公正取引委員会が「1円スマホ問題」の調査結果を発表 約15%で極端な廉価販売、販売店のMNP偏重ノルマも背景に
公正取引委員会が2月24日、スマートフォンの廉価販売について実施した調査結果を発表した。MNOと販売代理店の取引において、調査対象だった40機種のうち、収支が赤字だった機種はiPhoneが10~13機種、Androidが8~15機種あった。MNOから販売店に課されたMNPのノルマが、通常の営業活動では達成できない水準だったことも背景にあった。
公正取引委員会が2月24日、スマートフォンの廉価販売について実施した調査結果を発表した。
同委員会は2021年6月に公表した「携帯電話市場における競争政策上の課題について」を踏まえ、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社に対して改善を要請したが、その後、「1円スマホ」といった極端な値引きをして販売するという新たな問題が指摘された。こうした販売方法は不当廉売につながる恐れがあるとし、調査を行った。
調査期間は2022年1月1日から6月30日まで。調査はドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルのMNO4社や、販売代理店、中古端末取扱事業者、MVNOに対して行った。
調査対象の40機種のうち、極端な廉価販売が行われた割合は14.9%だった。4万円未満の機種で極端な廉価販売が行われた割合が30.4%と高く、10万円以上の機種は1.6%だった。特にMNPで転入するユーザーに対して極端な廉価販売を行う割合が33.6%と高い。OS別ではAndroidが19.9%で、iPhoneの11.9%よりも高かった。
MNOと販売代理店の取引において、調査対象だった40機種のうち、収支が赤字だった機種はiPhoneが10~13機種、Androidが8~15機種あった。MNOのうち3社は、スマートフォンの販売で生じた赤字を通信料収入で補填(ほてん)していることが分かった。
MNOがスマートフォンの極端な値引きを行うことで、家電量販店にとっては「SIMフリー端末の取り扱いを伸ばしていく上での障害になり得る」。また中古事業者にとっても、極端な値引きによって中古市場での市場価格が下がるため、「事業活動に顕著な影響が出る可能性もある」との声が寄せられた。
極端な端末値引きは、MVNOに与える影響が大きい。現在、回線とセットで購入する端末は2万2000円(税込み)まで値引きが制限されるが、単体購入ではこの制限の対象外となる。つまりMNOの極端な値引きで購入した端末は回線とセットではないので、MVNOのSIMで使えるが、こうした情報が消費者に浸透していないため、MNOにユーザーが刈り取られてしまう。MVNO側は「MNOで端末を購入した後、MVNOと契約できることを適切に説明すべき」と訴える。
こうした意見を受けて、公正取引委員会は、端末購入が通信契約の継続とは無関係であり、MNOの販売代理店で端末を購入した後、別の通信事業者と契約できることを十分説明することが望ましいとしている。またMNOと販売代理店に対しては、スマートフォンの販売価格について「供給に要する費用を著しく下回る対価」にならないようにすることが望ましいとしている。
販売代理店が極端な廉価販売を行った背景については、「MNOから指示があった」「MNPの乗り換え達成するため」といった回答が多かったという。このMNPのノルマが通常の営業活動では達成できない水準だったため、スマートフォンの極端な値引きをせざるを得ない状況だったと述べた代理店もあった。
公正取引委員会は、通常の営業活動では達成できない高い目標を設定することは不当廉売の原因になり得るため、競争政策上望ましくないとしている。
公正取引委員会は、今後、MNOと販売代理店に対して独占禁止法上の問題について監視を強化するとともに、違反が認められた場合は厳正に対処するとしている。
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