MWCで盛り上がりを見せた「Open RAN」――井伊ドコモ社長「芸風が違う」、三木谷楽天会長「見下されている」:石川温のスマホ業界新聞
先日スペイン・バルセロナで開催された「MWC Barcelona 2023」では、これからの5Gネットワークの要となる「Open RAN(O-RAN)」が1つの注目ポイントだった。日本からは、NTTドコモとRakuten Symphony(楽天シンフォニー)がO-RANを強く訴求していたが、両社は芸風が違うので互いに手を取り合って事業を展開するシナリオも考えられる。
今回のMWCではノキアがロゴを変更し、Open RANに舵を切ろうとするなど、Open RANが話題の中心であった。数年前からO-RANに注目が集まっているが、景気後退もあって、思うようには進んでいない。まだまだ「様子見」のところも多いようだが、だからこそ、このタイミングで売り込みをかけているようにも見える。
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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2022年3月4日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。
NTTドコモはO-RAN事業に「OREX」というブランド名をつけた。すでにボーダフォンやSingtel、Dishなどと交渉しており、支援に向けた話し合いが進んでいるという。
一方で、楽天シンフォニーも、MWC期間中にプライベートイベントを実施。世界のキャリアに向けてのアピールに余念がなかった。
NTTドコモと楽天シンフォニーという日本企業がOpne RAN事業に参入していると言うことで、メディアとしてはどうしても両社を比較したくなってしまう。
しかし、NTTドコモの井伊基之社長は「楽天シンフォニーとは芸風が違う」と言い切る。
「彼らは買ってきて、売るというモデルだが、僕らは研究所などで技術を磨き、13社入れて、自分のネットワークで使って、その結果を他キャリアに売るというビジネスモデル。
検証し、サポーティング能力、フォローする能力を信頼してもらい、売るモデル。売り切るよりも、アフターもしっかり面倒を見る。
そもそも、会社の成り立ちが全く違う。全部とは言わないが、グリーンフィールドのように新しくやるところとは楽天シンフォニーのほうが相性がいいのかも知れない。しかし、ブラウンフィールド的に3G、4Gをやってきた人たちからすると『いったい、どうやって移行すればいいの』という話になってくる。ハイブリッドとなるとどうしたらいいのか。僕ら自身がそういう状態なので、そのノウハウを上手くシフトしながら、数%をOpne RANにするというアプローチをしている」と語る。
一方で、楽天の三木谷浩史会長はNTTドコモのOREXに対して「実績はあるんですか。お手並み拝見といったところ。もしかしたらうまく行くかも知れませんが」と一蹴する。
三木谷会長は「我々が世界で一番先を行っている。大きいテレコムカンパニーからの関心が寄せられ、一度試してみたいという要望がある」という。
楽天には「実績がない」という指摘があるなか、三木谷会長は「いろんな周波数帯域があり、いろんな機器があり、3GPPの仕様だけでなく、それぞれのキャリアに個別の使い方がある。
それらにすべて対応していかなければいけない。単純に動けばいいわけじゃない。いろんな機能をつけていかなければいけない。パフォーマンスも必要。実際に使ったとき、オートメーションやオートヒーリング、オートスケーリングが本当に動くのか。
動いたけど、消費電力が3倍では意味がない。みんなが昔、これは不可能だと言っていた理由は、それなりにある。いつかはほかの人もできるでしょうけど、結構時間はかかるのではないか」と、先頭を走っているからこその苦労を明らかにした。
では、Open RANビジネスは儲かるものなのか。
三木谷会長は「仮想化の市場は、15兆円や20兆円になる。そのうち、全部が全部うちに来るわけではない。ここにはハードウェアも入っているが、うちはハードウェアは基本的にやらない。
利益率は高いビジネスになると思いますが、あとはしっかりデリバリーができる体制の構築が重要になる」とした。
一方で、井伊社長は「儲かってくれないと困る。売り切りモデルじゃないので、売った後のフォロー、サポートをリカーリングでもらっていく。数が集まれば、収入が上がっていく。数を増やさないとしょうがない。
私は社内で売上げ100億円いかないとビジネスじゃないといっている。楽天シンフォニーは600億円をいっている。そういうレベルにいくビジネスになると思っている」と語った。
記者から「NTTドコモと一緒にやればいいのでは無いか」と提案があったが、三木谷会長は「どちらかというと、(NTTドコモから)見下されていると思っている。ウチは表向きは日本の会社だが、中身は国際チームなので、そこは違うところではないか」と語った。
いずれにしても、来年のMWCでどちらがOpne RAN市場で勢いづいているのか。かなり楽しみになってきた。
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