物理SIMなしiPhoneの登場も想定? IIJmioで音声対応eSIMサービスを提供する狙い:MVNOに聞く(2/3 ページ)
IIJは、10月にau回線を使った「タイプA」で、eSIMのサービスを開始した。同社は早くからドコモ回線でMVNO事業を展開してきただけに、なぜau回線から音声通話対応のeSIMサービスを開始したのかと疑問を覚える向きもあるだろう。フルMVNOとして提供しているデータ通信対応のeSIMサービスが伸びている中、音声通話対応のeSIMサービスを拡大する意義がどこにあるのか。
過去の知見を生かし、大きなトラブルは起こらず
―― eSIMの経験を積んでいたノウハウは生きている、ということですね。
亀井氏 サポート視点では、ここを積み上げないと難しいということは明らかでした。MNOはサブブランドも含めてeSIM化しているので、(組み合わせの)パターンはいろいろと想定しました。それもあって、使い勝手のところで問い合わせは少ないですね。本人確認も含めて、あまりつまずいている人がいません。
辻氏 2019年にβ版を出させていただき、翌年には「データプラン ゼロ」、その1年後にはギガプランを出しています。そういったこともあり、お客さま自身が慣れているのか、思ったほどは問い合わせがありません。スムーズに対応できているのは、大きな混乱は起きていませんが、そうなっているのは知見が生きているからなのかもしれません。
―― サービス開始直後ですが、売れ行きはいかがですか。
亀井氏 売れ行きは当初の想定より少し多いぐらいですね。ガツンと売れるわけではありあせんが、当初の想定よりは少し多いといった感じです。
辻氏 われわれはタイプAがタイプDより弱いので、そんなに来ないかなと思っていましたが、ふたを開けたら想定は上回っていました。ただ、想定外というほどかというと、そこまででもありません。意外だったのは、お客さま自身、そこまでタイプDじゃなければダメという感じではなかったことです。
―― 今は主回線かもしれませんが、維持費はMNOに比べると安いので、いざというときのために音声回線をもう1回線持っておきたい層への訴求はしていくのでしょうか。
辻氏 おっしゃるような使い方はありますし、そういう選択肢もありました。データ通信だけでなく、音声も一応持っておきたいという人は、確かにあると思います。
フルMVNOのeSIMとは仕組みは似ているが、eKYCは新しい要素
―― フルMVNOでのeSIMと、KDDIの卸のeSIMで、技術的に何か違いはあるのでしょうか。
亀井氏 現状では、タイプAはKDDIからeSIMを仕入れないといけないので、オーダーはフォーキャスト(予想)として出しています。
辻氏 ただ、実はそこまで大きな違いはありません。
亀井氏 KDDIの仕様が、僕らのフルMVNOの仕様と近しかったからです。改修という意味では、そんなに大きな変更なくできました。自分たちでサーバを持っているかどうかの違いぐらいですね。中の仕組みは似ていたので、(フルMVNOのeSIMの仕組みを)使い回しながらできました。
辻氏 eKYCは今までになかった要素です。これを新たに組み込み、システム的に動かしていくというところ(差分)はありました。
―― eKYCは、タイプDでeSIMを始める際にもそのまま使えそうですが、いかがですか。
亀井氏 その通りです。また、総務省がマイナンバーカードを普及しようと頑張っていますが、あれもかざして使えるような状態に持っていかなければなりません。次のバージョンではないですが、マイナンバーカードをかざして本人確認ができるよう、準備は始めています。
―― カメラだと、端末によってうまくいかないこともありますからね。
亀井氏 そうなんです。端末をどれだけ検証して、バージョンアップを繰り返しているかがeKYCベンダーの特徴になっていますからね。
辻氏 そこは一番ドキドキしていた部分です。お客さまにとって、eKYCはめんどくさい。そこもほぼ(トラブルが)なかったのは一安心です。
―― 大手キャリアのeSIMの場合、画像の送付などで本人確認を再度しなければいけないところもありますが、IIJmioのフルMVNOはボタンを押していくだけです。タイプAはどちらに近いのでしょうか。
亀井氏 通常の本人確認処理は必要になります。住所が変わっていなことを証明するため、eKYCではなく静的な画像を出す形です。
辻氏 不正利用防止の観点があり、(フルMVNOのeSIMのような形は)ちょっと難しいですね。
―― KDDIがそういう仕様で時間がかかるというわけではないのでしょうか。
亀井氏 そういうわけではなく、住所確認をしているのはあくまで事業者(IIJ)側の都合です。ただし、申し込みしたばかりの方(が再発行するケースで)は確認する必要がなかったりすることもあります。
ちなみに、夜はメンテがあるので再発行ができません。KDDIのサーバメンテが毎日あるからです。夜9時から翌朝9時までが、その時間になります。
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