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拙速なルール化ではなくガイドラインの策定を――総務省が携帯電話の「対応バンド」について議論の方針を示す(1/4 ページ)

携帯電話端末の「対応バンド」を巡って、総務省が有識者会議に対して議論の「方向性案」を示した。法令による義務化は見送る一方で、できるだけ多くのキャリアに対応できる端末作りを促すガイドラインを策定することになりそうだ。

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 総務省は5月24日、電気通信市場検証会議に付属する会議体「競争ルールの検証に関するワーキンググループ(WG)」の第31回会合を開催した。今回は携帯電話や固定ブロードバンドサービスの内外価格差調査の結果報告、固定ブロードバンドサービス(光ファイバー/CATV)の引き込み線の他事業者への転用に関する議論が行われた他、携帯電話端末の対応周波数帯(バンド)に関する議論の方向性案が示された。

 この記事では、携帯電話端末の対応周波数帯(バンド)に関する議論の方向性案について解説する。

なぜ「対応バンド」を議論するのか?(おさらい)

 大手キャリア(MNO)に納入される携帯電話端末は、基本的に当該キャリアが利用している通信規格とバンドに最適化されている。SIMロックを解除すれば理論上は他のMNOでも利用できるものの、対応バンドの都合で一部のエリアで通信できなかったり、通信できても実効通信速度が遅くなったりする問題がある。

 このことが「キャリアを乗り換えるに当たっての『縛り』になっているのではないか」という指摘が一部からあったことから、競争ルールの検証に関するWGで取り上げられることになった。WGの会合ではこれまでに、WGの事務局(総務省)からの各種報告の他、MNO、MVNO、端末メーカーなど関係者からのヒアリング(意見聴取)が行われてきた。

現状の整理
MNOに納入される携帯電話端末(特にAndroidスマートフォン)は、納入先のMNOのモバイルネットワークに最適化されている。そのため、他のMNOで利用すると、一部のエリアで通信できなかったり、通信できたとしても速度が遅くなったりするという問題が発生する可能性がある(総務省資料より、PDF形式)

 WGの事務局が欧米と韓国における携帯電話端末の対応バンドに関する状況を調査した所、以下のような状況だったという。

  • ヨーロッパ
    • 法的規制やガイドラインは定めていない
    • MNOが販売している端末は全てのMNOが使っているバンド(全部または主要なもの)に対応できている
  • 米国
    • MNOが販売する端末の中には、他のMNOが利用しているバンドに対応していないものもある
    • 物理的な周波数が重なるバンド(LTEのBand 12とBand 17)について、中小MNOと消費者団体が相互運用性の確保を規制当局(FCC)に求めるロビー活動を行った
    • 当該ロビー活動の結果、大手MNOは自主的に対応を進め、最終的に自主的対応が規制当局による規則改正に反映された
  • 韓国
    • 対応バンドに関する直接的な法的規制やガイドラインはないが、全てのMNOで端末を問題なく稼働できる「相互運用性」を確保するように求める規定はある
    • 相互運用性を確保するための措置の一環として、MNOが販売する端末は他MNOが運用するバンドにも対応することになった(別趣旨の規定が間接的に効力を発揮)
法規制の状況
ヨーロッパでは特に法規制をしていないものの、MNOが販売する端末は基本的に全キャリアの全バンド、または主要バンドは利用できる。米国では「周波数オークション」に関連して、物理的な周波数が重なるバンドの運用についてロビー活動が行われ、最終的に規則に反映された事例がある。韓国では端末の相互運用性の規定が間接的に端末の対応バンドを広げる働きをした(総務省資料より、PDF形式)
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