ドコモ傘下となった「OCN モバイル ONE」の戦略 「Y!mobileやUQ mobileに対抗できるブランドになりたい」:MVNOに聞く(2/4 ページ)
ドコモのエコノミーMVNOに参画して以降、OCN モバイル ONEが順調に契約者数を拡大している。一方、同社をドコモ傘下の廉価ブランドと見ると、Y!mobileやUQ mobileには完全に対抗し切れていない。今後、NTTレゾナントはどのような戦略でOCN モバイル ONEを展開していくのか。
ガラケーを使っている人にとっては、安いだけでは難しい
―― 500MBコースを選択する方は、やはりフィーチャーフォンからの乗り換えが多いのでしょうか。
植本氏 そこは正確には分かっていません。他社からのポートインがある(多い)からです。ガラケー(フィーチャーフォン)からというより他社からですが、SIM単体が多いということは、既にスマホデビューをしている想定になります。(他社のサブブランドより)われわれのプランの方がフィットしているという方が多いのではないでしょうか。このプランを始める前から、ドコモが3Gのユーザーをある程度抱えていることは分かっていましたし、停波の予定も出ていましたが、ここは狙い通りほどにはなっていません。まだまだ課題があると思います。
―― データ容量が少なく、無料通話もついていたのでフィーチャーフォン向きかと思いましたが、そうではないんですね。そこは意外でした。
植本氏 停波することは分かっていたので、お客さまが能動的に乗り換えてくると思っていた部分はありますし、価格にも訴求力はあると思っています。ただ、ガラケーのお客さまは音声通話が中心で、急いでスマホにする必要がなく、ギリギリまでガラケーでいようと考えているのかもしれません。そういった方に対しては、安いだけでは難しい。デバイス面も含め、本当の停波を迎える前にある程度マイグレ(マイグレーション=通信方式を変える移行のこと)をできるようにしていかないと、商機を逃すことになると思っています。
―― それは、Androidベースのフィーチャーフォンのような端末のことでしょうか。
植本氏 そういったものも検討の1つです。(マイグレーションのときは)デバイスを変えなければなりません。そこを乗り越えてもらうには工夫が必要です。ガラホ(Androidベースのフィーチャーフォンを指す造語)のようなものは1つのアイデアですが、それも含めて検討する必要があります。強制的に乗り換えが必要になるタイミングは来るので、他社に乗り換えられるのは避けたいですし、われわれもそこは取りたいと思っています。
500MBコースのユーザーは音声定額の選択率が高い
―― 500MBコースには、無料通話が10分付いています。音声通話中心の層には魅力的なようにも見えますが、それもあまり効いてないのでしょうか。
植本氏 感覚的には、通話メインの人にはかなりメリットがあると思っています。従量の料金も30秒11円(税込み)と安いですし、通話定額の単価も他に比べて安い。ただ、その訴求をエコノミーMVNOで連携して、ドコモショップというリアルな場でやっていく必要があります。オンラインは自分たちだけでできますが、リアルチャネルはきちんとコミュニケーションを取っていかなければいけない。そこはわれわれの努力不足の面があると思っています。
ただし、(500MBコースは)音声定額を選ぶ率がかなり高い。オンラインよりも圧倒的に高い選択率になっています。ある程度音声の魅力があり、そこに気付いてもらえれば申し込んでいただけるということです。低容量プランを申し込んでいる時点で、電話の利用がメインですからね。そこはわれわれの強みですし、同じエコノミーMVNOとして並んでいるトーンモバイルとの差別化点でもあります。店頭でその訴求をもっとしてもらえるよう、頑張らなければなりません。
木藤氏 500MBコースには無料通話があり、10分相当の通話が無料になります。リアルな店舗ではショップの方がしっかり説明しているので、お客さまに合ったプランが選ばれています。一方で、音声定額を契約せず、電話の受け専用にしている方もいます。そういった意味で、(電話の)売り方も二極化しています。
楽天モバイルの0円廃止後に契約数が増えている
―― 話は変わりますが、5月に楽天モバイルが0円プランの廃止を発表して以降、MVNO各社が契約者数を伸ばしています。OCN モバイル ONEもその受け皿になっているのでしょうか。
植本氏 (契約者数は)増えています。ポートインしている方の中でも、楽天モバイルからのウェイトはかなり上がっています。
―― 2倍だったり、10倍だったり、さまざまな数字が出ていますが、どのぐらい増えたのでしょうか。
植本氏 実数は難しいですが、数字として増えていることは確かです。これは非常にありがたいと思っています。楽天モバイルを今まで契約していた方が、新たな行き先を探す中で500MBコースがあります。今流出しているのが、0円で済んでいた方か、少しお金を払っていた方かは分かりませんが、いずれにせよ、低容量のユーザーだったことは間違いありません。ある程度安価に使えるということで選んでいただいているので、そこはきちんと受け入れていきたいと考えています。
―― 楽天モバイルは、Rakuten Linkの利用で通話料が無料になります。音声通話まで含めて訴求できているMVNOは少ないので、無料通話があるのはいいかもしれないですね。
植本氏 プレフィックスを入れるときにだいぶ議論しましたが、アプリから通話してもらうのはかなりハードルが高い。われわれぐらい分かっていれば苦もなくかけられますが、3Gマイグレユーザーにいちいち「ここから電話して」と言っても通用しません。アプリから通話しなくても対象になり、かつ通話料が半額になるという状態を作ろうとしました。Rakuten Linkで通話料が無料と言っているのとは、思想がだいぶ違います。ここは、差別化できている点としてアピールしていきたいですね。
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