5Gが変えたエリア競争の在り方 JTOWERの“インフラシェアリング”が支持されている理由:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
2022年3月にドコモから基地局設置のための鉄塔6000本を買い取る発表をしたことで話題を集めたのが、インフラシェアリングを主力にするJTOWERだ。日本ではインフラシェアリングの活用はあまり進んでこなかった。この状況を変えたのが、5Gだ。5Gの導入で設備投資がかさむ中、各社ともインフラシェアリングを活用する方針に転換している。
キャリア品質を満たせる技術力が強み、保守・監視体制も
屋内のインフラシェアリングで装置を自身で設計したJTOWERだが、こうしたノウハウがある会社は珍しいという。仕様をJTOWER側が決め、メーカーと共同で開発したものを事業者が利用するという仕組みだ。このような体制にすることで、「運用中のトラブルをスムーズに解決できる」(インフラシェアリング事業本部 技術部長 塩沢真一氏)。加えて、「装置を理解しているのが大きな強み」(同)になっている。
4社が相乗りする設備なだけに、各キャリアが単独で利用するものとは異なるハードルもあるという。塩沢氏によると、「通常だと、自分たちの周波数だけを確認すればいいが、インフラシェアリングだと、全ての周波数の確認が必要になる」という。また、同じアンテナから「全キャリアが同時に電波を吹いたときの特性も確認している」(同)。キャリア独自のベースバンドと接続した際に、パフォーマンスが期待通りに出るかの試験も行っている。
キャリア各社が求められる品質をインフラシェアリングでも満たせるよう、自ら開発を担ってきた格好だ。設備をベンダーから買ってくるだけだと、これが難しい。「5GのSub-6は、他社に先駆け開発し、商用化サービスを行っている」(田中氏)など、最新技術を取り入れるのも早い。日本特有の事情に合わせて装置を開発しているのが、同社の強みになっているというわけだ。
これらに加え、ネットワークの監視ソフトも開発している。「故障する前に装置の異常を検出して、保守的に交換する」(同)ためだ。北海道から沖縄まで、全国区でビジネスを展開しており、「何かあったとき、すぐに駆け付けられる体制を敷き、保守拠点を全国に整備している」(同)のも強みといえる。先に挙げた屋内インフラシェアリングの導入実績が、それを裏づける。
また、同社は5Gでは基地局の無線機そのものを共有するインフラシェアリングにも乗り出そうとしており、台湾フォックスコンと28GHz帯に対応した「ミリ波対応共用無線機」を開発。アンテナも一体化しており、4キャリアそれぞれが、ここに4Gのベースバンドユニットに相当するCU(Central Unit)/DU(Distributed Unit)をつなげられる仕様だ。本連載でも取り上げたO-RAN(Open RAN)に準拠しているため、CU/DUはベンダーを選ばず接続できる。
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