なぜ? バッテリーを交換できるスマートフォンが減った2つの理由(2/3 ページ)
スマートフォンを長く使うにあたって、多くの方が気にする点の1つがバッテリーの劣化だ。かつての携帯電話では多くの機種でバッテリー交換ができたが、現在ではほとんどが交換できなくなった理由について考察していていきたい。
非純正バッテリーを使用することで起きた事故も要因に
内蔵バッテリーが増えているもう1つの要因が、非純正バッテリーによる事故だ。
携帯電話でも、非純正バッテリーを使用することによる事故が起きている。安価なことが売りのこれらのバッテリーには保護回路などが入ってないものもあり、最悪の場合は過充電が原因で発火してしまうものもあった。
独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の調査によると、2017年から2021年までに起きた、スマートフォンにおける非純正バッテリーの事故は5件だった。決して多いといえる件数ではないが、非純正バッテリーのリスクを裏付ける結果といえる。
【更新:2022年12月28日15時15分 NITEのデータを追記いたしました。】
スマートフォンの黎明(れいめい)期ではバッテリー持ちがよくない機種も多く、モバイルバッテリーを当たり前のように使っていたユーザーも多いことだろう。今のような急速充電もなかった頃は、予備バッテリー用の充電器を使用して、複数のバッテリーを持ち歩くニーズもあった。
また、純正よりもバッテリー容量を増強した互換バッテリーのニーズもあり、サムスン電子の「Galaxy」シリーズやソニー「Xperia」シリーズではよく見られた。
Galaxy Note edge向けの大容量バッテリーパック。純正品の2倍の容量となる6000mAhのバッテリーは本体に収まらないため専用のカバーが付属していた。当時の充電器では急速充電でフル充電に5時間かかるなど課題も多かった
これらのバッテリーはスマートフォン側からもうまく認識されないことがあり、充放電の時間が狂うなどして思わぬ事故の原因にもなった。安価なものはバッテリーの劣化が早かったり、容易に液漏れしたりするものもあった。
携帯電話に限らず非純正のバッテリーによる事故は今なお多い。高電圧を扱う充電式の電動工具では、互換バッテリーを使用した発火事故も多発するなど近年問題視されている。
このような工具でもリチウムイオンバッテリーの採用が進んでいる。事故としては過酷な環境で利用している点に加え、電動工具でも急速充電対応の充電器が登場していることも理由だ。これで互換バッテリーを充電すると、保護回路が入っていない関係で予期せぬ大電流が流れてしまい発火事故が起こる恐れがある。
互換バッテリーが正規品の半額以下の価格で、通販サイトなどで購入できる点も事故が多発している理由の1つとなっている。
近年のスマートフォンでは4000~5000mAhとバッテリー容量そのものも大きくなっている。これに十数ワットの急速充電が当たり前となった今、保護回路などで認識されない可能性のあるバッテリーは事故防止の観点からメーカーとしても利用できないようにしたいはずだ。
バッテリーを交換できないiPhoneでも、正規品以外のバッテリーでは劣化度で正常な値が表示されず、警告が出る仕組みになっている。その場合は正規サポートを利用する旨が表示される。
急速充電に対応する機種も増加
近年では急速充電に力を入れるメーカーも多い。この急速充電も初期にはクレードルなどの専用端子から始まったが、共通規格であるQualcomm Quick Chargeが2012年に策定され、バージョン2.0に対応した2013年後半からバッテリー交換ができない機種が増えてきている。
2013年ごろのAndroidスマートフォンでは当時のiPhoneの倍近いバッテリー容量を持った機種も出てきたことから、このような急速充電に対応する流れも自然となった。交換式バッテリーを廃した背景には、このような共通規格が整備されてきたことも影響している。
近年では、より高出力のUSB Power Deliveryなどの規格に対応させ、従来よりも高速に充電することで利便性を図ろうとしている。急速充電も80%の容量まで30分で充電し、以降は低速で充電するなど、バッテリーを劣化させない工夫などもされている。
充電速度の目安となるワット数では、ハイエンド機では45Wクラスが当たり前になり、中国メーカーを中心に60Wクラスに対応したものが多く存在している。廉価な機種でも30Wクラスに対応するものが出てきている。これらの機種は対応充電器で40分から1時間程度でフル充電が可能だ。
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