「スマホのバッテリー交換義務化」がユーザーにデメリットをもたらす理由(3/3 ページ)
EU(欧州連合)は、スマートフォンなどに対する新たな規制として、「バッテリーを簡単に交換できる設計とすること」を可決した。バッテリーを交換できるのはメリットだけではない。スマートフォンのイノベーションを阻害する側面もある。
バッテリー交換義務化、日本で受け入れることは厳しい?
今回のEUの規制だが、仮にも日本ではこのようなものは受け入れられるのだろうか。
当初、この報道が出たときは「バッテリー交換できた方がいい」という意見も見られた。その一方で、日本では欧州のような「バッテリー交換を義務化しろ」という過激な声は少なかった。これは多くのスマートフォンの修理窓口がキャリアのため、メーカーによって修理期間や内容に大きな差が生まれにくいこと、修理期間が終了しても別途機種を提供するなどの対応が行われていたことが挙げられる。
これに加えてキャリアの「端末補償サービス」に加入する人も多く、実質的な修理料金の上限があったことも「長く利用する」という意味ではいい環境がそろっていたのだ。このような理由から過激な意見が少ないと考える。
また、欧州で言われる修理する権利についても、日本では「技適」の関係でメーカーや総務省指定修理業者以外が分解、修理した場合は厳密にいうと技適が無効になってしまう。この法的制約から、リペアキットなどが提供されることはないだろう。
ただ、副次的な効果としてEUでバッテリー交換が義務化されると、市場に製品が出回ることから一定数の「バッテリー交換が可能な機種」が日本でも販売される可能性はある。そのような意味では消費者の選択肢が増えるので、ニーズを拾うことはできると考える。
最後になるが、地球環境への配慮、持続可能な社会の実現は確かに先進国や大企業に課せられた課題かもしれない。それでも目先の利用者の安全性、利便性を欠くような規制は疑問視するべきだと考える。
EUの規制が行き着く先はスマートフォン市場の低迷となる。買い替え需要が低下することで、メーカーも売り上げが低迷し、新製品や高付加価値商品を投入しなくなってしまう。そして最終的には規模縮小や撤退という形で、消費者は選べる選択肢すらなくなってしまうのだ。場合によってはEU域外の規制対象外エリアから輸入して販売するなどの手段が横行し、市場が不健全になることも考えられる。
自分たちの思い通りにメーカーを規制で縛り付け、外的要因で競争を阻害する行政についてもどうかと思うが、それによって不利益を被るのは消費者だ。消費者が最も納得する形での法整備を進めてほしいものだ。
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