「一括1円」と「実質1円」は何が違う? スマホの割り引きは“からくり”に要注意!:元ベテラン店員が教える「そこんとこ」(1/2 ページ)
最近、スマートフォンを「一括1円」とか「実質1円」で販売する光景をよく見かけます。中には税込みで2万2000円を超える割り引きも見かけます。しかし、どういう“からくり”で割り引きをしているのか、よく確認しないと損をすることもあります。まとめて確認していきましょう。
春の新生活に合わせて、携帯電話を買い替えようと考えている人は多いと思います。ひと昔前なら、春商戦は年間を通じて最も安く携帯電話を購入できるタイミングで、気になる機種を安く買ったり、同じ価格で検討していた機種よりもハイスペックな機種を買ったりと、“おトク体験”をしてきた人も少なくないはずです。
ところが、2019年10月に一部施行され、2020年4月から完全施行された改正電気通信事業法の影響で、このような割引が厳しく制限され、1年間を通して端末価格が変動することがほとんどなくなりました。端的にいうと、いつ買っても変わらないという状況になってしまったのです。
ところが、2021年中頃から特定の機種に限って「一括0円(1円)」「実質0円(1円)」といったように昔のような激安ぶりで販売されるようになりました。「改正法で割引に制限が入ったんじゃないの?」と思う所ですが、実はこの割引は“合法的”に行われているものです。
今回の「元ベテラン店員が教える『そこんとこ』」では、現在の「店頭特価」の仕組みを解説していこうと思います。
昔ながらの「一括払い」割引(今は法令で上限規制あり)
「携帯電話の特価」と聞くと、真っ先に思い浮かべるのは「一括0円(1円)」など、数万円する本体が無料に近い価格で販売されるというものでしょう。機種こそ限られますが、現在もこのような販売方法はよく見かけます。
この「一括割引」ですが、本当に“お買い得”なのかどうかを知るには割引の内訳を良く見てください。店舗や機種によって割引の組み立て方が異なることがあります。
現在の法令では、自ら電波を保有する大手キャリア(MNO)または一定の条件を満たしたMVNO(※1)が端末を販売する場合、回線契約とのセットを条件とする割引は税別で2万円までという上限規制があります。端末の販売価格が税込みで2万2000円程度に設定されている場合、この規制の範囲内で「一括0円(1円)」を実現可能です。法令では本体価格が0円を下回ることも禁止しているので、本体価格が税別2万円未満の場合は、販売価格が自動的に値引きの上限額ということになります。
(※1)契約数が100万件を超えるMVNO(2022年3月現在はインターネットイニシアティブとオプテージが該当)
なお、ショップ(代理店)が独自に回線契約を条件とする割引を行う場合は、キャリアの値引きと合算して税別2万円までとなります。販売条件をよく見てみると「キャリアの値引き+店舗独自の値引き=2万円引き」というケースもよくあります。
とある家電量販店における「回線とひも付く割引」の例を2つ見てみましょう。
例1:ドコモの「Galaxy A21」が一括1円
この量販店のNTTドコモコーナーでは「Galaxy A22 5G SC-56B」が税込み2万2000円で販売されていました。しかし、ドコモ回線をMNP/新規契約すると2万1999円引きの「一括1円」で購入できます。MNP契約と新規契約で同じ価格なのですが、契約方法によって割引の組み立てが少し異なります。
MNP契約の場合、SC-56Bはドコモの「5G WELCOME割」の対象となります。これにより、本体価格が1万6500円値引きされます。その上に、店舗が独自に4399円の割引をすることで「一括1円」を実現しています。先述の通り、回線とひも付く割引は2万2000円が上限なので、キャリアと店舗の値引きで“ギリギリ”を攻めています。
一方、新規契約の場合はどうでしょうか。SC-56Bは純粋な新規契約の場合も5G WELCOME割の対象……なのですが、満15歳以下の契約者/利用者に限って適用される上、割引額が1万2100円に減額されます。そのため、契約者/利用者の年齢によって、以下の通り割引の組み立てが変わります。
- 契約者/利用者が15歳以下の場合
- 5G WELCOME割(1万2100円)+店舗独自割引(9899円)=2万1999円引き
- 契約者/利用者が16歳以上の場合
- 店舗独自割引のみ=2万1999円引き
いずれにしても、MNP契約と比べると(形式上は)店舗の持ち出しが多くなっています。とはいえ、繰り返しですが回線契約とひも付くため、割り引き額は税込み2万2000円以内に収まっています。
とある家電量販店のNTTドコモコーナーで「Galaxy A22 5G SC-56B」がMNP/新規限定で一括1円で販売されていました。契約種別や年齢によって割引の組み立てが大きく異なるためか、どうやって割り引いているのかという図は省かれています
例2:UQ mobileの「Galaxy A21」が一括1円
同じ家電量販店のUQ mobileコーナーでは「Galaxy A21 SCV49」が税込み2万2000円で販売されていました。しかし、UQ mobile回線をMNP/新規契約すると2万1999円引きの「一括1円」で購入できます。この割引はUQ mobileの「UQスマホおトク割」を「増量オプションII」に加入した状態で適用することを前提とした価格ですが、やはり契約方法によって割引の組み立てが少し異なります。
MNP契約の場合、UQおトク割によって本体代金が2万1450円引きとなります。その上に、店舗が独自に549円の割引をすることで「一括1円」を実現しています。
一方で、新規契約の場合、UQおトク割によって本体代金が1万7600円引きとなります。その上に、店舗が独自に4399円の割引をすることで「一括1円」を実現しています。
どちらも最終的には「一括1円」なのですが、店舗の持ち出し額が契約種別によって変わっています。また、ドコモの事例と同様にキャリアと店舗の合算で割引額を税込み2万2000円以内に収めています。
とある家電量販店のUQ mobileコーナーでGalaxy A21 SCV49がMNP/新規限定で一括1円で販売されていました。この店舗の場合、掲示において純粋な新規契約時の割引の組み立てを図示しています
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