大半が7GBで収まるのに、HISモバイルが“20GBプラン”を刷新した理由 知名度獲得への秘策も:MVNOに聞く(1/3 ページ)
HISモバイル向けにリニューアルした「自由自在スーパープラン」は、20GBのデータ通信と5分かけ放題が付いている。HISモバイルでは以前から20GBプランを展開していたが、サービス面で、大手キャリアに見劣りしていた。こうした反省を踏まえ、競合他社と互角に戦える料金体系を導入した。
100MB以下で290円(税込み、以下同)まで価格が下がる「自由自在プラン」が話題を集めたHISモバイルが、中容量帯の料金プランをリニューアル、7月6日に提供開始した。20GBプランの「自由自在スーパープラン」がそれだ。この料金プランは、20GBのデータ容量と5分間の音声通話定額がセットになっているのが特徴。金額は2190円と、大手キャリアのオンライン専用プランより一段安い設定になっている。
自由自在スーパープランを導入するにあたり、ライバルとして想定したのがドコモのahamoだったという。HISモバイルも以前から20GBプランを展開していたが、サービス面で、大手キャリアに見劣りしていた。こうした反省を踏まえ、競合他社と互角に戦える料金体系を導入。ものまねタレントのコロッケさんをキャラクターに起用し、知名度獲得も狙う。
この発表と同時に、HISモバイルは海外向けの通信サービスを「Trip SIM」として再導入。eSIMを活用し、大手キャリアの国際ローミングより安価なサービスを提供する。では、HISモバイルがこのタイミングで料金プランを見直した理由はどこにあるのか。H.I.S.Mobileの代表取締役社長を務める猪腰英知氏に話を聞いた。
従来の20GBプランは見向きもされなかった
―― 最初に、20GBプランを大きく強化しましたが、その理由を教えてください。
猪腰氏 入ってくるお客さまの伸びが、あまりにも低かったからです。他社と比べれば一目瞭然ですが、特筆して安かったかというと普通で、もっと安いところもありました。ユーザーの流入が増えれば、そのうち比率も上がるとは思っていましたが、MVNOのお客さまはさすがに目が肥えている。全然見向きもされませんでした。さすがにゼロではありませんでしたが、290円からのプランとは、動きがあまりにも違いました。
動きのいい(安価な)プランをこれ以上削って安くしても、継続性や品質への影響があります。一方で、20GBという容量は、ドコモユーザーを含め、今も検討されている方がいます。テレワークも終わり、電車に乗るようになって生活シーンは変わりました。動画を視聴するので7GBでは足りないという方がいることは見えていました。キャリアではないので、その上をやっても品質に影響を与えてしまいますが、20GBだったら何とかなります。もうちょっと使いたいという人を何とかしたかったんです。
7GBに収まる人が全体の95%以上というデータもありますが、現実的に戦えるマーケットとして、20GBはそれなりの規模がある。ただ、7GBの人が料金プランを再検討するときに出てくるのが、ahamoやLINEMOでした。そこと比較検討しやすいようにした方が面白いと考えました。だったら同じにするのが一番比べやすい。ahamoと同じように5分かけ放題をつけ、横にポンと置いて比べられることに特化しました。
―― なるほど。2190円というのはなかなか攻めた価格ですが、やはりここが限界だったのでしょうか。1980円のように千の位の数字が違うと、よりインパクトは大きそうでしたが。
猪腰氏 容量的に言えば、今でも厳しい。さらに約200円下げるのは難しいですね。何をやって、何をやらないかですが、MVNO市場に狙いを定めて飛び込んでいくのではない戦い方にかじを切りました。また、弊社の場合、知名度が圧倒的に低い。獲得が他社に及んでいない最大の理由です。キャリアを攻めにいく際には、タレントを使うことで認知度を上げやすくなりますが、これ以上価格を下げると、その広告宣伝費もかけられなくなってしまいます。おっしゃるようなところは目指しましたが、踏み込めませんでした。
原価ベースで安く調達できる音声の方が競争力は高い
―― 接続料は年々下がっていますが、この価格にできた背景にはそういったこともあるのでしょうか。
猪腰氏 あまり関係がありません。狙いに行くのがキャリア層になることで、平均GB(データ容量)が増えるからです。平均値は10GBちょっとで収まるという読みもあり、結果として5分かけ放題も2190円に飲み込める計算をしています。
―― いじわるな質問ですが、ユーザーが殺到して20GBギリギリまで使われると、逆に苦しくなってしまうということですね。
猪腰氏 それは苦しい(笑)。苦しいどころかアウトかもしれません。もちろん、それでもやりますが、継続困難になってしまうかもしれません。そうは言ってもやりますが、2、3年たって原価が下がらない限り、相当厳しいですね。
―― 逆に5分かけ放題を外してしまうという選択肢はなかったのでしょうか。やはりあった方が強いという判断ですか。
猪腰氏 どちらが価格インパクトを出せるのかを考えました。データ容量で帯域を圧迫するよりも、原価ベースで安く調達できる音声の方が競争力は高い。日本通信とも話をして、そちらにしようとなりました。もともと、20GBプランのユーザーは大していなかったこともあり、そこに全員が移ったとしても、インパクトが少なかったのは思い切って走れた要因です。7GBプランに5分かけ放題をつけてしまうと、厳しいボリュームになってしまいますが、良くも悪くも20GBプランならインパクトが薄かったということですね。
―― その意味では、290円プランを始めたときと考え方は近そうですね。あれも、確か、もともと契約者数が少ないので安くてもお金を払ってもらえる人が増えた方がいいという発想で始めたとうかがいました。
猪腰氏 近いですね。取れていないなら、やってしまえばいいという考え方です。290円の方は全然使われないので、良くも悪くも帯域を圧迫しません。その意味で、既存の回線の品質改善には一役買っています。これも、思ったより結果オーライな感じになっていて、予想以上に比率が高い。4割、5割ぐらいが290円で、思ったより大きなボリュームですし、その方たちがほかのお客さまの安定に貢献しています。
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