IIJmio「ギガプラン」の反響と値下げの狙い 音声対応eSIMは「準備が整いつつある」:MVNOに聞く(1/3 ページ)
IIJは、2021年4月に導入したIIJmioの新料金プラン「ギガプラン」を、4月1日に値下げした。消費税の総額表示に対応した際の端数をなくすための色合いが濃いわずかな値下げだが、4GBプランを特に大きく値下げしている。ギガプラン開始から1年経過したのを機に、IIJmioの最新動向をうかがった。
IIJは、2021年4月に導入したIIJmioの新料金プラン「ギガプラン」を、4月1日に値下げした。新料金は既存契約者にも自動で適用される。消費税の総額表示に対応した際の端数をなくすための色合いが濃いわずかな値下げだが、その額は一律ではない。例えば、「2ギガプラン」は8円の値下げなのに対し、「4ギガプラン」は88円と、その額が大きい。4ギガプランは同社の主力なだけに、あえて競争力を強化したことがうかがえる。
2021年12月には音声定額オプションを改定。3分と10分の2つだった選択肢を広げ、5分、10分、完全定額の3本柱にラインアップを刷新している。ギガプラン導入以降、IIJmioはかつての勢いを徐々に取り戻している。契約者数は純増基調に戻り、流動性が高まる中、利用者の獲得と解約の抑止に成功しているようだ。2月8日に開催した決算説明会では、IIJmioの回線数が107.3万を突破し、ギガプランの契約数も60.7万に達し、移行が順調に進んでいることが明かされている。
一方で、IIJがギガプランを導入して以降、MVNOを取り巻く市場は大きく変わった。KDDIのpovo2.0や、ソフトバンクのLINEMOが低容量プランを導入したのはその1つだ。ドコモもエコノミーMVNOを導入し、OCN モバイル ONEやトーンモバイルが大きく販路を広げている。こうした市場の影響は、IIJmioのサービスにどう影響したのか。ギガプラン開始から1年経過したのを機に、IIJmioの最新動向をうかがった。インタビューにはIIJ 執行役員 MVNO事業部長の矢吹重雄氏と、MVNO事業部 コンシューマサービス部長の亀井正浩氏が答えた。
“1円端末”の影響でギガプランの伸びが鈍化
―― ギガプランの開始から1年がたちました。まずは、現時点での手応えをお話しいただけないでしょうか。
矢吹氏 正直言うと、もう少し伸ばしたかったのが本音です。各社の値下げを見込んだ料金設定をしていたので、もっと戦えるのではと期待していました。ただ、やはり市場環境がなかなか厳しい。流動性も若干ですが低くなっています。特に、2021年秋以降がちょっと厳しくなっています。その要因の1つに、1円端末問題(iPhone SEなど、特定の端末が本体の直接値引きで規制を回避し、1円などの低価格で販売されている現象のこと)がありました。そこはかなりオペレーションを厳しくして獲得を絞るようにしましたが、少し厳しい状況でした。
―― それは、かつてあったようなMNPの“弾”(MNP用の割引を受けるため、料金の安いMVNOに加入してから即転出する行為のこと)にされてしまったということでしょうか。
矢吹氏 はい。弾にされてしまうことがありました。これで加入をかなり絞ったこともあり、オペレーションが煩雑になってしまいました。簡単に言うと(新規加入時の)審査を厳しくしています。いろいろな施策で契約者の流動性を高めた結果、(キャリア間を)移りやすくはなりましたが、そこにエサがぶら下がると簡単に移動してしまう。そんな状況が生まれました。
僕らからすると、健全性という意味で「どうかな」と思うところがあり、これはMVNO委員会や総務省のワーキンググループでもアジェンダとして挙げています。これが続いていく世の中はいかがなものかという思いがあります。
―― とはいえ、ギガプランはMVNOの中で価格も攻めていましたし、実際にユーザー数は伸びています。
矢吹氏 ahamoが登場して、一時的に携帯電話市場の流動性は高まりました。ただ、われわれの感覚では、MNPしたい人だけが積極的で、現状維持バイスで動かない人はそのまま動いていません。各社の情報を見ても、そこまでキャリア間の移動が盛んではなかったという印象があります。これはわれわれ(のサービスが)刺さっていなかったというところもあると思います。
UQ mobileやY!mobileの3GBプランと同水準に
―― 4月1日からの値下げは、その挽回策という意味合いがあるのでしょうか。金額的には消費税の総額表示に対応したというように見えましたが。
矢吹氏 消費税の話はシステム的な問題として残っていました。突貫工事で作った(料金プランだった)ので、最後に取りこぼしてしまったところありました。そこで、消費税をインクルード(内税化して分かりやすい金額にすること)する中で、他にやらなければいけないことを考えました。一人一人のデータ使用量は、どんどん増えています。特に以前の3GB(ミニマムスタートプラン)を契約していた人たちの容量が増えているのが、見えてきました。そこで、4GBの料金をより強めに落とし、そこをしっかりフォローしていくことを狙いました。
―― NUROモバイルなど、さらに安い料金を仕掛けているMVNOがあります。ああいったところに対抗する意味合いもあったのでしょうか。
亀井氏 どちらかと言うと、UQ mobileやY!mobileの3GBプランと同水準に合わせるのが狙いです。同じMVNOに合わせるよりも、そちら(大手キャリアのサブブランド)の獲得についていこうとしました。
矢吹氏 3GBプラン(ミニマムスタートプラン)を契約している方の新プランへの移行を進めて、末永く使っていただきたいという狙いもありました。
―― ただ、3月31日までの料金でも、旧プランより新プランの方が割安です。なぜプラン変更せずに残っている方がいるのでしょうか。
亀井氏 ご案内はしているのですが、まだまだ切り替えていない方がそれなりの数いらっしゃいます。店頭での受付も少なくなっていますが、受注を停止するには至っていません。ギガプランはサービス開始とシェア機能のリリースが2段階に分かれていましたが、そのときに(シェア機能を)待っていた方が乗り換えていない印象があります。移行キャンペーンも最初のタイミングでしかやっていないので、次のキャンペーンを待たれている可能性もあります。
その結果、私たち自身の中での流動性も下がっています。もともと料金が安い中で、プラン変更も面倒だと感じる方が一定数いるのだと思います。
矢吹氏 もともと1万円近かった料金が1000円ちょっとになっても市場が10%強しか取れないのを見ると、100円、200円下がったからといって動くかというと難しいのかもしれません。まだまだいろいろな障壁を退けていけないと、そこには至らないのだと思います。
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