ソフトバンクが6G時代の先端技術を披露 上空エリア化から自動運転、障害に強いネットワークまで(3/3 ページ)
ソフトバンクは技術展示イベント「ギジュツノチカラ ADVANCED TECH SHOW 2023」を開催した。自動運転やHAPS、Beyond 5G/6G時代の携帯電話ネットワークなど、研究開発中の先端技術が紹介された。
通信障害に強い新たな5Gコアネットワークを構築
コアネットワークでは、東京大学と共同で開発している「プロシージャ型処理を用いたステートレスな5Gコアネットワーク」を紹介していた。これは、モバイル通信網の中枢部分を見直し、通信障害に強い形へ再構築しようという提案だ。
モバイル通信のコアネットワークは、ネットワークの機能ごとにNF(Network Function)と呼ばれるノードの集まりで構成されている。各NFで端末の状況(ステート)を保持する仕様となっているため、1台の端末と通信を行うためにコアネットワーク内部で多くの通信が発生する。これは通信障害の発生時の対処を困難にする要因にもなっている、どこか1つのNFで障害が発生すると、ステートの整合性が取れなくなるため、通信処理の失敗が波及的に拡大し、通信が集中して処理仕切れなくなる輻輳(そう)と呼ばれる状況に至ってしまう。
ソフトバンクが提案する新たな5Gコアネットワークは、通販サイトに着想を得ている。大規模な通販サイトのサーバは、1億規模のリクエスト処理をスムーズにさばくことができる。それを参考として、ステートを1つのデータベースで集約管理し、同期処理を省いて効率化するというのが新たな5Gコアネットワークの概要だ。
この仕様は3GPPの業界標準とは大きく異なるが、通信障害時に強い構成となり、ユーザー規模に応じたコアネットワークの拡張がしやすくなるという利点があるという。3GPPの標準仕様からは大きく外れるため、スマートフォン向けの5Gコアネットワークを置き換えるものとはならないが、IoT端末向けのネットワークなどでの採用を検討しているという。
XRコンテンツと量子技術の研究開発も
先端技術研究所では、次世代の映像体験や量子コンピュータの研究も行っている。
映像体験では、XR技術を用いた新たなコンテンツ体験の研究開発を行っている。デモンストレーションでは、音楽ライブの体験を向上させる技術を紹介していた。このうち、ARマーカーによる位置推定を応用し、スマホからVR空間に“投げ銭”できる技術が紹介されていた。
量子コンピュータの分野では、量子暗号技術をモバイル通信において適用し、安全な通信が担保できるかを検証しているという。ソフトバンクは量子コンピュータのユーザーとして、通信分野で暗号化技術の活用を検討しているという。
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