ドコモが頭を悩ませる「シニアのd払い利用」 井伊社長が考える打開策は?(1/2 ページ)
NTTドコモの井伊基之社長のインタビュー最終回では、スマートライフ事業に含まれる、dポイントクラブやd払いの戦略や課題についてうかがった。d払いやdポイントを使えないユーザーに対していかに訴求するかを課題としている。ドコモショップがそれを解決する場になるかもしれない。
料金プラン値下げの影響で、通信事業単体での成長は見込めないため、NTTドコモは今後、法人事業とスマートライフ事業を成長領域に位置付けて強化していく。6月に実施した井伊基之社長のインタビュー最終回では、スマートライフ事業に含まれる、dポイントクラブやd払いの戦略や課題についてうかがった。
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d払いやdポイントを使えない人たちが残っていることが問題
―― 6月にdポイントプログラムを改定しましたが、反響はいかがですか。
井伊氏 賛否両論ありますね。d払いとやdポイントをたくさん使う人が早くランクが上がるように設計し直したので、全然お使いにならないで、長くドコモを使っている方から見ると、「プログラムがディグレードしている」という厳しいお声もいただきます。dポイントで、いろいろなことをしていただくことを加速したいので、ポイントプログラムもそういうふうにチューニングしました。
問題は何かというと、d払いやdポイントを使えない、使わないという人たちが残っていること。例えばシニアの方でも簡単にキャッシュレスペイメントができるように、僕らが努力しなければいけない。
「d払いって何? それって難しいんでしょ」という人たちを放置していると、ああいうプログラムの価値がないと映ってしまうので。ですから今、シニアの人たちのd払い利用を、もっと加速できるような施策とか、使い勝手の改善を早くしないさいと、指示しています。
―― d払いの使い勝手にまだ改善の余地があると。
井伊氏 そうです。どういうふうに使っていいのか、口座からチャージするにはどうすればいいのか。全く知らない人からすると、準備のハードルが高いんですよ。それを簡単にすればポイントもたまるし、おサイフを持っていなくてもタクシーに乗れるし、スーパーやコンビニでも使える。こんな便利なものなのに、最初のエントリーにものすごく障壁があるんですよ。
―― ドコモショップのスマホ教室でd払いの使い方をレクチャーするのはいかがでしょう。
井伊氏 おっしゃる通り。当然やります。
―― 今は……。
井伊氏 やり始めていますけど、ショップに来ていただく人は「使おう」という人たちなんですよ。問題は、そういうことを諦めて、ショップにも勉強会にも来ない人たちがいることです。諦めた人たちをなくさないと、根本的な解決にならないんですよ。そのために仕組みをものすごく簡単にして、例えばプリセットアプリの中で、押したら簡単にできるといったことができればいいですよね。
ドコモには70歳の社員がいないので、OB会などで「何で使わないの?」とマーケティングをやっています。何がエントリーバリアなのか、どうして使わないのかを聞いているところです。
―― そうした方々は、キャッシュレス決済やスマホ決済の存在は知っている……。
井伊氏 と思いますよ。
―― でも、重い腰が上がらない……。
井伊氏 だからガラケーのままでいいということなんですよ。スマホにするニーズを感じないわけですよ。スマホにすると、おサイフケータイにもなるし、オンライン店舗もスマホがあれば顔を出して話もできるという利便性が伝わると、「ガラケーじゃダメだよね」となって、いろんな課題とも連動して解決していくんですけど、そこが伝わっていないという課題ですね。
―― 逆説的ですけど、ガラケーでd払いを使えるようにすることは……。
井伊氏 できないことはないけど、ちょっとしんどいねぇ。端末にそこまでの機能を今さら持たせることもできないし。一部、海外の端末でおサイフケータイ機能を利用できないものもあるじゃないですか。そこまでさかのぼるのもしんどいでしょうね。
―― dポイントプログラムを、使うほどにポイントがたまるよう改善したのも、リテンションを高めるためですよね。
井伊氏 本来そうです。あとわれわれの通信事業は料金値下げもあって、そんなに利益が上がる事業ではなく、減益の事業なので、上に乗っかるカード、金融、電気などの付加価値サービスのARPUで収益を伸ばさないといけないので。それを実現するためにはスマホが中心にあるということです。
国のデジタル化促進でスマホ教室を活用したいという要望も
―― ショップでのサポートは、一部、有料で行っていますよね。
井伊氏 そうですね。ただ。コールセンターは困りごとの相談でお金はもらっていない。だから、何でもかんでも有料にしないで、価値を提供することで、ずっとドコモを続けてもらう分で、そのコストは回収できます。手間の掛かるアプリのダウンロードとか、実際に人件費を掛けて作業が伴うものは有料にしていますけど。まあ時給みたいなものですよね。
―― 例えば、d払いをシニアの方に使ってもらいたいのであれば、シニアを対象にした無料のオンライン教室をやるのも、いいのではと思います。
井伊氏 おっしゃる通りですね。教室は今、お金を取っていないですから。あくまでも販売促進施策なので、それを有料にするのもありですけど、そうすると、集まる人が減ってしまいます。どちらかというと、ファン層を増やすためのプロモーションだと思った方がいいですよね。
一方、マイナンバーカードなど、今後の国のデジタル化のためにショップの教室機能を使わせてほしい、という話が来ています。それはちゃんと自治体や国が予算を取ってくれていて、そこにかかる人件費は予算でくれているんですよ。だから、ある意味でそこは有償ビジネスをやっているわけです。
―― ショップの役割が……。
井伊氏 変わると思いますよ。国もそこには期待していて、説明能力のあるスタッフが集まれる場所で、自治体の仕事を受託してくれるなら、ちゃんと人件費を払いますよ、というスキームを今作ってくれています。そこはわれわれも手を挙げて、お手伝いしますよ、と言っていますけど。ただこれも、オンラインとのハイブリッドに変えていかないといけないんですよね。もう、(ショップに)行くことが前提みたいなものは、古いモデルですよね。来なくて済むようにする感じですね。
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