新しいIoTデバイスの実用化のためにバッテリーの開発を加速――ソフトバンクが「次世代電池Lab.」を公開(4/4 ページ)
ソフトバンクが、6月に栃木県宇都宮市内に開設した「次世代電池Lab.」を報道関係者に公開した。そもそもなぜ、ソフトバンクはバッテリー(充電池)の開発に注力するのだろうか。そしてどのようなバッテリーを作ろうとしているのだろうか。その辺りの事情もチェックしてみよう。
さらなる高密度化に見合った有機素材はMIを活用して見い出す
600~1000カテゴリーのバッテリーを開発する際には、正極材料に有機材料を使うことが想定されている。しかし、ソフトバンクの先端技術開発本部の西山浩司氏(先端マテリアル研究室室長)によると、候補となる有機材料は10の60乗ほどの組み合わせがあるという。さすがに、全てを検証することは非現実的となる。
そこで用いたのが、慶應義塾大学との共同研究に基づく、MIを用いた性能予測だ。モデルの作成に当たって用いる文献値は50個とそれほど多くはない。しかし、線形モデルを用いることで小規模のデータでも精度の高い性能予測ができるようになったという。西山氏によると、1000カテゴリーを目指せる物質の候補が見つかったとのことだ。
ただし。これはあくまでも“机上の計算”である。そのことは西山氏も認めているが、予測をすることで有望な材料を見つけるスピードが向上すると期待を込めているようだ。
エスペックとの協業で「安全性の高い高密度バッテリー」に
先述の通り、バッテリーの高密度化には安全の確保が欠かせない。開発過程では、その安全性を高めるべく精密な試験が求められる。
今回、次世代電池Lab.がエスペックのバッテリー安全認証センター内に設けられたのは、同社が持つ試験や認証のための設備やノウハウを生かすことで、安全性の高い高密度バッテリーを開発するためだ。さまざまな電池メーカーが開発した電池セルを検証し、その結果を各社にフィードバックすることで電池開発のスピードアップを図る。
バッテリーセルの試験は、既にEnpower Greentechの他、Amprius TechnologiesやSion Powerとも共同で進めている。ソフトバンクから各社に対して材料の提案をするなど、連携して次世代電池開発につなげていきたい考え。西山氏は「(ソフトバンクは)セルメーカーになるつもりはない。我々が望む電池が安く出てくればいい。色んなメーカーにフィードバックするような拠点にしたい」と話す。
ソフトバンクでは、今後も次世代電池Lab.の機能を拡張し、エスペックと連携しながらバッテリーパックやバッテリーモジュールの評価を進めていきたいという。
将来の事業拡大を見据えて、ソフトバンクでは今後も電池開発を強化していく考えだ。
関連記事
ソフトバンクが“次世代電池”を開発 配送ドローンやHAPSでの実用化を目指す
ソフトバンクが、次世代電池の研究開発と早期実用化を推進するために次世代電池の評価・検証施設「ソフトバンク次世代電池Lab.(ラボ)」を6月に設立する。次世代電池は世界各国で開発競争が進んでおり、今後の次世代デバイスの登場には不可欠とされている。同社は高密度化を進めることで、次世代デバイスへ適用していくことを目指す。2025年に「リチウム空気電池」の実用化へ ソフトバンクと物質・材料研究機構が連携
ソフトバンクは、4月11日に物質・材料研究機構と「NIMS-SoftBank先端技術開発センター」の設置に関する覚書を締結。両者はセンターでの共同研究を通し、次世代の電池である「リチウム空気電池」の実用化に向けて連携を開始する。- 「株式上場」「LINEモバイル提携」――ソフトバンクのこれから
モバイルネットワークを活用した「ドローン配送」は、いつ実現されるのか?
上空からユーザーの元へ直接荷物が配送される――。そんな未来が「ドローン」によって近づきつつある。その鍵を握るのがモバイルネットワーク。NTTドコモとKDDIに、ドローン配送への取り組みを聞いた。ドコモ、基地局の長期停電対策で燃料電池を使用――遠隔操作による省電力化も
ドコモが、災害時などで長期停電となった際の、基地局における新たな対策を発表した。従来の鉛蓄電池よりも軽くて小型の燃料電池を運用するほか、停電などで基地局装置が非常用電源で運用された場合、遠隔操作で省電力化を図る。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.