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他社比較で浮かび上がる「d払い/dポイント」の課題 ドコモが推し進める改革とは石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)

dポイント、d払い、iD、dカードといった、各種決済・ポイントサービスを抱えているNTTドコモだが、一体感に欠けていた。競合他社を見ると、サービス連携をしつつ、各サービスの機能面はもちろん、マーケティングにも横ぐしを刺しているケースが多い。同社はカンパニー制度を導入して、機動力を高める方針を打ち出した。

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バラバラだったサービスに横ぐしを刺して提供、鍵になるのがエフォートレス

 一方で、ここまで挙げてきた強みがユーザーにきちんと伝わっていないのは、ドコモにとっての大きな課題だという。西井氏は、dポイントクラブのリニューアルは「いい方向だと感じている」としつつも、「社内でセグメント調査をしていると、ライトユーザーがここにたどり着くことができていない」と明かす。dポイントはdポイント、dカードはdカード、d払いはd払いと、キャンペーンやマーケティングメッセージをバラバラに出していたのは、その一因だ。それぞれが「別のサービスになっていしまっている」というわけだ。

d払い
それぞれが別々のサービスに見えてしまっていたことが、ドコモにとっての課題。これを統合していくのが、西井氏の役割だ

 その反省をもとに、改善策の一環として、ドコモはdカードを軸にした総額5億円のポイント還元キャンペーンを実施。支払いがdカードであれば、プラスチックカード、iD、d払いのどれを使ってもよく、1万円を1口にしてポイントが山分けされる。決済方法を限定しなかったのは、「何を使ってもお得な状況を作れるのは、(ドコモの)強みの1つ」だからだ。一体的なキャンペーンを行った結果、「エントリーしているユーザーは(通常よりも)多い」という。

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ポイントと決済を一体にしたキャンペーンを実施。最終的な支払いがdカードであれば、決済手段を問わないのも横ぐしを刺したかったためだ

 各事業の成果を評価するための指標も、「横ぐしを刺して見ていくことが重要」になる。これまでのドコモは、「会社としてそれぞれの事業でそれぞれの業績を伸ばすことをやってきた」。これに対し、2022年にコンシューマーマーケティング部が新設されたことで、「お客さま1人あたりの取扱高をどう増やすかをKPI(鍵となる指標)として見るようになった」。dカード単体、d払い単体というのではなく、「使っているものはどうでもいいので、ARPUをいかに伸ばすかを全体の指標として持ちたい」という。

 エフォートレス(努力がいらず、心地よく使えること)を目指すという西井氏だが、コミュニケーションではなく、「システムの問題」も残る。その1つが、d払いの使い勝手だ。d払いは、頻繁にログアウトされてしまい、支払いをしたいと思ったときに、すぐ使うことができない問題がある。ドコモ回線をひも付けている場合、初回ログインには回線認証も必須だ。筆者の環境では、デュアルSIM端末でデータ通信の回線を他社のものに切り替えただけで再ログインを求められる。しかも他社回線だとパスワードレス認証が必要になり、dアカウントを設定した別の端末がないとログインできなくなってしまう。

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エフォートレスを掲げる西井氏。この観点で見ると、d払いにはまだまだ改善の余地があるという

 西井氏も、このような問題は認識しており、「ユーザーを守ることは重要だが、反面、使い勝手が悪い状態になっている」と認める。「セッションを保持している時間が短かったり、他のブラウザにまたがったときに共有ができなかったりする。離脱も(他社のサービスに比べて)多くなっている」のは大きな課題といえる。他社の決済サービスは、「セキュリティを担保しながら解決できている」ため、取扱高を伸ばすには、dアカウントやd払いにも、利便性を向上させるための改修が必要になりそうだ。

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