スマホメーカーの撤退が相次ぐ中、Orbic(オルビック)が日本市場に参入する理由 “キャリア品質”にも対応できる(1/3 ページ)
米国でシェアを伸ばしているOrbicが日本市場に参入する。日本法人の設立にあたり、代表に就任したのが、元モトローラ・モビリティ・ジャパンで社長を務めたダニー・アダモポウロス氏。参入当初はオープンマーケット中心の展開になるが、ゆくゆくは、大手キャリアへの納入も目指しているという。
廉価なスマートフォン、タブレットなどを続々と投入し、米国でシェアを伸ばしているOrbic(オルビック)が、日本市場に参入する。同社は、日本法人のJapan Orbicを設立。第1弾モデルとして、スマートフォンの「Fun+ 4G」や、モバイルネットワーク対応のタブレット「Orbic TAB8 4G」「Orbic TAB10R 4G」などの製品を投入する。家電量販店などでSIMフリーとして端末を単体で販売していく他、MVNOともタッグを組んでいく予定だ。
日本法人の設立にあたり、代表に就任したのが、元モトローラ・モビリティ・ジャパンで社長を務めたダニー・アダモポウロス氏。同社のメンバーには、メーカーやチップセットベンダーから移籍した経験者も多く、日本市場の開拓に本腰を入れる。参入当初はオープンマーケット中心の展開になるが、ゆくゆくは、大手キャリアへの納入も目指しているという。
では、同社はどのようなスタンスで日本市場の攻略に取り組んでいくのか。上記3機種を参入第1弾モデルとして選んだ理由と合わせて、Japan Orbicの戦略を聞いた。インタビューには、Japan Orbicで社長を務めるアダモポウロス氏と、ビジネス・ディベロップメント・マネージャーを務める島田日登美氏が答えている。
キャリア主導という共通点のある米国と日本の市場
―― Orbicはオーストラリアに次いで、日本に参入しています。3つ目の市場として日本を選択した理由を教えてください。
アダモポウロス氏 私がジョインした頃のOrbicは、米国市場だけで展開しているメーカーでした。CEOのマイク(・ナルーラ)はロードマップを持っていましたが、それを実現するには、もっとスケールもブランド認知も必要でした。それには3つの方法があります。1つ目がオーガニックな成長、2つ目が買収、3つ目が市場を拡大することです。
ただ、買収には巨額な資金が必要で、いつでもメーカーが売りに出されているわけでもありません。拡大するといっても、そこには2つの選択肢があります。今あるマーケットに行くのか、それとも新たな領域で拡大するのかということです。単にマーケットシェアを拡大するだけであれば、例えば中近東やアフリカ、東南アジアなどに行くことはできます。ここでは、多くの中国メーカーが活躍している。ただし、それは全て低コストでの競争なのです。
一方で、われわれはもう少し難しい道を選びました。われわれには高品質の製品があり、高品質のブランドがあり、複雑な市場に対応できる力があります。米国での製品販売は非常に複雑です。キャリアが、プロセスや品質など、全てを要求してくるからです。このようなことができる市場は他にどこがあるのでしょうか。
日本の市場はこれに似ています。また、グローバルで見ると欧州にはVodafoneやOrangeといったブランドのチャネルがあり、アジアは日本以外に韓国もあります。オーストラリアもそうです。こうした全体像で、われわれは日本やオーストラリアに加え、イギリスやドイツなどの欧州を目指すことにしました。そして、そのチームを作りました。
―― 確かにキャリア主導の市場という意味だと、日本と米国は位置付けが近いのかもしれません。
アダモポウロス氏 似ている一方で、異なることもあります。まず、キャリアドリブン(キャリアが市場をけん引する)であることや、ハイエンドが強いことは似ています。キャリアから強い要求があり、コンシューマーもクオリティーを求める。地政学的な調整も必要になります。
一方で、言語やビジネスの慣習は異なります。われわれが開いたメディアイベントもそうですね。米国だとプレスリリースを出せばサンプルのリクエストやインタビューのアポが入りますが、日本ではやはりプレゼンをして、メディアが集まり、デバイスを見せた後に質疑応答という流れがあります。
Orbicにはフィロソフィーがあります。それは、「Be Global, Act Local」(グローバルでありつつ、地域に根差す)というもので、私はそれを言い続けています。
計3機種のスマートフォンとタブレットを投入する狙い
―― 結果として日本に参入することになりました。最初のスマートフォン、タブレットがこの3機種だった理由を教えてください。
アダモポウロス氏 われわれには大きなポートフォリオがあります。5Gスマートフォン、4Gスマートフォン、タブレット、ラップトップ、さらにChromebookまであります。日本でローンチするのはイヤフォンとクラウドまで含めると5つの製品ですが、ポートフォリオを見て、何が市場にフィットするのかを考えました。
まず、5Gのデバイスに関してはキャリア市場がリードしています。もちろん、われわれも既に日本のキャリアとはお話をしていますが、キャリアビジネスには時間がかかります。少なくとも、12カ月以上の時間は必要です。仮に今日、この時点で導入が決まっても、製品をローンチするのは来年(2024年)の8月になるでしょう。ですから、スタートはMVNOや量販店経由のオープンマーケットに絞りました。日本チームを準備し、サービスを準備し、コールセンターも準備する。翻訳もちゃんとやっていく。それをすることで、初めて成長ができます。
Fun+ 4Gとタブレット2機種は、市場と製品のギャップを考えて導入しました。特に(セルラー対応の)タブレット市場には、AppleとSamsungがあるだけで、あとは何もありません。ここはパートナーともディスカッションしたところで、チャンスがあると判断しました。どこに風が吹いているのかをリサーチしたということです。こうしたディスカッションから、最初の3つの製品が生まれています。また、今の予定では、23年中に(発表済み3機種を含めて)合計5つのデバイスを発表するプランがあります。
島田氏 顔を突き合わせて、ハードなディスカッションをしてきました。ダニーと仕事を再開することになり、私もたくさんのお客さまやお店を見に行き、「どないでっか」と話をしてきました。発表会のプレゼンでもあったように、今はフラグシップにお腹がいっぱいで、みんなが買えるものが少なくなってきています。Orbicも、日本で長くやっていくためには、ビジネスになる仕組みを作らなければなりません。最初は3つのプロダクトからですが、誰が使っても手に取りやすいものにしようということで、これに決めています。
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