総務省の有識者会議で「上限2万円規制」の見直し気運高まる――NTTドコモ「中古販売価格を割引の目安にすべき」:石川温のスマホ業界新聞
総務省の「競争ルールの検証に関するワーキンググループ」が、今度は端末代金の割引に関するルールの見直しに動こうとしている。現在は回線とひも付く割引が「税別2万円」に制限されているが、ひも付かない割引が若干エスカレート気味な面もある。そこで「中古価格を参考にして上限設定をする」という案が出ている。
総務省は2022年11月29日、「競争ルールの検証に関するWG(第37回)」を開催した。
業界内では「総務省は上限2万円割引ルールを見直す気なのではないか」という噂話が流れていたが、実際、今回の有識者会議からは割引ルールを見直そうという機運が高まっているのがわかる。
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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2022年12月3日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。
NTTドコモからは改めて「キャリアが端末を通信サービスをセットで売る意義」が強調された。「ネットワークおよび端末をセットで進化させ、その上で実現する各サービスにより新たな価値を提供する」「ユーザーはキャリアショップによるサポートを望んでおり、多くは通信とセットでの端末購入が選択されている」としている。実際、NTTドコモでの端末販売におけるセット販売の比率は、法改正前はほぼ100%だったのに対して、法改正から3年が経過しても98%にとどまっていることが明らかになった。キャリアにおいては完全分離などはほとんど意味がないことがわかる。
端末割引に関しては上限2万円規制があるため、上限規制のない「端末のみ販売」での高額な割引が横行していると指摘。そのため、転売問題や白ロム販売拒否などの法令違反の引き金になっているという。
そこでNTTドコモでは通信とのセット販売においては「割引上限を中古販売価格を参考に適正価格で販売してはどうか」という提案が行われた。
中古販売価格は業界団体が定めるSやAランクなどを参考にし、自動車業界にある「オートガイド自動車価格月報」(レッドブック)のようなものをつくればいいのではないか、としている。
この話を聞いて、ちょっと微妙だと感じたのは、結局、中古販売価格が高めとなるiPhoneではほとんど割引されなくなってしまう懸念だ。
実際、iPhone 13(128GB)を調べてみると、中古販売価格(ランクA)は高いところで9万6800円、アップルストアの新品価格は10万7800円であった。つまり、1万1000円しか割引できないことになる。そのため、NTTドコモとしては新製品発売直後は2万円割り引いてもいいのではないか、としている。
一方、KDDIからは5Gの普及が遅れているということで、4Gから5Gへの乗り換えに関しては端末とセットにして割引額を増やす、その原資は国が支援してもいいのではないかという提案があった。
確かにマイナンバーカードを普及させるために2万円のポイントを国民にバラ撒く総務省であれば、5Gを普及させるためにも税金を投入して2万円程度の端末割引の支援をしてもいいような気がしている。
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