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他社比較で浮かび上がる「d払い/dポイント」の課題 ドコモが推し進める改革とは石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

dポイント、d払い、iD、dカードといった、各種決済・ポイントサービスを抱えているNTTドコモだが、一体感に欠けていた。競合他社を見ると、サービス連携をしつつ、各サービスの機能面はもちろん、マーケティングにも横ぐしを刺しているケースが多い。同社はカンパニー制度を導入して、機動力を高める方針を打ち出した。

 dポイント、d払い、iD、dカードといった、各種決済・ポイントサービスを抱えているNTTドコモだが、それらに関するキャンペーンなどがバラバラだったこともあり、一体感に欠けていたのも事実だ。競合他社を見ると、サービス連携をしつつ、各サービスの機能面はもちろん、マーケティングにも横ぐしを刺しているケースが多い。このような状況の中、ドコモは2022年7月の組織再編で社内カンパニー制度を導入。上位レイヤーのサービスを担当するスマートライフ事業部をカンパニーに再編し、機動力を高める方針を打ち出した。

 その一環として、同カンパニーのシニアマーケティングディレクターに外部から招聘(しょうへい)した西井敏恭氏が就任した。同氏が現在取り組んでいるのは、dポイント、d払い、iD、dカードといったポイント・決済サービスの「エフォートレス化」だ。「d払いはd払い、dカードはdカードでやっていたマーケティングを全体として統合し、ワンメッセージで伝えていく」というマーケティングの強化も、同氏の役割だ。18日に開催された報道陣向けの勉強会では、その西井氏が、ドコモのポイント・決済サービスの現在地や今後の展開を語った。


ドコモのシニアマーケティングディレクターに就任した西井氏が、同社の決済・ポイントサービスを語った

9200万会員のdポイントや1600万契約を超えたdカードが強みのドコモ

 キャッシュレス決済比率の低さが課題になっていた日本だが、国を挙げて普及の向上に取り組んだ結果、利用者は徐々に増えている。2015年には20%を割っていたキャッシュレス比率も、2021年には32%まで向上した。経済産業省は、2025年に4割という数値目標を掲げており、将来的には8割を目指している。一方で、海外を見ると、既に8割、9割といった比率に達している国や地域もある。この状況を、西井氏は「日本はまだまだだが、伸びしろがある」と見ているという。

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国が音頭を取って普及を促進したこともあり、キャッシュレス決済の比率は徐々に増えている。一方で、諸外国と比べると、まだまだ利用率は低い。西井氏はここに伸びしろがあると語る

 ここでドコモの武器になるのが、dポイントやdカード、d払いといった各種ポイント・決済サービスだ。中でも、2015年導入のdポイントは、共通ポイントとしてトップレベルの規模に成長した。dポイントクラブ会員数は、2022年9月末時点で9200万人。dポイントカードを登録しているユーザーも6000万人に達した。規模感では1億以上の会員を抱える楽天ポイントが先行している一方で、年間のポイント利用額が2900億円分、提携先での利用率が8割と高い。


dポイントクラブは会員数が9200万人に拡大。加盟店での利用が多く、ドコモ経済圏だけに閉じていないのが特徴だという

 こうした特徴を踏まえ、西井氏は「加盟店にとっていいサービスになっており、提携先への送客や消費がうまくできている」と語る。「他社のポイントは自社サービスで使われることが多い」のに対し、dポイントは外部に開かれているともいえる。加盟店が増えれば、ユーザーがポイントをためやすくなることにもつながる。また、2022年6月には、ポイントプログラムを刷新。「ランクの最上位である5つ星になると、2.5倍のポイントを進呈するようにした」(同氏)


2022年にはポイントプログラムをリニューアル。dポイントを取得しているユーザーは、よりポイントがたまりやすくなった

 例えば、2つ星のユーザーが加盟店で月1万円分の買い物をした場合、150ポイントがたまる。年間では1800ポイントをためることが可能だ。これが4つ星なら、毎月たまるポイントは200ポイントに上がり、年間のポイント数は2400ポイントまで上がる。ポイントは、決済が必須ではなく、「じゃらん」や「ホットペッパー」などを通じた予約でも取得可能。「ドコモはECが弱く、使い勝手が悪く見えてしまうところはあるが、反面Amazonやメルカリで使えたり、じゃらんがあったりする」のは、ドコモの強みだ。結果として、「ロイヤリティーが高いユーザーが増えている」という。


ポイントプログラムリニューアルの結果、ロイヤリティーの高いユーザーが増えている

 決済に関しては、クレジットカードのdカードが好調だ。契約数は1600万人。通信事業者を抱える事業者としては楽天カードに次ぐ多さで、「特徴的なのはゴールドが多いこと」。年会費は1万1000円(税込み)と高めながら、2022年9月末時点で契約者数は930万を超えている。また、d払いは、非接触決済限定のdカードminiをリブランディングしたd払い(iD)と合わせて4800万ユーザーに達しており、9月末時点での半期の取扱高は9250億円に伸びている。

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