楽天モバイルの“新料金プラン”を解説 不可解な「Rakuten Turbo」と明快な「法人プラン」(3/3 ページ)
楽天モバイルがホームルーター向けの料金プラン「Rakuten Turbo」と法人向けの料金プランを発表した。Rakuten Turboは、率直に言うと、その競争力に疑問符がついた。一方の法人向けプランは、楽天グループの取引先に訴求できる可能性がある。
予告していた法人サービスをついに開始、取引先が最初のターゲットか
もう一方の法人向けプランはどうか。こちらは、楽天グループの三木谷氏が楽天市場出店者向けの楽天新春カンファレンスで先行発表したもの。2022年時点で投入を予告していた。段階制で、使用したデータ容量に応じて自動的に料金が決まるUN-LIMIT VIIとは異なり、法人向けプランはオーソドックスな容量別プランを採用する。データ容量は3GB、5GB、30GBで、料金はそれぞれ2178円、2618円、3058円。「Rakuten Link」の法人版である「Rakuten Link Office」を通じた通話も無料になる。
3GBプランはUN-LIMIT VIIの倍程度と割高に設定されているのに対し、30GBプランはUN-LIMIT VIIで20GBを超えた場合よりも安価だ。ただし、30GBが上限になるため、データ使用量が多いヘビーユーザーには向かない。もっとも、この料金プランはあくまで法人向けのもの。会社がどのようなポリシーで社員に回線を貸与しているかにもよるが、コンシューマー向けのように、無制限まで求めるユーザーは少ないだろう。その分、220円ではあるがUN-LIMIT VIIの上限よりも料金を安くしているのは合理的といえる。
実は、楽天モバイルは、既に法人向けのサービスを提供している。ただし、これは自社回線ではなく、ドコモ網を借りたMVNOの回線。価格は、3.1GBプランが1760円、5GBプランが2365円、10GBプランが3256円、20GBプランが5225円、30GBプランが6765円になる。微妙にデータ容量が異なるが、3.1GBプランや5GBプランは自社回線の法人向けプランにも受け継がれており、価格帯も近い。一方で、10GBプランや20GBプランがなくなった代わりに、30GBプランを大幅に値下げした格好だ。
MVNOの法人契約は、2022年11月15日に新規申し込みを終了しており、自社回線の法人向けプランは、この後継的な位置付けになる。法人向け回線は、社用の携帯“電話”として契約するユーザーもいることを踏まえると、わずかな値上げで音声通話まで使い放題になるのはMVNOの法人向けプランより魅力的に見える。
楽天モバイルの法人向けプランは、主に楽天市場の出店者向けの色合いが濃いサービスだ。同社は、基地局設置でも楽天市場や楽天トラベルの出店者に協力を仰いでいたほどで、その結び付きは強い。実際、三木谷氏は上記の楽天新春カンファレンスで楽天モバイル加入者が楽天市場の流通総額を押し上げることを力説。モバイルの成功は、楽天市場出店者にとってのメリットになることを強調しながら、法人向けプランへの加入を呼びかけ、「ドコモ、ソフトバンク、KDDIから楽天モバイルに乗り換えてほしい」と語った。楽天新春カンファレンスでは、出店者向けの契約ブースが設けられていたほどだ。
2022年2月に開催された記者会見では、三木谷氏が「法人という意味で言うと、楽天グループは40万社以上とのお付き合いがある。その4分の1は楽天モバイルにするといううれしいお答えをいただいている」としながら、法人市場で25%のマーケットシェアを目指すことを語っている。これだけの取引先があるのも、楽天市場というプラットフォームを運営しているからこそだ。いまいち契約のメリットが見えないRakuten Turboとは異なり、法人向けプランはターゲットが明確で、MVNOからの移行も見込める。ARPUの底上げを目指す楽天モバイルにとって、新たな武器になりそうだ。
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