楽天モバイルの“単月黒字化”は可能なのか 反転攻勢に向けた2つの戦略と課題:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
0円を廃止して純減に見舞われていた楽天モバイルが、ようやく純増基調を取り戻した。2月14日に開催された楽天グループの決算説明会で、その数値が明らかになった。残った全契約者が“課金ユーザー”に転じたことで、収入も急速に増加している。
1GB以下0円の「UN-LIMIT VI」を廃したことで大幅な純減に見舞われていた楽天モバイルだが、既存ユーザーへの無料措置やポイントバックが終わり、ようやく純増基調を取り戻した。2月14日に開催された楽天グループの決算説明会で、その数値が明らかになった。残った全契約者が“課金ユーザー”に転じたことで、収入も急速に増加している。
2023年中の黒字化を目指す楽天モバイルにとって、次に課題になりそうなのがARPU(1ユーザーあたりの平均収入)の向上や、コスト削減だ。ユーザーのデータ利用を促し、上限まで料金を上げるための施策が必要になる一方で、基地局への投資はもちろんのこと、ローミング費用やオペレーションコストの削減まで、手をつけるべきことは多い。プラチナバンドの獲得も、ここに貢献する。ここでは、そんな2022年度決算から、楽天モバイルの現在地を読み解いていきたい。
12月で純増数が反転、それ以上に大きい売り上げの増加
一時は500万契約を超えていた楽天モバイルだが、5月に1GB以下0円を廃したUN-LIMIT VIIを発表して以降、解約するユーザーが続出。契約者数は純減に見舞われた。UN-LIMIT VIIの導入は7月だが、8月まで1GB以下の場合は無料とし、9月~10月は楽天ポイントでのポイントバックに切り替わったが、既存ユーザーの0円ないしは実質0円は続いていた格好だ。そのため、解約の波も分散し、その影響は移行措置を終了直後の11月まで続いた。
UN-LIMIT VII発表直前のピーク時には500万を超えていた回線数は、10月に445万2000まで減少。11月に底を打ち、444万6000まで契約者数は落ち込んだ。一方、11月で解約がピークアウトしたことを受け、12月はついに純増へと転じている。契約者数は3万9000増の448万5000に回復。この傾向は年が明けた先月1月も続いており、同月31日に時点での契約者数は451万8000となった。解約が一段落したことで、純増基調を取り戻したように見える。
とはいえ、1年前との比較で言うと、契約者数は横ばいに近い。同社の決算補足資料によると、2021年12月の契約者数は450万。2022年3月には、この数字が491万まで拡大しているが、2022年12月や2023年1月の純増数を見ると、ピーク時の500万契約を回復するには、年内いっぱいかかる可能性もある。“0円廃止ショック”が、1年以上尾を引いてしまった格好だ。
一方で、UN-LIMIT VIIの導入によって、その中身は様変わりした。三木谷氏が「血の入れ替えは進んでいる」と語ったように、現時点での契約者は、最低でも1078円(税込み、以下同)支払う“課金ユーザー”だからだ。課金ユーザーだけで見ると、1月は294%増と大幅な成長を遂げている。逆に言えば、1年前までは楽天モバイルに料金を払っているユーザーの方が少なかった計算になる。0円廃止を急いだのも、そのためだ。
課金ユーザーが大幅に増えた結果、MNOの通信サービスから得られる収入も大幅に上がった。2021年度第4四半期は、音声通話、データ通信、オプションを合算した売り上げはわずか79億2600万円だったのに対し、2022年度第4四半期には244億5400万円に急増。この3サービスを足したARPUも、424円から1533円へと、実に3倍以上の伸びを示している。契約者は1年前と同じ水準だが、収益構造は大きく変わったと見ていい。
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