レビュー

4キャリアの5Gはどれだけつながり、どれだけ速い? iPhone 13シリーズで比較検証(3/4 ページ)

2020年に「iPhone 12」が発売された直後に5Gがどれだけつながるかを検証したが、当時はエリアが駅前などに限られていた。現在は山手線沿線ならばほぼ全域で5Gピクトが表示されるようになったが、実際はどうなのか?

楽天モバイル5Gはレアだが4Gは安定

 楽天モバイルの5G基地局は2021年9月末時点で約2000局と、他キャリアと比べて後れを取っている状況だ。同社の矢澤俊介副社長は半導体不足を原因として、5Gのエリア展開の時期が遅れていることを明らかにしている。一方で、現時点で4万局が“5Gレディ”の状態となっており、2022年春ごろまでに半導体不足の部材不足が解消した段階で、順次5G対応となるとしている。

 楽天モバイルで5Gらしい高速通信ができたのは、楽天本社がある二子玉川ライズ付近のみだった。検証した範囲では東京駅付近、浜松町駅(東京都港区)付近、上野毛駅(東京都世田谷区)付近、沖縄県那覇市の国際通り付近でも5Gピクトを目にすることがあったが、いずれも4G LTE並みの速度となっていた。


楽天モバイルのエリアマップ。5GのSub-6帯とミリ波の両方を同時に展開していく方針という

 実は、二子玉川の基地局だけは機能が異なっていたようだ。検証を行った10月中旬時点では、楽天モバイルの5Gエリアは試験稼働中となっており、二子玉川ライズの基地局のみ、5Gの「ビームフォーミング」機能が有効となっていた。

advertisement

 今後、楽天モバイルの5Gエリア展開の本格化するタイミングに合わせて、多くの範囲で安定した5G通信エリアになる可能性もある。


楽天モバイルの牙城・二子玉川。隣駅の東急上野毛駅や山手線大井町駅近辺でも5Gピクトは確認できたが、高速通信はかなわなかった

 なお、今回の検証では東京都心と沖縄県の那覇市街を中心に試用したが、多くの場所で楽天モバイルの自社回線の4G LTEに接続されていた。場所によっては下り3Mbpsを下回ることもあったが、少なくとも東京都心の屋外では圏外表示を見ることはほぼなかった。楽天モバイルでは2020年2月に「商用サービスの本格展開」を開始したばかりで、他社よりも一段安い料金だということを踏まえれば、かなり健闘しているとも評価できるだろう。

総評:“つながる5G”に確実な進展

 筆者は2020年秋にもiPhone 12シリーズを用いて速度調査をしたことがある。そのときは高速な5G通信を安定してできたのはauのみで、そのauですら新橋駅など限られた場所単位でしか通信が行えなかった。各社とも5Gの本格サービス開始から半年という段階だが、それにしても「スポット」でしか高速通信が享受できないというのは残念だという感想を抱いた記憶がある。

 それに対して、今回の検証では少なくとも東京23区内においては、まともに5Gが使える状況が整ってきたように感じた。特に、auとソフトバンクは山手線沿線を十分にカバーしており、駅構内やホームなどの導線で高速な通信を実用できる状況となってきた。それに対してドコモは「パケ止まり」問題でやや後れを取っているためか、4G LTEのエリアが多いように見受けられたが、東京駅や空港など、要所で安定して5G通信が利用できるように整備が進められている印象だ。


検証中に4キャリアの5Gピクトがそろった貴重な瞬間。場所は沖縄県那覇市の国際通り。実際の通信はソフトバンクと楽天モバイルが4G LTEとなっていた。直射日光のもとで撮影したため汚れが目立っている点はご勘弁を

 楽天モバイルは5Gのサービス展開で後れを取っているが、半導体不足が解消し、同社の表明通りに状況が推移するなら、2022年夏までには5Gエリアが急速に拡大する可能性もある。

 一方で、各社ともエリア化はやはり東京都心が中心となっており、例えば東は荒川の渡った先の千葉県や、南の多摩川の先の神奈川県に入ると、5Gエリアはごく限定的な展開になっている。東京郊外のベッドタウンの住民にとっては、通勤先の都内では利用できるが、自宅周辺ではじわじわしみ出すようにエリア化が進んでいる状況と感じるだろう。

 昨今では新型コロナウイルス感染症の流行により、テレワーク化が急速に進みつつある。キャリア各社には郊外の5Gエリア整備も競って進めてほしいと思う。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.