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5Gが変えたエリア競争の在り方 JTOWERの“インフラシェアリング”が支持されている理由石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)

2022年3月にドコモから基地局設置のための鉄塔6000本を買い取る発表をしたことで話題を集めたのが、インフラシェアリングを主力にするJTOWERだ。日本ではインフラシェアリングの活用はあまり進んでこなかった。この状況を変えたのが、5Gだ。5Gの導入で設備投資がかさむ中、各社ともインフラシェアリングを活用する方針に転換している。

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6000本超の鉄塔を購入し、加速させるタワーシェアリング

 一方で、基地局を設置するための鉄塔をシェアするタワーシェアリングも、軌道に乗り始めようとしている。転機になったのが、NTT東西、ドコモからの鉄塔譲渡だ。NTT西日本から71本、NTT東日本から136本、ドコモから6002本の鉄塔を買い取る契約を結び、現在、その移管作業を行っている。田中氏によると、2022年末時点で546本がJTOWERに移り、「来年度までに全ての鉄塔の移管を行っていく」という。

JTOWER
NTT東西とドコモからそれぞれ鉄塔を買い取り、インフラシェアリングで他社に提供する

 NTT東西やドコモから譲り受けた鉄塔に加え、JTWOER自身も鉄塔を建設。採算性が悪く、各社とも二の足を踏みやすいルーラルエリアに、「われわれの方から『鉄塔を建てるのでシェアリングしないか』とご提案を行った」(同)という。JTOWERは「2社以上のキャリアの対策するのであれば投資を行う」(同)方針で、現在、150本の鉄塔の建設が決定しているという。キャリアの利用も始まった。

JTOWER
ルーラルエリアでは、JTOWER自身がゼロから鉄塔を建てるケースもあるという

 中期的な目標として、JTOWERは「少なくとも1万本以上」(同)のタワー保有を目指す。海外の事業者には、「200万本を超えている中国鉄塔(チャイナタワー)は特殊だが、10万本をやっている会社もある」(同)ため、1万本は現実的な数値といえる。ドコモ以外が鉄塔を活用することで、その平均値を1.8キャリアに上げていく方針だ。

JTOWER
中期目標として、鉄塔は1万本まで拡大していく方針

 鉄塔を売却したドコモは、資金を得られる。取得金額は1062億円と巨額だ。ドコモは、その鉄塔をJTOWERから借りる立場に変わるが、相乗りしてくるキャリアが増えれば、その分だけオペレーションコストや保守コストが案分され、負担は軽くなる。JTOWER自身も貸し出しで収益を上げられるため、キャリアとJTOWERの双方にメリットのある仕組みだ。

 ただし、ドコモにとっては、強みであったエリアを他社に開放することにもつながるもろ刃の剣だ。楽天モバイルがJTOWERから鉄塔を借り、いち早くドコモ並みのエリアを展開する――といったシナリオも描けてしまう。裏を返せば、これは、競争軸がエリアから上位レイヤーに移りつつあることの証拠だ。10年以上前からこの市場で種まきをしてきたJTOWERだが、その果実がようやく実ろうとしているといえるだろう。

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