宇宙に自律的な通信インフラを ドコモ5G Evolution & 6Gの取り組み:ワイヤレスジャパン 2022(2/2 ページ)
「ワイヤレスジャパン 2022」が5月25日から27日まで開催された。26日にNTTドコモの常務執行役員(CTO) R&Dイノベーション本部長の谷 直樹氏が講演。「サステナブルでWellbeingな社会の実現に向けて」と題し、5G、さらに6Gに向けたドコモの取り組みを紹介した。
「5G Evolution & 6G」に向けた研究開発
ドコモをはじめとするNTTグループ各社は、5Gからその先の6Gに向けた研究開発をすでに進めている。「とにかく使えそうなものは、いち早く導入して5Gの進化にもつなげていく」(谷氏)という狙いから、さまざまな取り組みを行っている。
講演では、それらの取り組みのうち、カバレッジ改善、カバレッジ拡張に関する取り組みを紹介した。
「置くだけアンテナ」は、データが流れている誘電体導波路の上に、箱のようなアンテナを置くことによって、そこから電波が漏れて、受信機でデータを受信するというもの。これはミリ波を展開していく際に非常に有効と期待されている。ミリ波の電波が到達しにくい工場などで、こういった仕組みをあらかじめ敷設しておくことで、うまく活用できそうだという。
NTTグループは、「衛星・HAPSによる通信サービスの提供」を検討。HAPSや、LEO、GEOといった低軌道、高軌道衛星を組み合わせる形で、非陸上の通信環境を作ろうとしている。事業の主体として、NTTとスカパーJSATの合弁でSpace Compassを7月に設立することを発表している。
HAPSで期待されるユースケースは大きく2つあるという。1つはバックホールの役割で、可搬基地局などに活用する。もう1つが「移動系」で、端末に直に電波を届ける。HAPSは高度約20kmを飛ぶ無人飛行機だが、「この距離であれば普通にスマートフォンでも受信できる」(谷氏)といい、実際に確認されている。
なお、HAPSが活用される環境は地上とは違うことから、HAPSのシミュレーターを作って性能評価や干渉の検証も進めている。
NTTグループでは宇宙統合コンピューティング・ネットワーク構想を練っており、HAPSは宇宙RANを構成する要素。それに加えて宇宙データセンターを構築するべく検討しているという。
空だけではなく、海の中での通信「海中音響通信技術」も研究開発している。伝送速度を高め、水中ドローンと海中音響通信を使い、リアルタイム映像伝送の実験を行った。NTT未来ねっと研究所の技術を使っており、海の中で撮った映像を超音波で伝送。水中ドローンが撮影した映像を海上のモニターで表示したところ、比較的にスムーズな映像を視聴できたという。従来は通信速度が限られていたが、今回の技術を使うことで、海中でも滑らかな映像を伝送できることが確認できた。
5G Evolution &6G技術を活用した「人間拡張基盤」
こうして研究開発している5G Evolution & 6Gの技術活用を探るため、関連パートナーとユースケースの検討を行っている。
ユースケースの1つが「人間拡張基盤」だ。「6Gの環境になると伝送遅延も極限まで小さくなり、神経の伝達する時間を超えるのではないか」(谷氏)ということから検討を進めているもの。人間の身体にセンサーを取り付け(センシング)、そこから得られるデータをプラットフォーム(人間拡張基盤)に収集。それをロボットや人間、アバターなどに合わせる形で適切に変換を行い、動作させる(アクチュエーション)。これが実現すると、人間の動きをそのままロボットにさせたり、プロスポーツ選手のスキルをアプリのようにダウンロードして利用したりできるようになる。
6Gの検討は2017年から開始しているが、グローバルでは非常にスピーディーに検討が進んでいる。「われわれの見立てでは5Gよりも2、3年早い」とのことで、「グローバルのスピードにしっかりと付いて戦っていく必要がある」と谷氏は述べた。2025年の大阪・関西万博におけるユースケース、デモンストレーションの展示、6Gの商用化に向けて、パートナーと一緒に検討を進めていくと語った。
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