KDDI、2022年度は最高益達成も「本当に厳しい1年だった」 5Gは人口カバー率90%に
KDDIは11日、2022年度通期決算を発表した。過去最高益となる営業利益1兆757億円を記録した。高橋誠社長は「2022年度は本当に厳しい事業環境だった」と振り返る。5Gエリアは人口カバー率90%を達成した。
KDDIは5月11日、2022年度通期決算を発表した。売上高は5兆6718億円で前年比プラス4.1%。営業利益は1兆757億円と過去最高益を記録した。
KDDIの高橋誠社長は「2022年度は本当に厳しい事業環境だった」と振り返る。KDDIは2022年7月に大規模が通信障害を引き起こして対応に追われた他、楽天モバイルからのローミング収入の急速な減少や通信料金値下げの影響といった要因が経営にのし掛かってきたと1年だったと振り返った。次期年度ではこれらの事業が改善し、燃料費の高騰の落ち着きなどにより収益が改善される見込みという。
営業利益を押し上げた要因は、3Gの停波による収支改善(803億円)。DX・金融事業の好調(283億円)など。反対に、通信料値下げの影響(マイナス853億円)や国内キャリア向けのローミング収入の減少(マイナス278億円)は営業利益を抑える要因となった。
5Gは人口カバー率90%に到達
5Gは2023年3月末時点で人口カバー率90%を達成。5G基地局数は23年3月末で約5.2万局となっており、2024年度は9万局の開設を目指す。KDDIはユーザーニーズが高い場所を中心に5Gエリア化を進めており、鉄道主要駅は全国47路線、主要駅周辺の商業地域は全国323エリアでエリア化を完了している。
1回線あたりの通信料収入を示すマルチブランド通信ARPUは3980円(前年比260円減)。補償やauでんきなどの売上を含んだマルチブランド総合ARPUは5980円(前年比40円増)となった。料金値下げの影響が続いていることや、割安なUQ mobileの構成比率が上昇していることが通信ARPUを押し下げる要因となっている。
2022年3月末時点でのauの累計契約者数は6423万4000契約となった。UQ mobileやpovo(課金ユーザーのみ集計)、BIGLOBEモバイルなどを含むマルチブランドID数は3122万8000契約となった。
2019年の携帯料金値下げ政策により大きく落ち込んだ通信ARPUは、5Gの普及によりデータ容量の消費が増加したことで、回復基調にあるという。2022年度におけるauユーザーの月間データ利用量は前年比26.0%、UQ mobileでは同19.3%の上昇している。
5G契約浸透率は前年比8.1ポイント増の33.0%となっている。UQ mobileからのauへの移行者は前年比で1.6倍となるなど、上位プランを選択する動きも出ている。
5Gのキラーアプリは動画
高橋氏は「『5Gにはキラーアプリケーションがない』とおっしゃる方がおられるが、そんなことは絶対にない」と強調し、5GユーザーはTikTokのような動画サービスの利用機会が多くなるのではないかという見方を示した。高橋氏によると、5Gのユーザーは、データ利用量が4Gユーザーの約2.5倍超に増加するという。
povoはZ世代へのプレゼント
サブブランド「povo」は、累計150万回線を突破したと明らかにされた。現行プランpovo2.0は月額基本料0円で、使いたいデータ容量やコンテンツを「トッピング」として使うたびに購入できるのが特徴だ。2023年3月にはスマホを下取りしてデータ容量をもらえる「スマホギガトレード」を開始した。
高橋社長はpovoについて、Z世代に向けて作ったプランと紹介する。若手社員がトッピングを発案し、すぐに実装できるような提供体制を構築しているという。高橋氏は「海外でも東南アジアのような若い人が多い国はDXの進展が早いが、日本は優しい国なので年齢の高い方にも対応していくためDXの進みが早い。(シンガポールのスタートアップ企業と共同開発した)povoは、若い人たちへのプレゼントだ」とコメントした。
楽天ローミングの急減に対策する「新たなローミング協定」
携帯事業に新規参入した楽天モバイルに対して、KDDIは4G LTE網を貸し出してローミング収入を得ている。楽天のエリア整備が進んできたことから、このローミング収入は減少傾向にある。
2023年度は、ローミング収入はマイナス600億円と、大幅に減少する見通しとしている。それに対して11日には、楽天モバイルとの「新たなローミング協定」を締結している。この協定はKDDIにとって、ローミングエリア収入減少を緩やかにするという意義があるとしている。
→・KDDIが楽天モバイルを「新たなローミング協定」で救済? 高橋社長の見解は
「副回線サービス」の現状
2023年3月には災害時や通信障害時の保険となる「副回線サービス」がスタートした。これは2022年7月のKDDIの通信障害をきっかけとして構想されたものだ。
「有事の時の対応策はいろいろ用意しておかなければならないと痛感した。総務省が“緊急時ローミング”の制度化にいち早く動き出したが、時間がかかりそうなだったので、(デュアルSIMを利用する)副回線サービスを提供した」(高橋氏)と改めて経緯を説明した。
副回線サービスの現況について高橋氏は「Webだけで申込を受け付けているので、びっくりするような数が出るものではない。本当に必要な方には行き届いているのかなと思っている」とコメント。今後は補償系のサービスなどに統合して、店舗での取り扱いも目指す考えを示した。
なお、KDDIにおける副回線サービスは、3月にソフトバンク回線を副回線として利用するサービスがスタートしたが、法人向けには5月からNTTドコモ網も選択できるようになっている。高橋氏は、NTTドコモ網の副回線サービスについては、個人向けには提供予定が無いと言及している。
データセンターや金融を成長の軸に
KDDIは5G通信を軸としてソリューションや金融、エネルギーなどの非通信領域の事業展開を深める「サテライトグロース戦略」を継続する。
注力分野としては、データセンター事業の展開加速や、au フィナンシャルホールディングスが展開する金融事業の進展が紹介された。新領域では、デジタルツインやドローン、メタバースといった分野で新たな事業の構築に取り組んでいることを紹介した。
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