ドコモ傘下となった「OCN モバイル ONE」の戦略 「Y!mobileやUQ mobileに対抗できるブランドになりたい」:MVNOに聞く(4/4 ページ)
ドコモのエコノミーMVNOに参画して以降、OCN モバイル ONEが順調に契約者数を拡大している。一方、同社をドコモ傘下の廉価ブランドと見ると、Y!mobileやUQ mobileには完全に対抗し切れていない。今後、NTTレゾナントはどのような戦略でOCN モバイル ONEを展開していくのか。
Y!mobileやUQ mobileに対抗できるブランドになりたい
―― それと少し関係する話ですが、OCN モバイルはMVNOとして成長したいのか、ドコモのサブブランドとして他社に対抗していくのか、位置付けとしてはどちらと考えているのでしょうか。
植本氏 ドコモから「サブブランドとして振る舞え」と言われているわけではありませんが、NTTの中でY!mobileやUQ mobileに対抗できるブランドになりたいと思っています。これは、ドコモの意思というよりもわれわれの意思ですね。実際、ポートインはかなり取れるようになってきていて、Y!mobileやUQ mobileからの率も高いです。料金プランとして、この2社にフィットしない方もいるからです。どちらも主戦場は3GBになっていますが、われわれはもう少し下に刻んでいる。そういった方に選ばれていますし、そこでは戦えると思っています。
また、このドコモ回線ということもあり、エリアは品質も違ってきます。回線のブランドで選ぶ方もある程度いるので、ドコモ回線が必要な方に指名買いをしてもらえるようになりたい。安いドコモ回線ならどこというときに、OCN モバイルで取っていければと考えています。
―― ただ、この2ブランドと比べると、まだ契約数には大きな開きがあります。足りないのはどういった部分とお考えでしょうか。
植本氏 だいぶ違うと思っているのは、認知度です。ここは圧倒的に違う。ただ、今までは認知度も足りないわ、チャネルのパワーも足りないわでしたが、エコノミーMVNOになったからは、リアルパワーでは負けていません。あとは知っているか知っていないかの世界です。われわれも事業的に拡大し、認知してもらうためのプロモーションができるようになってきました。昨年(2021年)もやっていましたが、これは継続的にやらないと、あのステージには行けないと思っています。
先行投資で、1人あたりの帯域をものすごく増やしている
―― 先ほど品質の話が出ましたが、実際に使ってみると、確かにOCN モバイルは速度が出ます。お昼休みでもあまり速度低下がありません。
植本氏 ここは先行投資です。ここ3年ぐらい、コストを品質維持に振ってきました。一時は、けっこう品質が悪い時期もありましたが、それだと販売時にお金を積み増しても、獲得してから解約されてしまいます。NTTレゾナントが運営に携わってから、最初にやろうとしたのが品質をよくすることです。そのため、1人あたりの帯域はものすごく増やしています。事業的には赤字を出してまではやれませんが、販売費とバランスを取っています。結果として、解約率はかなり低くなっています。
解約率が低くなるということは、ライフタイムバリュー(LTV)は高くなります。LTVが高くなれば、回収性が上がる好循環になります。規制もあって一番とは言いづらいのですが、ここは技術者にモニタリングしてもらいながらやっています。
―― ドコモグループだからといって、帯域が借り放題になるわけではないということですね(笑)。
植本氏 冗談抜きでズルはしていません。(接続料の)単価も他のMVNOと同じです。下手をしたら、MVNEにコムを挟んでいるぶん、高くなっているかもしれません(笑)。事業として、コストをかなりそこにかけています。その結果もあっての指名買いにつながっています。
―― とはいえ、500MBコースができ、ARPUは下がっているのではないでしょうか。コストをかけすぎて、大丈夫なのでしょうか。
植本氏 ARPUは若干下がっていますが、ARPUというより、LTVで見ています。ARPU×LTVで見て、かける費用配分を考えています。500MBコースでも全然構いませんが、どのプランであれ、マイナスに振れるような設定にはなっていません。品質を上げようと決めた時点から、代理店に手数料をバンバン払って売ってもらうようなことはしていません。今は量販店もやっていませんし、直販の端末値引きも効率化しています。お客さまに長く使ってもらう方が重要だからです。インフラサービスなので当たり前ではありますが、きちんと長く使ってもらえる方に還元するのが大事ですからね。
取材を終えて:他社のサブブランドとの差分をどこまで払拭できるか
エコノミーMVNOへの参画やグループ再編を機に、サブブランドとしての色合いを濃くしているOCN モバイル ONEだが、やはり一般層に浸透するには、まだ認知度が足りないこともうかがえる。UQ mobileやY!mobileの場合、メインブランドからの乗り換えに料金がかからなかったり、上位ブランドに戻る際には特典が提供されていたりするが、こうした点も、サブブランドとの違いといえる。iPhone利用時に構成プロファイルが必要になる点など、払拭(ふっしょく)しなければいけない差分はまだまだ残っている印象も受ける。
一方で、500MBコースが好調なように、料金プランの競争力は比較的高いことがうかがえる。UQ mobileやY!mobileにはない容量帯がそろっているのも、OCN モバイル ONEならではの魅力といえる。今の料金体系であれば、eSIMに対応することでバックアップ回線としての強みも発揮できそうだ。500MBコースのメリットを生かす意味でも、早期の対応に期待したい。
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