、家電量販店やECサイトなどのオープン市場で販売されているSIMロックフリーのスマートフォンなら各メーカーのスペック表に、携帯各社が販売するスマートフォンなら携帯各社のWebサイトに、各機種の対応バンドを記載している。それゆえ、同じスマートフォンを使いながらキャリアを乗り換えるには、ユーザーがそれを参照し、さらに乗り換えるキャリアのバンドの使われ方を把握した上での変更が必要で、モバイル通信に関する知識が求められるのだ。
こうした問題は、携帯大手の主要バンドに一通り対応しているiPhoneでは基本的に発生しない。だがAndroidスマートフォン、特に携帯大手3社が販売する端末は自社が保有するバンドのみに対応して販売されていることが多いので、キャリアを乗り換えると通信品質に問題が出てくる可能性が高い。
そうした状況を問題視しているのが行政だ。例えば公正取引委員会は「携帯電話市場における競争政策上の課題について(令和3年度調査)」において、携帯大手3社が新規事業者を排除するため「端末メーカーに対して、当該新規参入事業者の通信役務に適合しないような端末を製造させることにより、新規参入事業者の事業活動を困難にさせるなどの場合には、独占禁止法上問題となるおそれ」があるとしている。
その上で端末メーカーに対し、「新たにMNO(キャリア)として参入した通信事業者が参入後に他のMNOと同等に事業活動を行える環境を整備する観点から、新規参入したMNOの周波数帯等にも対応する携帯電話端末を製造することが競争政策上望ましい」としている。これはあくまで新規参入事業者向けの対応ではあるのだが、公正競争のため自社だけでなく、他社のバンドに対応した端末の販売を求めようとしていることは確かだろう。
公正取引委員会「携帯電話市場における競争政策上の課題について(令和3年度調査)」より。新規参入キャリアの排除防止という観点ではあるが、特定キャリアのみのバンドに対応した端末を問題視している様子がうかがえる
もちろん全てのスマートフォンが、iPhoneのように全てのキャリアのバンドに対応していれば理想的ではある。ではなぜそれが実現できないのかといえば、そこには競争阻害とは異なるれっきとした理由があるのだ。
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