“スマホなし”でも存在感示すファーウェイ 武器はスマートウォッチと日本特化のアイウェア:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
米国の制裁を受け、スマートフォンの開発に急ブレーキがかかってしまったファーウェイが製品ラインアップを大幅に転換。制裁の影響が少ないスマートウォッチやワイヤレスイヤホンといったウェアラブル製品やモニター、タブレットといったジャンルに特化している。製品ラインアップの数は、むしろスマホを定期的に発売していたころよりも多彩といえる。
研究開発を生かした製品作りに加え、ローカライズも加速
研究開発に巨額の投資を行い、その成果を端末に反映させるのは同社の勝ちパターン。実際、スマートウォッチではヘルスケア、オーディオでは音響技術といった形で、研究開発を加速させている。グローバル展開できるスマホは失ってしまったものの、そのビジネスモデルをスマートウォッチやワイヤレスイヤホンといったウェアラブル端末に応用しているように見える。先に述べたように、スマートウォッチでは日本市場での成果も出ており、ファーウェイの底力を感じさせる。
こうした必勝パターンに加え、スマホ時代以上にローカライズに注力している様子もうかがえる。ウェアラブル端末は、身に着けることもあり、スマホ以上にユーザーの嗜好(しこう)が多様だからだ。先に挙げたように、EyewearをOWNDAYSと共同開発しているのはその一環。スマホ時代もおサイフケータイや独自の周波数への対応など、ローカライズは行っていたが、デザインはグローバルで共通の設計だった。その意味で、ウェアラブル端末では日本に拠点があることを生かし、一歩踏み込んだローカライズをしている印象を受ける。
スマートウォッチでも、日本企業との取り組みを増やしている。WATCH GT 4では、国内最大の食事管理アプリ「あすけん」を展開するasukenとコラボし、モニターキャンペーンを展開。スマートウォッチでは運動量から消費カロリーは計算できるが、摂取カロリーは管理できなかった。あすけんでスマートフォンから食べたものを入力するだけで簡単に記録をつけることができ、ヘルスケア管理アプリ「HUAWEI Health」への入力も簡単になる。機能面での連携ではないが、こうした日本企業との連携は以前から続いている。
2021年に発売された「HUAWEI WATCH 3」では、テクノクラフトの提供する「AiCADDY」と連携しており、2022年から同アプリがプリインストールされた。AiCADDYはゴルフのプレーデータを分析したり、ゴルフ場のGPSナビゲーションを行ったりするためのアプリ。グローバルモデルをそのまま投入しただけでは、ここまで小回りの利いたことをするのはできない。Eyewearのようなハードウェアの開発にまでは踏み込んでいないものの、日本市場のニーズを取り込むことには余念がないと言えるだろう。
スマートウォッチとワイヤレスイヤホンやそれをメガネに応用したEyewearで存在感を示しているファーウェイだが、海外での業績も徐々に回復傾向を示している。2023年の中間決算は、売上高が3109億元(約6兆3713億円)に増加。スマホやスマートウォッチ、オーディオ製品などの開発や販売を手掛けるコンシューマー向け事業も、1035億元(約2兆1210億円)に増え、米国の制裁による大幅な落ち込みから3年ぶりに反転した。中国では、5Gに独自対応したとみられる「Mate 60 Pro」を発売するなど、復活の兆しが見えている。依然としてGoogleのサービスは利用できないため、スマホをそのままの形で日本市場に投入する可能性は低いが、引き続きその動向は注視していきたい。
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