楽天モバイルは何が“最強”なのか Rakuten Optimism 2023で語られたこと(2/3 ページ)
8月2日~6日の5日間に渡りパシフィコ横浜で開催されている、楽天グループ最大級の体験イベント「Rakuten Optimism 2023」。4日には「楽天モバイルは何が最強なのか」と題したトークパートが含まれた。楽天モバイルの共同CEOの鈴木和洋氏、CTOのシャラッド・スリオアストーア氏、矢澤俊介社長が登壇した。
最先端技術で低廉な料金プランを実現
では、なぜ楽天モバイルが最強とする低廉な料金プランを打ち出せたのか? その理由の1つが楽天モバイルのサービスを支える「完全仮想化クラウドネイティブモバイルネットワーク」だ。
仮想化技術はネットワークの管理に必要な機能をソフトウェアで賄い、専用機器を使わずに汎用(はんよう)サーバで運用する。言い換えると汎用サーバ上で基地局の機能を実現するということになる。基地局やサーバを含む通信設備への投資額を40%削減できる他、基地局の保守や機能追加などを柔軟に行える。ハードウェアの更新なしにソフトウェアの追加、更新のみで新機能を追加できる。
楽天モバイルは仮想化技術だけでMNOネットワーク(自前のネットワーク)を構築する世界初の通信事業者として携帯電話市場に参入したがゆえに国内のみならず世界からも注目を浴びた。CTOのシャラッド・スリオアストーア氏は「参入するからにはコスト競争力を高めること、それに優れた顧客体験を提供することの両面を重視しなければならなかったため、従来とは全く異なる技術を取り入れる必要があった」と参入当時を振り返る。
過去に楽天グループの三木谷浩史会長兼社長が「携帯電話業界のアポロ計画」と表現していたように、完全仮想化クラウドネイティブモバイルネットワークの実現には相当な苦労があったようだ。
そんな完全仮想化クラウドネイティブモバイルネットワークに欠かせないのが「Open RAN」(キャリアグレードのオープンな無線アクセスネットワーク)だ。
RAN(無線アクセスネットワーク)は携帯電話端末とコアネットワークの中間を構成する部分を指す。従来はアンテナなどと制御装置を結ぶインタフェースが閉ざされた構成で、1社の通信機器ベンダーが機器やソフトウェアの開発や供給を行うのが一般的だったが、特定のベンダーへの依存度が高くなると、コスト増大のみならず、通信事業者主導での新技術導入やシステム障害への対応などが困難になる。
Open RANではインタフェースを閉ざされた構成とせず、異なる通信機器ベンダーの製品を組み合わせることが可能になり、先のデメリット解消につながる。
そのソリューションである「Symware」の開発に向け、Rakuten Symphony(楽天シンフォニー=楽天グループの通信プラットフォーム事業を担う組織)、Intel、Juniper Networksが連携している。スリオアストーア氏によると、シンフォニーのソフトウェアとネットワーク上で連動するベンダーがほぼ1ダースあり、1つのソフトウェアだけで各ニーズに応じた複数のソリューションを管理できるという。
楽天モバイルが「2023年4月時点において全国に5万7358の4G LTE基地局、3月時点において9761の5G基地局を展開できた」(スリオアストーア氏)のもこうした仕組みが作用しているようだ。
また、スリオアストーア氏は楽天モバイルとAIが深く関わることを紹介。楽天モバイルでは、クラウドインシデントの大規模言語を使った原因の分析、キオスク端末を使った顧客との対話、データベースに異常が見られた場合の対処、インシデントの自動分析、顧客感情の分析などにAIを活用しており、スリオアストーア氏は「ネットワークの回復も自動化していくことが目標」と将来性を語った。
その実現に向けて既に動き出していると述べたスリオアストーア氏は「自動化の具体例」を紹介。次世代のネットワークソフトウェアアプリケーション群「Symworld」では、250人で全国のネットワークを運用したり、基地局の試運転を5Gの場合に4分で行えたり、本来なら3時間かかる顧客のアクティベーションを3分で行えたり、従来6カ月程度かかる新しいネットワーク機能の実装を6日で行えたり――とあらゆるメリットにより運用の効率化が可能だという。
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