ライカに聞く「Leitz Phone 2」(前編):初代モデルは想定よりも早く完売、シャープとの取り組みで得たもの(1/2 ページ)
2世代目の「Leitz Phone 2」を発表した独ライカカメラは、スマホ市場で何を目指すのか。製品開発のキーパーソンに戦略を聞いた
ソフトバンクが11月に発売した「Leitz Phone 2」は、ドイツのライカカメラ(Leica)が全面的に監修したスマートフォンの第2弾だ。
今回、ライカカメラでスマートフォン関連の製品開発を担当しているビジネスモバイルユニットのメンバーが日本の報道陣のグループインタビューに答えた。
前編では、ビジネスモバイルユニットの責任者を務めるライカカメラヴァイスプレジデント マリウス・エシュヴァイラー氏に、スマホ開発に乗り出した狙いを聞いた。
Leitz Phone 1は新しいファンの獲得にもつながった
―― Leitz Phone 1の発売から1年がたちますが、販売を通して学んだことやユーザーからの反響などがありますか。
エシュバイラー氏 Leitz Phoneシリーズでは、既にLeicaを愛用いただいている方に加えて、Leicaのカメラを持っていない新しいユーザー層にもアプローチしたいと考えて開発しました。スマートフォンは、今や多くのユーザーにとって最初に触れるカメラで、人によっては唯一のカメラとなっているでしょう。
そうしたユーザーが、Leicaのカメラ専用機は2000ユーロ(28万円前後)を手に取るのは、ちょっとハードルが高すぎるかもしれません。そこで、Leitz Phoneシリーズではスマホのソフトウェア技術を中心に、Leicaの写真体験を提供する選択をしました。
手応えとしては、大成功だったと認識しています。Leitz Phone 1では当初想定していた販売ペースよりもずっと早く売り切れたため、このたびのLeitz Phone 2の販売につながりました。もちろん、Leicaファンの注目を集めたことも成功の大きな要因ですが、新しいファンの獲得にもつながっていることはより重要だと考えています。
―― Leitz Phone 1を出したとき、日本国外からも非常に大きな反響がありました。現在のLeitz Phoneシリーズは日本限定の販売となっていますが、将来的な海外展開の可能性はありますか。
エシュバイラー氏 Leitz Phone 1の発売時、最も多いクレームは「なぜ日本だけでしか売らないのか」というものでした。Leitz Phone 2も同様に日本限定での販売となっていますが、将来的にはより多くの国で販売できるように、海外展開の計画を進めています。
ただし、Leicaは中堅企業ですから、大きな計画をいきなり世界中で進めることはできません。また、Leicaのユーザーはカスタマーサービスに対する期待値が高いため、しっかりとしたサービスができないようでは展開できないと思っています。そうした体制が整った国から、順次展開していきたいと考えています。
スマホの要素技術まで自社開発することは非常に困難
―― Leitz Phoneシリーズは、現状はAQUOS Rシリーズをベースモデルとしていますが、今後、独自の光学設計を搭載するなど、ハードウェアを含めた改良を行う方針はありますか。
エシュバイラー氏 Leicaにとってハードウェアは、アイコニックなデザインを表現できる重要な要素だと考えています。しかし、スマートフォンのハードウェア全体を独自で開発するとなると、非常に大きな投資が伴います。Leicaのような中堅企業にとっては、身の丈を過ぎた投資になってしまうと考えています。
Leicaの戦略は、得意分野のイメージング技術を生かしつつ、コンピュテーショナルフォトグラフィーの技術を高めた製品を世に送り出すことです。シャープにはLeitz Phoneシリーズの製造をお願いしていますが、この提携によって例えば、シャープの素晴らしいディスプレイ技術を使えるようになりました。こうした要素技術までLeica自身で開発するのは非常に困難です。シャープとのパートナーシップにより、Leica自身ではこうした難しい技術を補完し、自身の強みに特化した製品開発が可能となります。これがLeicaがパートナーシップを重視する理由です。
―― Leicaはこれまで、HuaweiやXiaomiといった企業とも画質監修において協業してきました。それに対して、シャープとの提携では、AQUOS Rシリーズの画質監修とLeitz Phoneシリーズの共同開発という2つの協業が含まれています。画質監修での提携と、Leitz Phoneシリーズにおける提携には本質的な違いはあるのでしょうか。
エシュバイラー氏 HuaweiやXiaomiとの提携では、技術的パートナーシップという位置付けです。メーカーの製品開発の現場にLeicaのスタッフが参画して、技術的な助言を行うという立場です。つまり、完成した製品の責任はあくまでメーカー側にあり、例えばディスプレイの画質やデザインといった要素にLeicaは関わりません。Leicaはカメラ画質を監修する立場として、目標とする写真品質を数値化して提示し、仕上がりを検証しています。
Leitz Phoneシリーズにおけるパートナーシップは、全く質が違う、より幅広い範囲でLeicaが関わるものになります。例えば外装ではドイツのインダストリアルデザインチームが全面的に監修し、ユーザーインタフェース(UI)やユーザー体験においても監修を担当しています。つまり、ユーザーが手に取るデザインからカメラの操作性の部分まで、Leicaが責任をもって監修しているということです。
例えば、今回のLeitz Phone 2では、専用の撮影モード「Leitz Looks」をアップデートしました。Leica Mシリーズのクラシックカメラのような写りを体験できるシミュレーションモードを強化しています。こうしたUI面での強化もインダストリアルデザインチームが先導して行っています。
フィルムカメラで撮れる描写をスマートフォンでも体験してほしい
―― Leitz Looksの狙いについて。なぜ「レンズシミュレーション」を搭載したのでしょうか。
エシュバイラー氏 昔ながらのフィルムカメラで撮れるであろう描写を、スマートフォンでも体験していただきたいと思い、レンズシミュレーション機能を開発しました。
Leicaのクラシックカメラとレンズには、それぞれに個性があります。この“個性”は突き詰めれば、シャープネスや輝度といった要素として数学的に表現できるものです。Leitz Looksでは、スマートフォンのカメラシステムを通じて得られた画像をコンピュテーショナルフォトグラフィーによって変換し、クラシックカメラで撮ったような個性を追加します。
このシステムの実現のためには、2つのデータが必要でした。1つは一般的なイメージセンサーで得られるRGBのカラー画像、もう1つは被写体との距離を計算するための奥行き情報です。Leitz Phone 2ではメインカメラに加えて測距用センサー(ToF)を搭載し、奥行き情報を取得しています。
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