中国、政府機関や国有企業で「iPhone使用制限」――ファーウェイへの禁輸措置でアメリカ企業が苦境に:石川温のスマホ業界新聞
中国が、政府機関や国有企業に対する「iPhone使用禁止」を拡大するとの報道があった。その影響で、Appleの株価は連日続落する結果となった。Appleにとって、非常に重要な市場の1つである中国だが、今後どうなっていくのだろうか……?
中国政府が政府機関や国有企業の職員に対して、アップル「iPhone」の使用禁止を広げるとの報道があった。これにより、アップル株が連日安となり、時価総額は2日間で約1900億ドル(約28兆円)も減ったとのことだ。iPhoneの使用制限は政府機関や国有企業だけでなく、地方政府などにも広がるという。
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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2023年9月9日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。
アップルとしては中国市場は売上げ全体の2割を占めるほどの重要マーケットだ。9月12日に開催のスペシャルイベントでも、コロナ禍が落ち着き、渡米がしやすくなったと言うことで、中国系メディアが多く呼ばれているという話もあるほどだ。
中国の人からすれば、アップル製品は自らのステイタスをアピールするためのブランドとして定着しつつある。
一度、アップル製品を手にしたユーザーが、制限されたからと言って簡単にアップル製品から離れられるとは考えにくい。
福島第一原発から処理水が海に放出されたことで、中国は日本から海産物の輸入を停止しているが、一度、日本の美味しい海産物の味を知ってしまった人たちが、輸入を禁止されたからといって、我慢し続けられるものでもない。早晩、輸入禁止もうやむやに終わってしまうのではないだろうか。
ただ、注目しておきたいのが、ファーウェイの動向だ。ファーウェイが8月に発売した「Mate60Pro」が、自社開発したチップで、中国の製造受託会社が製造。7ナノで、5G通信にも対応しているとの報道があった。iPhoneと比べると2世代ほど、遅れてはいるが、もはやTSMCやサムスン電子に頼らなくても、チップを製造できる能力が証明されてしまったことになる。
国家安全保証の懸念により、アメリカ政府としてはファーウェイに禁輸措置を行ったのだろうが、結果として、アメリカ経済にとっては失策になってしまった感が強い。
ファーウェイと仲の良い関係を続けていれば、クアルコムはSnapdragonを納入し続けられたし、グーグルもファーウェイのスマートフォンに搭載されたAndroidが世界中で普及し続けることで、広告収入を維持できたはずだ。
アメリカ政府がファーウェイに制限を与えたことで、ファーウェイは自力で5Gスマートフォンを作ってしまい、中国だけでなく、欧州やアジア、アフリカでシェアを高める恐れがある。
iPhoneが中国でシェアを失うだけなく、今後、世界的にファーウェイの存在感が高まり、アップルだけでなく、グーグルやクアルコムも大きなダメージを受けることになるかも知れない。
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