楽天モバイルの“新料金プラン”を解説 不可解な「Rakuten Turbo」と明快な「法人プラン」(2/3 ページ)
楽天モバイルがホームルーター向けの料金プラン「Rakuten Turbo」と法人向けの料金プランを発表した。Rakuten Turboは、率直に言うと、その競争力に疑問符がついた。一方の法人向けプランは、楽天グループの取引先に訴求できる可能性がある。
セット割には非対応、自社サービスが競合する謎の料金設定
主にスマートフォン用に使われるモバイル回線との連携がない点も、Rakuten Turboの課題といえる。各社とも、ホームルーターの契約も光回線と同等と見なし、スマートフォン用回線の料金に割引が適用されるからだ。これに対し、Rakuten Turboには、セット割引が設定されていない。もともと、楽天モバイルは低料金を売りにしているため、割引なしでも安いことは安いが、セット割がないとホームルーター単体での価格勝負になってしまう。
先に挙げたように、ドコモのhome 5Gと価格に大差がないのであれば、楽天モバイルの既存ユーザーがあえて固定回線にRakuten Turboを選ぶ強いモチベーションがなくなる。どちらを選んでも同じなら、スループットの差やサービスの有無だけが選択基準になるからだ。囲い込みをせず、正々堂々と勝負していると言えば聞こえはいいが、これでは、丸腰で敵に戦いを挑むようなもの。セット割引は解約率の抑制にもつながるため、少額でもこうした仕組みを用意していなかったのは不可解だ。
他社はもちろんのこと、現状の料金設定だと、楽天モバイル自身もライバルになってしまう。UN-LIMIT VIIのSIMカードは、スマートフォンだけでなく、ルーターに挿すこともできるからだ。そのルーターを宅内に設置し、家族全員でネットを使っても料金の上限は3278円。Rakuten Turboの割引前料金である4840円より3割強安い。
端末代が実質0円になる3年間の割引は受けられないが、スペックを求めなければ4G対応のSIMフリーホームルーターは1万円台で販売されている。接続する機器が少なければ、使わなくなったスマートフォンでも代替できる。楽天モバイルを契約する際に、あえてRakuten Turboを選ぶ理由を見い出しづらい。他社の場合、スマートフォンとホームルーターであれば、後者の方が移動できないなどの制約がある分、料金も安価に設定されている。裏を返すと、楽天モバイルは、UN-LIMIT VIIの料金を安く設定しすぎてしまったといえるかもしれない。
端末が場所を移動しない分、同社の弱点であるエリアの穴は問題になりづらいと思われるかもしれないが、ホームルーターにはホームルーターの難しさがある。宅内は電波が弱くなる恐れがあるからだ。Rakuten Turbo 5Gは下り最大2.1Gpbs、上り最大218Mbpsだが、これはあくまでSub-6の5Gに接続できた場合の理論値。4Gのみだと下り391Mbps、上り76Mbpsまで速度が下がり、固定回線の代替としてはやや心もとなくなる。少なくとも、楽天モバイルは5Gのエリアが大手3社と比べても狭く、宅内は4Gになってしまうユーザーがほとんどだろう。エリアによっては、電波が入らない恐れもある。
ちなみに、筆者の自宅は楽天モバイルのエリアになっているが、やはり4Gのみで、他社に比べるとスループットは大きく劣っている。スマートフォンでの計測かつ、ドコモ/ソフトバンク、au/楽天モバイルで端末が異なるため、あくまで参考値ではあるが、人の少ない早朝の時間帯でも30Mbps程度しか速度が出なかった。スマートフォン単体で通信する分にはいいが、やはり固定回線代わりにするには厳しい。他社に近い金額でホームルーター専用プランを投入するのは、時期尚早だったといえるかもしれない。
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