楽天モバイルの“新料金プラン”を解説 不可解な「Rakuten Turbo」と明快な「法人プラン」(1/3 ページ)
楽天モバイルがホームルーター向けの料金プラン「Rakuten Turbo」と法人向けの料金プランを発表した。Rakuten Turboは、率直に言うと、その競争力に疑問符がついた。一方の法人向けプランは、楽天グループの取引先に訴求できる可能性がある。
たった1つの料金プランというシンプルさを売りにしていた楽天モバイルだが、それだけでは全てのユーザーや利用シーンをカバーできなかったようだ。1月26日に、同社は相次いで新料金プランを発表した。1つが、固定回線の代替としてモバイル回線を使う際のホームルーターに適用される「Rakuten Turbo」。もう1つが、以前から予告していた法人向けプランだ。同プランは、楽天グループの代表取締役会長兼社長、三木谷浩史氏が楽天市場の出店者が集う「楽天新春カンファレンス」で正式発表に先駆けて披露した。
ユーザー別、用途別に料金プランを分けるのは、他のキャリアでは一般的だが、楽天モバイルでは初めてのこと。ポジティブに見れば、事業を拡大する構えができつつあるといえる。ただし料金体系を見ると、現行の「UN-LIMIT VII」と比べ劣っている部分があるのも事実だ。特にRakuten Turboは、率直に言うと、その競争力に疑問符がついた。一方の法人向けプランは、楽天グループの取引先に訴求できる可能性がある。その理由を見ていこう。
楽天モバイルがFWAに参入、ただしその価格は……
26日に発表した新料金の1つ目が、ホームルーター用のRakuten Turboだ。これは、楽天モバイルが自社ブランドの製品として発売する「Rakuten Turbo 5G」を使用するための料金プラン。「FWA(Fixed Wireless Access)」と呼ばれるカテゴリーのサービスで、ルーターは家の中に固定する。モバイルWi-Fiルーターとは異なり、屋外に持ち運んで移動させないのが前提だ。そのため、端末にはバッテリーを搭載していない。楽天モバイルによると、Rakuten Turboは基本的にRakuten Turbo 5G用の料金プランになり、SIMカードを差し替えても他の製品では利用できないという。
契約には住所登録が必要になる。これは、ホームルーターが固定回線に近い位置付けになっているためだ。ユーザーには特にメリットがない仕組みだが、制度上、モバイル回線とは別扱いになるため、一部の規制が適用されなくなる。端末購入補助は、その1つだ。現状、スマートフォンや携帯電話は回線契約にひも付く割引が2万2000円(税込み、以下同)までに制限されているが、ホームルーター扱いになると、この規制の対象外になる。他社のケースでは、端末の本体価格が一括0円になり、かつ回線にも割引が適用されることがある。
Rakuten Turboの料金は、3年間3685円。4年目以降は4840円になる。3年間、1155円の割引を受けられる計算だ。ただし、ホームルーターであるRakuten Turbo 5Gの代金もかかる。こちらの価格は4万1580円。24回払いだと月々1732円、48回払いだと月々866円の支払いが発生する。料金割引キャンペーンが36カ月、端末の割賦が24カ月か48カ月で期間がズレているため直感的に分かりづらいが、割引額の合計はピッタリ4万1580円。3年間の利用で端末代が丸々相殺されるというわけだ。
データ容量は無制限。楽天モバイルによると、公平制御などの仕様は、UN-LIMIT VIIと変わりないという。4840円という金額は、ホームルーターとして一般的な金額になる。例えば、ドコモの「home 5Gプラン」は、月額料金が4950円。この分野で先行してきたソフトバンクの「SoftBank Air」も、基本料金は5368円だ。auの「ホームルータープラン」は5170円。各社とも、データ容量は無制限に設定している。割引適用前の正規料金としては、楽天モバイルが最安といえる。
一方で、通常の料金プランほどの圧倒的な金額差がないのも事実だ。UN-LIMIT VIIは、0円廃止が大きくフィーチャーされたが、20GBを超えた際の料金が他社と比べて大幅に安いのも事実。大手3キャリアの無制限プランは割引適用前で軒並み7000円を超えているため、UN-LIMIT VIIの3278円は半額以下だ。これに対し、Rakuten Turboは3キャリアで最安のドコモと比べると、わずか110円の差しかない。楽天モバイルは低コストでネットワークを構築し、ユーザーに安価なサービスを提供すること売りにしていただけに、率直に言えば「高い」という印象を受けた。
関連記事
- 楽天モバイル、ホームルーター専用プラン「Rakuten Turbo」提供 初回3年間は月額3685円に
楽天モバイルは、ホームルーター専用料金プラン「Rakuten Turbo」と専用対応製品「Rakuten Turbo 5G」を順次提供開始。月額料金は4840円(税込み、以下同)で、3年間は月額3685円で利用できるキャンペーンも行う。 - 楽天モバイル、1月30日から法人プランを提供 3GBで月額2178円から
楽天モバイルが、1月30日から法人向けプラン「楽天モバイル法人プラン」を提供する。月額2178円でデータ3GBから。「Rakuten Link Office」アプリを使えば国内通話はかけ放題となる。 - 0円廃止後も楽天モバイルを「利用している理由」と「解約した理由」:読者アンケート結果発表
ITmedia Mobileでは、読者アンケート企画として、楽天モバイルの利用動向についてうかがいました。テーマは「楽天モバイル、0円廃止後も利用していますか?」です。2022年12月14日から12月25日まで実施したところ、8941件という想定を大きく上回る回答が集まりました。 - 楽天モバイルの“0円廃止”がもたらした「ユーザー流出」と「収益改善」 黒字化の勝算は?
1GB以下無料の廃止で収入増が実現しつつある楽天モバイルだが、基地局への投資コストも一巡しつつある。収益の増加と費用の減少の両輪を回し、2023年の黒字化を目指すのが同社の戦略だ。また、総務省のタスクフォースから出された報告書案を受け、プラチナバンド獲得の公算も高まっている。 - 「プラチナバンド」獲得に自信を見せる楽天モバイル それでも課題が山積の理由
楽天モバイルに対するプラチナバンド割り当てる際の議論が、ユーザーを巻き込んで物議をかもしている。電波法の改正により、特定のケースで、各キャリアが現在利用中の周波数を手放すことを余儀なくされる。一方で、再編に伴う期間や費用負担に関しては、楽天モバイルと既存事業者3社の意見が平行線をたどっている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.