社長と2人で開発 ピーアップがニッチなスマホを作り続ける理由(3/3 ページ)
併売店の「テルル」を運営するピーアップが開発したMode1シリーズは、着実にラインアップを増やし、販路も徐々に広げている。2015年12月に発売した初代Mode1から丸6年がたった今でも、変わらず端末を投入し続けている。Mode1シリーズは1機種を除き、あくまでピーアップの独自設計で開発しているという。
最初から2万2000円で出したいという思いがあった
―― 冒頭で、MVNOが台頭した時期に合わせて投入したというお話がありましたが、今現在だと、MVNOの勢いにはブレーキがかかっています。その影響は、何かありましたか。
梅澤氏 あまりありません。Mode1 GRIPは2万2000円に設定していますが、これは(端末購入補助で)値引きできるギリギリの金額です。うちにはまったく利益がありませんが(笑)、この価格帯の端末は少ないと思います。この端末は、最初から2万2000円で出したいという思いが強くありました。代表からも、「利益があろうがなかろうが2万2000円」と言われています。そこまでのコストで作れるものということで開発をしています。
もう少しお金を使えれば、カメラのCMOSをこれにできたのに……といったようなことはありました。今、CPUや液晶の値段が異常なほど上がっているので、その中で作らなければなりません。
―― 端末購入補助を上限まで出せば、無料になります。SIMカードにキャッシュバックをつけているキャリアもありますが、そういったところと一緒に買われていることが多いのでしょうか。
梅澤氏 テルルの中には、そういったお客さまもいらっしゃいます。そもそも、ガラケーを使っていた方や、スマホでもインターネットをほとんど使わない方に対して、今はオーバースペックな端末が多すぎます。そういう方には、特に刺さりやすいですね。電話だけしたい、LINEだけでいいという方には、小さい端末の方が便利というのはあると思います。
Mode1 GRIPはライフサイクルが短くなる可能性がある
―― 端末ですが、どのぐらいのペースで出していくご予定でしょうか。
梅澤氏 大体2年に1回ですね。
―― ということは、昨年Mode1 GRIPを出したので、今年はないと考えていいのでしょうか。
梅澤氏 CPUは3、4年かけて販売していますが、Mode1 GRIPでは単年度でライフサイクルが終わるものを選んでしまいました。コストを落とす方策が、それしかなかったからです。ですから、Mode1 GRIPはライフサイクルが従来よりも短くなる可能性があります。
―― サポート情報を見ていると、比較的アップデートをきちんとやっているようにも見えます。
梅澤氏 話が戻りますが、弊社にはテルルというお店があり、サポートは僕自身も受けています。コールセンターのデータも見て、お客さまの声で納得したもの、変えた方が使い勝手がよくなるものに関しては、アップデートを走らせるようにしています。例えば、小さい携帯は盗撮などの犯罪に使われることがあるので、カメラ音は落としたくなかったのですが、音がデカすぎるという声があります。こういった、「そうだよね」という声は、極力反映させようとしています。
コロナの影響は相当出た
―― 販売状況はいかがでしょうか。狙い通りの台数が出ていると見ていいのでしょうか。
梅澤氏 いっぱい出てくれればいいのですが、台数を抑えても出せるような計算をしています。市場的な要素を見ると、小さい端末はそれほど売れるかどうかが分かりません。Rakuten Miniは売れましたが、あれは例外ですからね。
―― 中国で製造しているということですが、コロナ禍の影響はありましたか。
梅澤氏 相当出ました。ただ、Mode1 GRIPに関しては、前作のMode 1 RRをリリースする前から案があったものです。力を入れていたので、既にテストはしていたため、中国への渡航がなくてもできた部分があります。
―― ということは、ゼロベースだったらできなかったということですね。
梅澤氏 怖くて手が出せなかったですね。特殊な液晶を搭載していることもあり、日程が足りなくなっていたと思います。
取材を終えて:独自端末がショップの生き残りにつながるか
ピーアップがMode1シリーズを継続的に投入できているのは、テルルという併売店の存在が大きかったようだ。大手メーカーにはあまりない、市場の隙間にフィットする端末を開発していることも、一定数のユーザーから受け入れられている要因といえる。販売店を運営する会社が開発しているだけに、価格設定にもセンシティブなことが分かった。端末購入補助に厳しい制限がつき、ショップには厳しい状況が続いているが、独自端末の販売は生き残り策の一環という意味合いもありそうだ。
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