「Rakuten最強プラン」は本当に最強? 速度とエリアを都心から世界遺産まで徹底テスト(3/3 ページ)
楽天モバイルが提供する個人向け料金プランの名称と内容を「Rakuten最強プラン」へ変更した。KDDIのローミングエリアでのデータ通信が使い放題となったため、自社エリアがつながりにくい屋内などでも制限を気にせず済むようになった。今回はこのプランの速度とエリアを都心や世界遺産でテストしてみる。
「和歌山の世界遺産 熊野古道 中辺路エリア」KDDIパートナー回線だが高速
郊外エリアの例として、和歌山県の山中、世界遺産となっている熊野古道の中辺路エリアでも接続テストを実施した。日時は6月16日の15時台。
テストを実施した店舗は、徒歩で熊野古道を楽しむ外国人旅行者が宿泊や休憩のため多く訪れる場所だ。だが、ドコモとソフトバンクはエリア端で不安定、たまたまKDDIのみ安定してつながる環境にある。楽天モバイルは周辺一帯を含めKDDIのパートナー回線エリアにしかつながらない。
楽天モバイルの自社エリアとパートナー回線を分けたエリアマップで確認すると、和歌山県の自社エリアは人の多い沿岸部と、熊野本宮大社などの観光地が中心だ。山中の道は薄いピンクのKDDIパートナー回線エリア頼りになっている
通信速度テストでは、KDDI回線のUQ mobileと楽天モバイルともに60Mbpsを超える速度を確認できた。郊外のKDDI 4G 800MHz帯のみのエリアとしては比較的高速な結果だ。両社が近い速度になった理由は、KDDIの4G 800MHz帯のみのエリアかつ、周辺の利用者が少なく空いていたからだろう。この他、目視はできなかったがKDDIの基地局が近い位置に設置されていた可能性や、4G設備の更新や3G停波による帯域幅の追加なども要因として考えられる。
こういった郊外のKDDIのパートナー回線エリア頼りの地域だが、Rakuten最強プランにより高速通信を無制限で使えるようになったことで、これまで契約を控えていた人も気軽に乗り換えやすくなったといえる。楽天モバイルはMNO4社の中ではオンライン手続きやeSIM契約、再発行が楽な部類なので、スマホ契約の知識があるなら市街地に出る必要がなく使い勝手がいい。
一方で考慮すべきなのが、郊外でRakuten最強プランを光回線代わりに使おうとする利用者の増加だ。KDDIのローミングエリアでの通信量が極端に増えると、楽天モバイルの費用負担がのしかかりかねない。
KDDIが公開している楽天モバイルへのローミング提供の公開情報は、新ローミング協定による更新後も約款記載の料金は1GB換算で約550円(1パケット 0.00006556 円)から変わっておらず、今もこのままの負担額なら厳しい速度制限やプラン内容の改訂が実施されてもおかしくないだろう。一番理想的な対策としては、ヘビーユーザーが利用するエリアに対して楽天モバイルの基地局を設置し、自社エリア化してしまうことだ。
テスト場所として利用させて頂いた中辺路エリアの「NightSnailsCafe - N.S.カフェ」はドコモ、ソフトバンクの携帯電話がつながりづらく、NTT西日本の光回線も非対応という立地だ。地元CATV事業者の光回線は、強い台風が来ると接続が不安定になる場合があるという。このため、楽天モバイルが本当にパートナー回線エリアでも高速通信を使い放題なら、Starlinkやauのプラン以上に安価で魅力的な選択肢になり得てしまう
通信量重視なら他社より魅力的なサービスに成長している
ここまで、楽天モバイルを利用して少ないスポットながらも比較テストを実行してきた。現状の楽天モバイルは、エリアに関しては以前ほど圏外を見かけることはなくなり、自宅や職場でつながるなら基本的には問題ないレベルに達している印象だ。自社エリアの構築と、郊外や市街地のKDDIのパートナー回線エリアをうまく組み合わせる施策がうまく行っているのだろう。ただ、速度テストでも触れたが都市部や屋内だと、さまざまな要因で速度の低下が気になることもあった。
安さを重視する人の場合、楽天モバイルは月額1000円前後のプランとみてもおおむね問題なく利用できるサービスと言っていいだろう。ただ、他社も同価格帯で魅力的なサービスを展開しており、他社と比べて有利といえるほどではない。
現状の月額3000円前後で大容量の各社プランを比べると、通信量重視なら使い放題の楽天モバイルはかなり優れているといえる。
Rakuten最強プランでエリアを問わず高速通信を使い放題になったことで、より魅力的になった。スポーツ中継やライブ配信、映画を外出先で見ることが多いなど、極端な高速通信は必要ないが通信量20GBでは足らない人にとって魅力的なサービスだ。だが、エリアを問わずより安定して高速な通信を利用したいなら大手3社のサブブランドが魅力的なのも確か。楽天モバイルの参入当初と比べると、総務省の要請も絡んだ大手3社の値下げによって激しい競争環境にあるといえる。
加えて、楽天モバイルは料金プランやエリアの提供状況が急に変わることがあり、利用者側もある程度モバイルの最新情報を追いかける必要がある。Rakuten最強プランに関してはパートナー回線の高速通信使い放題やパートナー回線を2026年9月まで利用できるなど改善点のみだったが、以前は1GB 0円の廃止や地域ごとのサポート回線エリア終了など、情報をチェックしていないと戸惑う事例もあった。もし自身や家族が契約する場合は、そういった点を気にしつつ利用するといいだろう。
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